映画「夏への扉 -キミのいる未来へ-」三木孝浩監督インタビュー【前編】

 1956年にアメリカで発表され、世界中で愛されるタイムトラベル小説の名作夏への
とびら
』(ロバート・A・ハインライン著)が、なんと日本を舞台に、全世界ではじめて映画化されます!

 タイムトラベル、ロボットなどの科学技術を軸に展開される映画「夏への扉 -キミのいる未来へ-」。未来を変えるために30年の時を超える科学者を演じるのは、人気俳優の山﨑賢人
やまざきけんと
さん。メガホンをとるのは、「フォルトナの瞳」などのヒット作で知られる三木孝浩
みきたかひろ
監督です。そして、主題歌を担当するのはアニメ「鬼滅
きめつ
の刃」などで 人気のLiSAさんです。

 読者のみなさんに注目してほしいのは、劇中の重要なシーンで登場する雑誌『子供の科学』。KoKaがどのように出てくるかも楽しみに観てほしい!

 新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言の影響で公開延期となっていた本作が、2021年6月25日(金)、いよいよ公開!

【公式サイト】 https://natsu-eno-tobira.com

2021年6月25日(金)公開

 ここでは三木孝浩監督に、本作の見どころや『子供の科学』が登場するシーンのお話、読者だけにこっそり教える映画の注目ポイントなどをインタビュー!

―――「タイムトラベル」、「冷凍睡眠(コールドスリープ)」、「ヒューマノイドロボット」のテクノロジーが映画に登場してワクワクしました! 科学技術のシーンを描くにあたって、どんな点にこだわりましたか?

 原作となっている『夏への扉』をハインラインが書いたのは1950年代です。原作ではハインラインが当時想像した未来が描かれているわけですが、それから70年たって、テクノロジーも大きく進歩しました。

 原作の魅力は、テクノロジーが進歩する未来を、ポジティブに想像して世界を描いているところです。最近つくられている未来を描いた映画を見ると、“ディストピア”感があるというか、暗い未来を想像する作品が多いと感じていました。僕が子供のころに見ていた映画って、もっとワクワクする未来を描いていて、そういう映画を見て育った子供たちが、未来の科学技術を進歩させてきたんじゃないかと思うんです。

 この映画では、原作が描いた未来をアップデートしながら、現代を生きる人がポジティブな未来を思い描けるような作品にしたいと思いました。それは子供の科学の読者のお父さん、お母さんの世代からすると、昔見た映画のようなちょっとノスタルジーな部分もあるかもしれません。大人になって、研究が進んでいろいろわかってくると、現実には「タイムトラベルなんて無理だよ……」と思ってしまいがちですが、「こんな未来もあっていいよね!」と感じてもらえるような映画に仕上がっていると思います。

―――子供の科学の読者の親世代が青春時代を過ごした1995年と、読者が近い将来に生きる2025年。2つの時代を駆け抜けるストーリーですが、それぞれ現実とはちょっと違うおもしろいパラレルワールドになっていますね。

 1995年の世界では、コールドスリープが実用化されているという設定になっています。主人公が保険会社によるコールドスリープのテレビCMを見るシーンがありますが、どこか当時流れていたCMっぽい、見たことがあるようなつくりにしていて、コールドスリープが実現している世界をリアルに感じられるように工夫しています。主人公が入るコールドスリープの装置も、昔マンガやSF映画などで見たことがあるような造形を意識しました。

 2025年の世界では、ロボットが社会で活躍している世界を描いています。また、過去に行ける「時間転移装置」がひそかに開発されているわけですが、こうした技術の造形や原理の部分は、ロボットの研究開発の第一線でご活躍されている、産業技術総合研究所梶田秀司
かじたしゅうじ
先生
にご協力いただきました。映画のセットに数式が映りこんだりもしますが、こういう部分も梶田先生にチェックしていただいています。

 もちろん現実には、2025年にここまでロボット技術が進むことはないわけですが、「そういう世界があるとしたらどうなっているだろう?」というワクワク感をできるだけリアルに感じてもらえるように、細部もつくり込んでいます。

―――藤木直人さん演じるロボットが、ロボットらしく見えるのですが、愛嬌のある人間のようにも感じられ、とても印象的でした。

 路上パフォーマンスなどでアンドロイドを演じているSAORIさんにご協力いただき、藤木さんと一緒に実際にパフォーマンスを見させていただいて、どうしたらロボットらしさが出せるかを考えました。

 たとえば、目線の動かし方を「中空を見ている」ような、目線が合っているようで合っていないイメージにすると、ロボットらしいしぐさになってきます。また、これは撮影後の編集中に気づいたのですが、撮影したどのカットを見ても、藤木さんは一切まばたきをしていなかったんです! これにはびっくりしましたね。こうした演技のひとつひとつが、ロボットらしさにつながっています。

 一方で、この映画の大きな魅力は、主人公の山﨑賢人さん演じるロボット開発者の高倉宗一郎と、藤木直人さん演じるロボットが、少しずつ心を通わせ、ともに未来を変えるために奮闘する、いわゆる“バディムービー”としてのおもしろさにあります。最初は冷たいロボットのように見えますが、主人公と一緒に旅をして、窮地
きゅうち
を救う姿を見るうちに、いつの間にかロボットが熱い心をもった相棒に感じられて、その友情に感動していただけるはずです!

(後編に続く)

三木孝浩監督
1974年生まれ・徳島県出身。2000年より多数のミュージックビデオを監督し、MTV VIDEO MUSIC AWARDS JAPAN 2005 最優秀ビデオ賞、JUJU feat. Spontania『素直になれたら』のプロモーションの一環として制作した世界初のペアモバイルムービーでカンヌ国際広告祭2009 メディア部門金賞などを受賞。2010年、映画『ソラニン』で長編監督デビュー。以降の映画作品として、『管制塔』(2011)、『僕等がいた 前篇・後篇』(2012)、『陽だまりの彼女』(2013)、『ホットロード』(2014)、『アオハライド』(2014)、『くちびるに歌を』(2015)、『青空エール』(2016)、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(2016)、『先生! 、、、好きになってもいいですか?』(2017)、『坂道のアポロン』(2018)、『フォルトゥナの瞳』(2019)、『思い、思われ、ふり、ふられ』(2020) 、『きみの瞳が問いかけている』(2020)など。

6月13日(日)開催の読者限定「親子試写会」にご招待!

 今回特別に、6月25日(金)公開の本作をKoKa読者のみんなで鑑賞する親子試写会を開催します! コカネット会員ならどなたでも応募可能です。

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