《自由研究のテーマにも!》アカハライモリを飼育&観察してみよう

名前の通り、赤色のお腹が特徴的なアカハライモリ。日本にすむ両生類で、そのかわいさと飼育のしやすさからペットとしても人気です。また、その驚くべき再生能力は、再生医療の分野でも注目の的。ここでは、生態の基礎知識やおうちでの飼育方法、イモリの飼育を自由研究につなげるヒントを紹介します。

アカハライモリってどんな生き物?

 イモリは両生類のうち有尾類(有尾目)の仲間で、日本で最も有名で身近なのは、やはりアカハライモリ(Cynops pyrrhogaster)です。本州、四国、九州にかけて広く生息しています。沖縄本島や奄美大島などでは、シリケンイモリやイボイモリなどの近縁種が見られます。

 諸説ありますが、アカハライモリなどの「イモリ」の語源は、井戸を守る「井守」からきているといわれています。古くから、人間の生活圏で見られるとても身近な生き物でした。

有尾目のうち、イモリ亜目イモリ科イモリ属に分類されるアカハライモリ。主に水の中で暮らしている。混同されやすい「ヤモリ」は爬虫類
はちゅうるい
で、陸上に生息する生き物。

 里山のような環境が少なくなってしまった近年では、都市部で姿を見かけることがなくなり、生息数は少なくなっています。アカハライモリは、基本的には水の中で過ごしており、水田や池、川べりなど、水の流れがないところに暮らしています。

アカハライモリの生息地の例。水辺や周辺の茂みによく潜んでいる。春先ごろに、水がよどんだ場所で産卵する。

 アカハライモリは移動距離が少ないこともあり、生息地域によって色彩に地域差が見られます。腹部の赤い部分の範囲や、黒い斑点模様の有無、それらがライン状になる個体群などさまざまです。また、突然変異した個体も見られ、まれに全身が真っ赤な個体や、腹部が黄色い個体なども。こういったアカハライモリを観察するのはとても楽しいですが、保護対象となっている地域もあるのでむやみに捕獲するのは避けましょう。飼育を楽しむ場合は、採集可能な地域で採集された個体・繁殖された個体を購入するのがおすすめです。

アカハライモリの生態の基本

 アカハライモリは、成長すると10cm程度の大きさになります。飼育下での平均的な寿命は10~20年程度ですが、40年以上生きた個体の記録もあります。

アカハライモリの体。

 お腹の赤色は警告色(警戒色)であるといわれています。実際、アカハライモリは微量ではありますが、フグなどと同じテトロドトキシンと呼ばれる毒をもっています。この毒はもともとアカハライモリがもっているのではなく、エサなどから得たものが蓄積された外因性
がいいんせい
の毒である可能性が考えられています。手で触れる程度なら基本的に問題ありませんが、その手で目や口をこすったりせず、必ずよく手を洗うようにしましょう。

アカハライモリのメス(左)とオス(右)。メスの方が尻尾が細長く、オスの方が幅広い。奥にいるオスは繁殖期で、尻尾の色が紫色に変化しつつある。これを「婚姻色」という。

卵から幼生、幼体時代

 アカハライモリの卵は、水の中の水草などに1個ずつ産みつけられます。孵化した幼生には外エラがあり、その姿はウーパールーパーに似ています。エラ呼吸と肺呼吸をして、水中での生活を続けます。手足ができて外エラがなくなると水上生活に適応した幼体となり、上陸します。呼吸は、皮膚呼吸と肺呼吸に変わります。成体になると、再び水中で過ごすことが多くなり、田んぼの用水路などでその姿を見かけるようになります。

水草に絡むアカハライモリの卵。求愛の際に分泌されるアカハライモリのメスの性フェロモンは「アイモリン」、オスの性フェロモンは「ソデフリン」という名前で、いずれも古い和歌にちなんで名づけられた。
ウーパールーパーにも似た、幼生のアカハライモリ。顔の両脇から下に伸びているのはバランサー(平衡桿
へいこうかん
)と呼ばれるもの。これにより体の平衡感覚を保っていると考えられている。(画像:はじかみ/PIXTA)

驚きの再生能力がすごい!

 アカハライモリの大きな特徴は何といっても、そのすさまじい再生能力です。

 生物の再生能力といえば、まず「トカゲのしっぽ」を思い出す人が多いのではないでしょうか。ただ、トカゲの仲間の尾は一度自切
じせつ
をしてしまうと、一見すべて再生しているように見えても、実は骨は再生していません。よく見ると自切した部分から色が違うのもわかりますし、何より骨は再生せずに軟骨によって支えられるようになります。

 しかし、アカハライモリなどのイモリの仲間の再生能力にかかれば、骨まで再生してしまいます。また、尾だけでなく、肩以降であれば手足も再生できますし、驚くことに、眼や脳、心臓などの臓器の一部さえ再生してしまうのです。このことから、イモリは再生医療の分野で注目されており、そのメカニズムが少しずつ解明されてきています。

イモリは、眼の中の水晶体
すいしょうたい
(レンズ)を失っても再生することができる。

アカハライモリを飼育しよう

 アカハライモリは飼育が難しくありません。生態に興味がわいたという人は、ぜひ飼育に挑戦してみましょう。ここでは、飼育準備のポイントを紹介します。

・水中と陸上を移動できるレイアウト

 有尾目の生き物の飼育ポイントは、種類によって水と陸上をつくってあげること。同じ有尾目であるサンショウウオの仲間の多くは、成体になると湿り気のある陸上で生活することがほとんどで、水中での飼育は適していません。それに対し、イモリの仲間の多くは成体になっても水中で過ごすため、水中での飼育が適しています。ただし、流木や石などで陸上もつくってあげ、好きな方に移動できる環境をつくってあげましょう。

