連載《人体MAPS》 第15話「肩」

 体の中には、ふしぎがいっぱい! この連載では、自分の体の中のいろいろな部分をめぐる旅の案内をしていきます。人体の“地図”を手に、一つひとつの部分の役割を知っていけば、もっと自分の体、そしてまわりの人の体を大切にする気持ちがわいてくるでしょう。

みんなと一緒に人体をめぐる旅をするヒュウマとミコト。

 今日のお話のテーマは「肩」です。

肩はなんのためにある?

 あなたの「肩」は体のどこにありますか? さわってみましょう。

 そう。左・右の首と腕の間にありますね。

肩は、首の下、背中の上、腕の付け根にかけてのところにある。首と頭、そして腕を支え、胴体の最も上にくる重要な部分。

 では、肩は何のためにあるのでしょう。そうですね、首と胸(胴体)、そして腕と胴体をつなぐためにありますね。

 あなたは腕を()げたり、()ろしたり、前にしたり、後ろにしたり、まわしたりできます。このような腕の自由な動きができるのは、肩があるおかげです。それから肩は、あなたがいつも使うランドセル(ランリュック)やカバンのベルトをのせる場所でもあります。友達と肩を組むのも友情にあかし。肩があるって、すごく便利!

 もし、肩がなかったら? あなたの腕は胴体にそのままくっつき、腕が今のように自由な動き方ができないし、ランドセルやカバンのベルトを肩にのせることもできない。これはとても不便で悲しいことです。

肩を動かすしくみ

 このような肩の便利な運動ができるは、肩にある骨と筋肉があるおかげです。その骨とは、鎖骨(さこつ)(けん)甲骨(こうこつ)という骨。鎖骨は肩の前、肩甲骨は肩の後ろにあります。まずは自分の鎖骨と肩甲骨を触ってみましょう。肩甲骨は後ろにあるけど手が届くかな?

 そして肩にある筋肉というのは、僧帽筋(そうぼうきん)大胸筋(だいきょうきん)三角筋(さんかくきん)という名前の筋肉です。僧帽筋は首と背中から肩にかけて、大胸筋は胸の前から肩にかけて、三角筋は肩の横にあります。この骨と筋肉が腕と胴体の間をつなぎ、そして骨と筋肉とが協力して自由な腕の動きができるのです。ボールを投げるといった複雑(ふくざつ)な動きができるのは、この肩のつくりのおかげです。

肩とその周りにある骨や筋肉の図。肩の便利な運動ができるは、肩にある骨(肩甲骨と鎖骨)と筋肉(僧帽筋、大胸筋、三角筋)があるおかげ。僧帽筋は首と背中から肩にかけて、大胸筋は胸の前から肩にかけて、三角筋は肩の横にある。こうした大きな筋肉の内側にも、深層筋といって細かい動きに関連した小さな筋肉がたくさんある。

肩が凝るとは?

 あなたのおうちの人は、よく「肩が()った」っていいませんか? どうして肩って凝るのだろう。肩以外のところが凝ってもいいはずなのに、なぜ肩が凝るのか?

 あなたは荷物をどうやって運びますか? そう。手で持ち上げて運ぶよね。手と胴体は腕をつうじてつながっている。すると、もし肩に力を入れずに荷物を持つとしたら、荷物側に胴体がひっぱられてしまう。これでは荷物を持ち上げたり運んだりできませんね。

 そこで肩は、荷物を持っている腕を胴体側にしっかり引っぱって傾かないようにする。これができるのは、さっき挙げた肩にある骨や筋肉のはたらきによるものなのです。 ただし、筋肉の中でも僧帽筋は、首の後ろから腰、そして腕を結んでいるとても大きな筋肉なので、重い荷物の移動をずっと続けると、僧帽筋のとくに肩のあたりが疲れて硬くなってきます。これが「肩の凝り」です。

 肩が凝ると、血流が悪くなったり、疲労物質がたまったり、筋肉が固くなってしまいます。だから、おうちの人が「肩が凝った」っていったら、できるだけ、もみもみもしくはトントンとたたいて、筋肉をほぐしてあげてね。

肩を強く引っぱると?

