映画「夏への扉 -キミのいる未来へ-」三木孝浩監督インタビュー【後編】

 2021年6月25日(金)公開の映画「夏への扉 -キミのいる未来へ-」の三木孝浩監督スペシャルインタビュー! 科学技術を軸に展開する本作の見どころを語っていただいた前編に続き、後編では劇中に登場する『子供の科学』のお話も登場します。

―――ロボットの研究開発をしている主人公を山﨑賢人さんが演じています。研究者というようなイメージはなかったですが、見事に演じられていました。

 山﨑さんは実はものすごいSF好きで、コールドスリープの装置や時間転移装置、いろいろなロボットなどが撮影現場にたくさん登場するので、見るたびにとてもはしゃいでいました(笑)。これまで研究者のようなイメージの役を演じたことはなかったと思いますが、とても楽しそうに、入り込んで演じてくれましたね。

―――主人公・高倉宗一郎の研究室から物語が始まりますが、ロボット開発の現場が非常にリアルで驚きました。

 この研究室は、早稲田大学の高西淳夫
たかにしあつお
教授
の研究室をお借りして撮影しています。ロボット開発の本物の最前線がセットになっていますから、置かれている装置や雑然とした様子などもリアルに感じていただけると思います。よく見ると、有名な人間型ロボット「WABOT
ワボット
」がいるのもわかりますよ。

―――そして劇中では、われらが『子供の科学』も登場! しかもストーリーの中でとても重要な場面で使っていただいています。

 1995年当時の科学が好きな男の子が読む雑誌がカギをにぎる場面があるわけですが、1995年1月号の表紙を見て、「これだ!」とガッツポーズしました。雪が降る冬のシーンで、まさに当時読まれていた子供の科学1月号が、将来ロボット開発者になる少年が好きそうなメカの表紙! 運命の出会いだと思いました。

実際に映画で使われた子供の科学1995年1月号。右下に書かれたサインは、映画の主人公・高倉宗一郎が書いたものだ。
映画で使った雑誌の誌面。実は、当時実際に掲載されていた発明のコーナーを一部つくりかえた上で、このページを開いて読んでいるシーンを撮影している。この中に、映画に登場するキーワードも……!?

 『子供の科学』が小道具としてぴったりだということももちろんあったのですが、創刊から97年間、未来に活躍する研究者や開発者を育て続けている雑誌の誌面には、「未来へのポジティブな想像力」にあふれていると思うんです。

 最初にお話した、「こんな未来にしたい!」という未来へのポジティブな想像力が、困難を打破する強い力になるというこの物語のテーマと、『子供の科学』のメッセージがリンクしている気がしたんですよね。ワクワクする未来を自分の力でつくっていこうとする読者のみなさんに、ぜひこの映画を見てほしいです。

―――原作となった小説『夏への扉』が好きな人へのおすすめポイントはどんなところになりますか?

 原作は、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」など後のタイムトラベル映画の元ネタになったというほどの世界的名作ですが、日本のファンも多いんです。絶望的な状況になっても、大切な人のためにあきらめずに立ち向かっていく主人公の姿が、日本人の琴線
きんせん
にふれるところがあるんじゃないかなと感じました。こういう作品の魅力を大切にしたいという思いでつくらせていただきました。

 あと、原作はネコ好きのファンも多いですよね(笑)。宗一郎の大切な家族であるネコのピートを演じた2匹のネコ“パスタ”と“ベーコン”の演技にも注目です! パスタはとても愛くるしい表情が魅力、ベーコンはどんな場所でも落ち着いて演技をしてくれて助かりました。ネコの表情から、「こんなことを思っているんじゃないかな」と想像力をかきたてられる、いい芝居をしてくれています。

―――最後に、読者やその親世代のみなさんにメッセージをお願いします。

 映画の中に出てくるテクノロジーももちろん楽しんでもらいたい魅力のひとつですが、この作品の最大の魅力は、窮地におちいる主人公が相棒のロボットとともに未来を変えるために奮闘するハラハラドキドキの展開。そして主人公と、清原果耶
きよはらかや
さんが演じるヒロインの璃子との強い絆が生む感動のストーリーです。