水槽のレイアウト例。陸上部分には、カメのアイテムとして販売されている水に浮く島のようなグッズを使用してもよいが、流木などを入れるとケース内が自然になってインテリア性がアップする。

 使用するケースは、プラケースと呼ばれるプラスチック製の安価なものや、しっかりとしたガラス製の水槽などが販売されています。基本的には、設置できる最大限の大きさのものを用意するといいでしょう。水の量は多い方がメンテナンスが容易になります。イモリは脱走することがあるので、必ずフタつきのケースを選びましょう。

 アカハライモリはかなりの大食漢なので、比較的水を汚します。そのため小型のものでもよいので、フィルターを使用することをおすすめします。エアーポンプで作動するフィルターがよいでしょう。そして、ケースの水を1/3から半分程度にし、水上部分をつくってあげます。

ここではエアーポンプと組み合わせて使う投げ込み式フィルターを使用。水槽のサイズにあったものを選ぼう。

 また、丈夫な水草などを入れてあげると、イモリが捕まって休める場所になります。枯れてしまうと水の汚れに直結するので、イミテーションの水草を使用してもよいでしょう。

野生下のアカハライモリは冬(気温が10℃以下)になると冬眠する。飼育下では飼育環境次第なので、冬眠させるかどうかを決めよう。

・エサはどんなものがいい?

 エサは動物性のものを好みますが、イモリ専用の人工飼料を与えるのがよいでしょう。アクアリウムショップやホームセンターなどで入手でき、栄養バランスが優れています。これだけで飼育が可能です。たまに、おやつとしてイトミミズや赤虫などを与えてあげると喜んで食べます。

メインのエサには「ひかりウーパールーパー30g」(キョーリン)がおすすめ。
おやつとして最適な「ビタクリン アカムシ ミニキューブ 45g」(キョーリン)。

・定期的な水換えを忘れずに

 状態のよい環境を維持するためには、定期的な水換えが必要です。底に溜まったフンや食べ残しを取りながら排水し、全体の1/3~1/2の水を新しい水に換えてあげましょう。飼育を続けている水にはアンモニアなどの有害な物質が増えてしまいます。フィルターを使用していたとしても限界があるので、それらを水換えで除去してあげることがとても大切です。

・アカハライモリを観察・記録しよう

 アカハライモリを飼育したら、ぜひ日々の観察を楽しみましょう。まずは、日々の飼育日誌をつけるとよいでしょう。水温や気温、湿度、その日に観察できた行動や気になったことなどを記録します。できれば写真もたくさん残しましょう。こういった記録は、アカハライモリの体調管理や水槽の環境を把握するのにもとても役立ちます。

アカハライモリの成体はしばしば脱皮をし、その皮を自分で食べる。そういった行動も記録しておこう。

アカハライモリで自由研究

 アカハライモリはさまざまな魅力をもった生き物です。いろいろな面から、自由研究につなげることもできます。ここではそのヒントをご紹介しましょう。

・まずは調べてまとめてみよう

 アカハライモリの生態や特徴について、リサーチしてみましょう。下にあげたキーワードから調べてみるのもおすすめです。

【有尾目】
 有尾目はどんな特徴の生き物で、どんな種類がいるのか、それぞれどういうふうに違うかを調べてみましょう。水中で暮らすのか陸上で暮らすのか、呼吸方法産卵方法場所についてなど、比較してみるのもオススメです。(同じ有尾目の「ウーパールーパー」についてはコチラの記事で紹介しています)。

幹細胞】【脱分化
 アカハライモリの再生能力のヒミツを調べてみましょう。生き物の再生能力のカギを握るのは「幹細胞」です。受精卵から分かれた幹細胞は、さまざまな器官の細胞になります。それを「分化」と呼びます。一度特定の器官に分化した細胞は幹細胞に戻ることはありませんが、イモリには驚きのメカニズムが備わっているようです。人間のどんな病気に役立ちそうかなども合わせて調べてみてください。

・飼育から自由研究へ

繁殖に挑戦しよう
 アカハライモリの飼育になれてきたら、複数飼育をして繁殖に挑戦するのもよいでしょう。ここで説明してきた通り、幼生、幼体、成体と成長するにしたがって生活形態が変わるため、卵から育てるには知識と準備、日々の観察が必要になります。その分、その記録をしっかり残せば内容のある自由研究につながるでしょう。

テーマを決めて観察・実験しよう
 テーマを決めて観察・実験にじっくり取り組むのもおすすめです。再生能力や遺伝、行動観察など、自分の興味にあったテーマを決めて計画を立てましょう。すぐに完成する内容ではありませんが、自宅で飼育しているからこそ継続的に進めることができます。また、これまでイモリをテーマにした自由研究にはどんなものがあるか調べて参考にしてみてください(アカハライモリの個体に負担をかける実験をする場合には、大人と相談してよりよい方法でできるようにしましょう)。


 アカハライモリの生態や飼育については、コカネット「デジタル図書館」に入っている下記の書籍も参考になります(閲覧はコカネットプレミアム(DX)会員のみ)。


爬虫類・両生類★飼い方上手になれる!
『ウーパールーパー・イモリ・サンショウウオの仲間』

著:佐々木浩之


文・写真

佐々木浩之 著者の記事一覧

水辺の生物を中心に撮影を行うフリーの写真家。中でも観賞魚を実際に飼育し、状態よく仕上げた動きのある写真に定評がある。幼少より水辺の生物に興味をもち、10歳で熱帯魚の飼育を始める。東南アジアなどの現地で実際に採集、撮影を行い、それら実践に基づいた飼育情報や生態写真を雑誌等で発表している。熱帯魚関連の著書多数。

協力/キョーリン

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