連載《人体MAPS》 第4話「頭」

 体の中には、ふしぎがいっぱい! この連載では、自分の体の中のいろいろな部分をめぐる旅の案内をしていきます。人体の“地図”を手に、一つひとつの部分の役割を知っていけば、もっと自分の体、そしてまわりの人の体を大切にする気持ちがわいてくるでしょう。

みんなと一緒に人体をめぐる旅をするヒュウマとミコト。

 今日のお話のテーマは()
あたま
」です。

頭はどこにある?

 あなたの「頭」は体のどこにありますか? さわってみましょう。

 そう。あなたの体のてっぺんに、1つありますね。

 ちなみに、顔と頭の境目(さかいめ)前髪(まえがみ)の生え(ぎわ)あたりと思っている人が多いけれど、正しくは、眉毛(まゆげ)のあるあたりです。ですから、おでこは顔の一部ではなく頭の一部となります。

頭はなんのためにある?

 さて、頭は何のためにあるのでしょう。

 そうですね、体の中でいちばん大事な「(のう)を守るためにあるのですね。脳は、あなたがものを見たり、音を聞いたり、においを()いだり、食べ物を味わったり、(いた)いと感じたり、何かにさわっていることを感じたり、体を動かしたり、考えたり、記憶したり、話をしたり、お腹や胸の中の内臓(ないぞう)を動かしたりと、とにかくこれら生きていくために必要なことすべてにかかわっている場所です。だから、そんな大切な脳がつぶれないように守ってくれているのが頭、ということですね。

 一般(いっぱん)に、(かしこ)いことを「頭がいい」といいます。すると、これまでの話の流れでは、賢いかどうかの決め手は頭ではなく脳だといえますね。その他にも、「頭を使いなさい」「頭がまっ白」なんていいます。頭はなにかと脳と同じように扱われるきらいがあります。あなたも頭を使って賢くなりましょう。

頭を守るもの

 さて、あなたの体の中で、頭だけ毛((かみ)の毛)がたくさん生えています。これはなぜでしょう?

 髪の毛って、実はクッションの役割をします。もし頭にものがぶつかったり、落ちてきたりしても、髪の毛はぶつかる力(衝撃(しょうげき))を和らげてくれます。

 そしてもう一つ、髪の毛は温度を調節する役割もあります。暑さや寒さから体温が急に上がったり下がったりしないように、体の中の温度を一定に保ってくれます。これは頭の中にある脳を守ることにもなります。その他、太陽の光の中にある有害な紫外線という光が直接頭皮に当たることを防いだり、風が吹く方向を感じとったりと、髪の毛は実に多くの大切な役割があるのです。

 次に、髪の毛が生えている皮膚をとくに「頭皮とうひ」というのだけど、頭皮は体の他の部分の皮膚よりも厚く、丈夫につくられています。これも頭にものがぶつかってもその衝撃を和らげることに役立つ構造といえますね。

 次に、頭の皮膚のもっと下(奥)には何があるかわかるかな? そう、骨。正確には頭蓋骨とうがいこつ(一般には、「ずがいこつ」とよばれます)という骨があります。頭蓋骨は硬くて丈夫なつくりになっていて、脳を守る機能としてはもっとも頼もしく、なくてはならない骨です。まるでヘルメットみたいですね。

 頭には、脳とそれを守るための毛、皮膚、骨がある理由がわかりましたね。

頭の中には大切な「脳」が入っています。脳はとっても柔らかく、つぶれやすい。だから脳を守るためのいくつかのものが脳の周りにあります。まず、頭皮とそこから生える髪の毛。頭皮の奥には硬くて丈夫な頭蓋骨があって、さらにその奥には、髄膜
ずいまく
とよばれる3層の膜(そとがわから順に、硬膜
こうまく
、クモ膜、軟膜
なんまく
)があって、やっとその奥に脳があります。脳は厳重な護衛によって守られていることがわかります。

頭を守るための体の反応

 あなたは例えば野球ボールが飛んできて頭に当たりそうになったとき、「危ない!!!」って思わずしゃがみこんで、手で頭を守る姿勢(しせい)をとったことあるかな?

 このとっさに頭を守る体勢(たいせい)をとる体の反応のことを、むずかしい言葉で「反射(はんしゃ)」とか「防衛(ぼうえい)本能(ほんのう)」といいます。あなたはあなたの体の中で一番大事なところが「危ない!」というとき、何も考えなくても勝手にそこを守る体勢がとれる。これって、人間の身を守るためのすぐれた機能の一つなのです。

 もちろん、手だけでは守り切れないこともあるから、例えば自転車にのるときにはヘルメットを、散歩するときや外がすごく暑いときは帽子をかぶって頭を守ることが大切です。

頭がいたい!

 あなたは風邪(かぜ)を引いて頭が痛くなったという経験はありますか?