 ここで1つ注意するべきことをいいます。肩って、とても丈夫につくられているのだけど、ときに外から強く引っぱる力がかかると腕と胴体をつなぐ骨が外れることがある。これを「脱臼(だっきゅう)」というのだけど、小さな子供やスポーツ選手がときどきなります。

腕の骨(上腕骨)の先は、丸い球のような形をしていて、肩甲骨にソケットのようにはまって、つながっている状態になっている。腕を強く引っ張る力がかかると、上腕骨と肩甲骨のつながりが外れたり(脱臼)、ずれたり(亜脱臼)することがある。強く引っぱり過ぎないようにしましょう。

 そのときは、病院にいって整復(せいふく)という肩をはめてもらう治療を受けましょう。強く腕を引っ張ったり、腕を後ろに回す動きなどには注意してね。

「肩」がつく言葉

 ではここで、「肩」がつく言葉をいくつか紹介しましょう。

肩幅(かたはば)
 肩幅は、左の肩の一番はしから右の肩の一番はしまでの長さのこと。よく、「肩幅が大きい」などと使われます。

肩を()
 あなたは仲良しのお友だちとよく肩を組みますか? 肩を組むのは仲の良い証拠だね。

肩透(かたす)かし
 肩透かしって、なんか面白い言葉だね。例えば、今度の月曜日は大嫌いな注射の日。もう何日も前から心配で心配でたまらない。そしていよいよ注射を受ける日。注射をいざ受けてみると、あれ? ぜんぜん痛くない。な~んだ、心配のし過ぎで実際にはたいしたことなかった。そういう場合、「肩透かし」っていいます。

肩を(なら)べる
 身長が高い人と低い人がならんだとき、もちろん肩の高さは同じではない。そこで身長の低い人が頑張ってご飯を食べたり、牛乳を飲んだりしてどんどん身長が伸びて、やっと身長が高い人と同じ高さになった。これでようやく肩を並べることができる。このように、がんばって努力して、目標にしていた人と同じくらいのレベルになることを、「肩を並べる」っていいます。テストの点数などでも同じことがいえますね。

肩身(かたみ)狭い(せまい)
 これはとくに大人の人がよく使う言葉だね。何かよくないことをしてしまったとき、周りの人からはちょっと冷たい目で見られる、もしくは見られるのではないかと思ってしまう。そしてあなたは、しょんぼり、堂々と前を向いて歩けない、恥ずかしい、居場所がない、そういった気持ちのときに「肩身が狭い」って使います。

肩の()()りる
 この言葉は、重大な仕事や責任から解放されてホッとするという意味。つまり肩という場所は、その人が背負っている責任や役を支えるところ。それだけ肩は人の体の中でも大切な場所となりますね。頼れる人は何となく背中から見る肩の姿がたくましい気がします。

 責任や仕事を背負うのは大変だけど、「神さまは乗り越えられる人にしか試練を与えない」という言葉があるように、背負うことであなたの能力をのばすチャンスであること。長い人生、たくさんの荷を背負って、広く、大きい心を養っていきたいものですね。 このように、「肩」が含まれる言葉ってたくさんあります。まだまだあるからまた出てきたら覚えていこうね。

まとめ

 今日のお話をまとめると、肩は胴体と腕をつなげ、腕を前後・上下・左右に自由に動かすことができる。これは肩にある骨や筋肉のすぐれたつくりのおかげ。しかし、肩の筋肉は凝りやすい。

 いかがでしたか? 「肩」はあなたの体の中の大切な場所だということがわかりましたか? 大切にしましょうね、あなたの肩。

川畑龍史 著者の記事一覧

大阪大学大学院医学系研究科修了 博士(医学)。国立長寿医療センター(研究所)にて慢性腎不全の病態研究に従事。現在、名古屋文理大学短期大学部食物栄養学科准教授、愛知学院大学心身科学部客員研究員。主な担当科目は、自然科学、生物学、解剖生理学、生化学、病態生理学、病態治療論。主な著書:『人体の中の自然科学』(東京教学社)、『解剖生理学実験』(東京教学社)、『なんでやねん!根拠がわかる解剖学・生理学 要点50』(メディカ出版)、『ほんまかいな!根拠がわかる解剖学・生理学 要点39』(メディカ出版)、『イカのからだの不思議発見』(文芸社)など

(イラスト/齊藤恵)

【連載バックナンバー】

第1話「目」

第2話「心臓」

第3話「胃と腸」

第4話「頭」

第5話「耳」

第6話「鼻」

第7話「口」

第8話「歯」

第9話「腎臓と肝臓」

第10話「お尻」

第11話「肺」

第12話「首」

第13話「おっぱい」

第14話「お臍」

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