 今は暗い話題が多いですが、どんな困難にもへこたれない主人公や、登場人物たちの強い絆にふれて、映画館を出るときにはポジティブな気持ちになってもらえたらと思っています。

 また、ぜひ親子で見てもらって、「コールドスリープできるとしたらどうする?」とか、「30年後どうなってるといいかな?」とか、楽しいコミュニケーションのきっかけになったらいいなと思います。

三木孝浩監督
1974年生まれ・徳島県出身。2000年より多数のミュージックビデオを監督し、MTV VIDEO MUSIC AWARDS JAPAN 2005 最優秀ビデオ賞、JUJU feat. Spontania『素直になれたら』のプロモーションの一環として制作した世界初のペアモバイルムービーでカンヌ国際広告祭2009 メディア部門金賞などを受賞。2010年、映画『ソラニン』で長編監督デビュー。以降の映画作品として、『管制塔』(2011)、『僕等がいた 前篇・後篇』(2012)、『陽だまりの彼女』(2013)、『ホットロード』(2014)、『アオハライド』(2014)、『くちびるに歌を』(2015)、『青空エール』(2016)、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(2016)、『先生! 、、、好きになってもいいですか?』(2017)、『坂道のアポロン』(2018)、『フォルトゥナの瞳』(2019)、『思い、思われ、ふり、ふられ』(2020) 、『きみの瞳が問いかけている』(2020)など。

映画「夏への扉 -キミがいる未来へ-」

 1956年にアメリカで発表され、世界中で愛されるタイムトラベル小説の名作夏への
とびら
』(ロバート・A・ハインライン著)が、なんと日本を舞台に、全世界ではじめて映画化

 タイムトラベル、ロボットなどの科学技術を軸に展開される映画「夏への扉 -キミのいる未来へ-」。未来を変えるために30年の時を超える科学者を演じるのは、人気俳優の山﨑賢人
やまざきけんと
さん。メガホンをとるのは、「フォルトナの瞳」などのヒット作で知られる三木孝浩
みきたかひろ
監督です。そして、主題歌を担当するのはアニメ「鬼滅
きめつ
の刃」などで 人気のLiSAさんです。

【公式サイト】 https://natsu-eno-tobira.com

2021年6月25日(金)公開

【CAST&STAFF】
山﨑賢人
清原果耶 夏菜 眞島秀和 浜野謙太
田口トモロヲ 高梨 臨 原田泰造
藤木直人

監督:三木孝浩
脚本:菅野友恵
音楽:林ゆうき
主題歌: LiSA「サプライズ」(SACRA MUSIC)
原作:「夏への扉」ロバート・A・ハインライン(著)/福島正実(訳)(ハヤカワ文庫刊)

【STORY】
将来を期待される科学者の高倉宗一郎
たかくらそういちろう
は、亡き養父である松下の会社で研究に没頭していた。ずっと孤独だった宗一郎は、自分を
した
ってくれる松下の娘・璃子
りこ
と愛猫ピートを、家族のように大切に思っていた。しかし、研究の完成を目前に控えながら、宗一郎は
わな
にはめられ、冷凍睡眠させられてしまう。目を覚ますと、そこは30年後の2025年の東京――。宗一郎は、研究もピートも、すべてを失い、璃子が謎の死を遂げていたことを知る。愕然
がくぜん
とする宗一郎だったが、人間そっくりなロボットの力を借り、未来を変えるために動き出す。璃子を絶対救うという、信念とともに。

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1924年創刊の小中学生向け科学月刊誌。話題の科学ニュースを、どこよりもおもしろく、わかりやすく解説。宇宙、生き物、テクノロジーなど、好奇心旺盛な子供たちがわくわくする科学をお届けします。創刊以来、研究者や医師、エンジニアなど一流の人たちが子供時代に読んでいた雑誌として知られています。また、毎月工夫をこらした実験や工作を多数紹介。手を動かしてものづくりをする体験を提供しています。子供向けのプログラミング学習記事も充実。記事の内容と連動したプログラミングキットの開発も行っています。

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