 風邪を引くと脳の中にたくさんの血(血液)を運ぼうとする体の反応が起こりますが、それにともなって血管も太くなります。この血管が太くなる反応が痛みを感じさせる原因となります。

 また、ねむる時間が少なかったり、悩みや困ったことやストレスを抱えていたり、落ち込んだりしたときにも頭に痛みを感じることがあります。それ以外にも、「(へん)頭痛(ずつう)」といった病気で起こることや、脳の病気で起こることもあります。はげしく我慢(がまん)できないほどのひどい痛みがある場合は、お家の人と病院に行きましょう。

赤ちゃんの頭は柔らかい

 あなたは、生まれたての赤ちゃんの頭を触ったことがありますか? 生まれたての赤ちゃんの頭って、大人の頭と違ってすごく(やわ)らかいつくりになっています。それはなぜか。

 実は、赤ちゃんの頭の骨そのものがまだ柔らかいから。正確には、まだすべて骨になってない。

 赤ちゃんってお母さんのお腹の中から生まれてくるのだけど、もしも赤ちゃんの骨が硬くて大きいつくりだったら、赤ちゃんの頭がつかえてしまってお母さんのお腹から出にくくなってしまう。そこで、あたまを柔らかくして、お母さんのお腹から出やすいつくりになっているのです。ちなみに赤ちゃんの頭の骨は、だいたい2歳くらいまでには硬い骨になるといわれています。

脳を傷つけてしまうと?

 直接自分の脳を見ることはできないけれど、脳は大切なはたらきをもっていること以外に絶対覚えておいてほしいことがあります。それは、もしも何かの衝撃(しょうげき)とか、事故(じこ)などで脳がひどく(いた)められてしまったら……、それは大変です!!

 脳は一度傷つくと、もとに戻ることができません。しかも脳って、豆腐のようにすごくやわらかいから傷つきやすい。だから、とにかく自分の体に何か危険なことがあったとき、真っ先に守らないといけないところは、脳がある頭なのです。このことはとても大切なことがだから、必ず覚えておきましょう。

たかいたかーい

 あなたが今より小さい頃、おうちの人が「たかいたかーい!」をしてくれたことありますか?

 あれって、体がフワッと()いて、とてもおもしろい! 子供もおもしろいし、やっている大人もおもしろい。だから、何回もやってしまう。実はあの「たかいたかーい」は、頭の中の脳がはげしく揺れてしまって、最悪の場合傷めてしまうことがあるのです。だから、「たかいたかーい!」には注意が必要なのです。

頭にまつわることわざ

 ここで1つ面白いことわざを紹介します。

 「あたま(かく)して(しり)(かく)さず」という諺を聞いたことがありますか? これは、ある人が(てき)に追われて、必死に草むらに頭からつっこんで(かく)れたのだけど、その人は隠れた気になっているだけで、実はお尻が丸見えで隠れていなかった、だから敵にみつかってしまった。こんな話から生まれたことわざです。つまり、自分の弱いところや悪いところを隠そうとしても、本人は隠した気になっているだけで、外から見ると一部だけしか隠れていない、バレバレ。そんな意味ですね。気を付けましょうね、(うそ)をついても結局バレてしまうから。

絶対にしてはいけないこと

 最後に、あなたは鼻の孔に鉛筆(えんぴつ)を入れたり、口の中にお(はし)をくわえたまま走り回ったりしたことはありませんか? これはね、何があっても、冗談でも、あそびでも、“絶対に”、してはいけません!

 もし、前向きにこけてしまったら、鉛筆やお箸は細長い棒の形をしているので、のどの奥にその(ぼう)がささってしまうかもしれません。もしもそんなことになったら一大事です。のどの奥って、直接目で見ることはできないけれど、実は人間の体の中で一番大事な“脳”があるのです。脳は、頭にもあるけれど、のどの奥、つまり首の上の方まであるため、こけたときに()()さった棒が、脳も突き刺してしまうかもしれません。これは超危険です。

 もしあなたの脳が傷つけば、さっきお話ししたように、見たり、聞いたり、話したり、体を動かしたり、内臓をはたらかせたりという脳のはたらきの一部、もしくはほとんどがダメになってしまうかもしれません。だから、あそびや冗談でお箸をくわえることはもちろん、お友だちの頭をたたいたり激しく揺らしたりすることも絶対にやめましょうね!

のどや鼻の奥には脳の一部である「脳幹
のうかん
」という場所があります。脳幹は、息を吸ったり吐いたりする「呼吸」運動や、心臓の動きを調節するなど重要な役割を果たしています。もしも先が細く尖った棒状のものが咽や鼻の奥に刺さってしまうと、とんでもないことになってしまいます。あそびでも冗談でも何でも、そのようなものを口にくわえて走り回るなどの真似は危険ですから、絶対しないようにしましょう。

まとめ

 今日のお話をまとめると、頭は、体の中で一番大切な脳が入っているところ。頭は、髪の毛、頭皮、頭蓋骨など、脳を守るものための構造で守られている。脳を傷つけてしまうと、回復することがむずかしい。

 いかがでしたか? 「頭」はあなたの体の中の大切な場所だということがわかりましたか?

 大切にしましょうね、あなたの「頭」。

川畑龍史 著者の記事一覧

大阪大学大学院医学系研究科修了 博士(医学)。国立長寿医療センター(研究所)にて慢性腎不全の病態研究に従事。現在、名古屋文理大学短期大学部食物栄養学科准教授、愛知学院大学心身科学部客員研究員。主な担当科目は、自然科学、生物学、解剖生理学、生化学、病態生理学、病態治療論。主な著書:『人体の中の自然科学』(東京教学社)、『解剖生理学実験』(東京教学社)、『なんでやねん!根拠がわかる解剖学・生理学 要点50』(メディカ出版)、『ほんまかいな!根拠がわかる解剖学・生理学 要点39』(メディカ出版)、『イカのからだの不思議発見』(文芸社)など

(イラスト/齊藤恵)

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