どうして鼻をつまむと声が変わるの?

鼻の穴から音が送り出されなくなるから

私たちは普段どうやって声を出しているのでしょうか。人間が発声するときはまず、肺から送り出された空気の流れによって喉にある声帯という筋肉の膜を振動させ、ブザーのような音声の原音をつくります。その原音を咽頭(のど)、口腔(口)、鼻腔(鼻)に響かせて、ある高さの音は強めたり、一方それとは違う高さの音は弱めたりしたものを口と鼻から外に向かって送り出します。口の先の約10cmのところで、その2つの音が合成されます。

さまざまな音の違いは、あごの開き具合や舌の位置によって変わります。口を「あ」の形にすれば、「あ」という音に必要な高さの音だけが強められたものが外に送り出されるわけです。鼻の中で共鳴した音は通常であれば、鼻の穴から外部に送り出されます。しかし、鼻をつまむと鼻の穴がふさがれてしまい、一部分は口の中に反射され口から外に送り出されますが、鼻の穴から出るはずだった量と比べると微々たるものです。鼻で共鳴した音はほとんど反映されなくなり、音声に変化が生じることになります。母音(日本語だと、あ・い・う・え・おの5つ)の高い周波数の成分が特に出されにくくなり、こもったような音声になります。これがいわゆる「鼻声」で、音声が鼻から放出されていない状態です。

マイクを使って話したり歌ったりするときにマイクを口に近づけすぎると、マイクが鼻からの音を拾えなくなり、やや鼻声になってしまいます。前述の通り、口からの音と鼻からの音が合成されるのは口から約10cmのところなので、マイクをそれくらい離せば普通の声になりますよ。

(日本音響研究所所長 鈴木 創)

発声のしくみ

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