挿し木できるものとできないものがあるのはなぜ?

キクやアジサイなどの挿し木をしたことがありますか? 挿し木は、茎など根がない部位(葉などを使用する場合もあります)を切り取り、水分を含んだ土や砂に挿して根を出させて増やす技術です。根が出ることを「発根」と呼びますが、根は挿し穂の根原基(根の基)が活性化されて、発生します。発根後に充分な水や養分が吸収されると、茎から新芽が出てきて、苗として自立するのです。
挿し木技術は、種子からでは同じ品種を増やせないような果樹や花の仲間では一般的な方法ですが、やりやすい種類と難しい種類があります。根よりも先に芽が出るなどして乾燥しやすいもの、病害に弱く、挿し穂が腐りやすいもの、成長を促す植物ホルモンであるオーキシンなどの活性が低いものは、発根が難しいといえます。また、発根阻害物質が含まれていたり、切り口から酸化しやすいものも困難です。
また、同じ種類でも品種や、採取した部位の幼若性(若さの尺度)や時期などによっても、発根の難易度が大きく変わることがあります。親木の年齢が高かったり、採取した挿し穂が株の先端で幼若性が低かったり、花芽があるような場合には発根能力が低くなることがわかっています。
うまく発根させるには、比較的若い親株の根元に近い部位から挿し穂をとり、乾燥したり、腐敗したりしないよう気をつけて適切に管理し、消毒した挿し床に慎重に挿し木することが大切です。また、どうしても挿し木が困難な場合は「接ぎ木」で増やすことも行われます。
(千葉大学園芸学部 丸尾 達)

イチジクの挿し木苗
果樹類では、挿し木が一般的ですが、穂によっても発根の難易度が異なります。

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