自分の好きなことを究めていけるオンラインスクール「NEST LAB.」。NEST LAB.で自分の研究やものづくりの究め方を学び、大きな成果につなげた先輩がいます。
今回は、「モデルロケット国際大会(IRC)」に出場して好成績を収め、さらに「ディベート甲子園」で全国優勝を果たした小松宥揮さんのストーリーを紹介します。小松さんの挑戦を支えたのは「探求心と自走力」でした。
モノづくりの原点と「課題解決のPDCA」
NEST LAB.で学んだ科学的思考
小松さんがモノづくりや科学への興味を深めた原点は、幼少期に夢中になったレゴ遊びにありました。「自分で組み立てて形にするおもしろさ」に魅せられたそうです。さらに、生物分野への好奇心も高まり、小学5年生のときに「NEST LAB.」に入会します。
NEST LAB.では、「色素増感太陽電池」を用いて、光から電気エネルギーを取り出してモノを動かす実験、魚の解剖といった生物・化学領域の探究など、広く取り組みました。異なる分野の探究を行うことで、小松さんは技術と思考の両面で大きな土台を築きました。
特に3D CADソフト「Fusion 360」を用いた設計技術の習得や、実験や工作を通じて、「失敗から原因を分析し、改善してつくり直す」という「PDCAサイクル」(計画:Plan、実行:Do、評価:Check、改善:Action)を体得できたそうです。これは、その後に取り組むロケット開発において大きな糧となりました。未知の課題や環境にぶつかったとき、どのように思考し対処すべきか、という研究上の姿勢を小松さんはNEST LAB.での実践を通して自然と身につけていったのです。
「当時体験したことは、今のロケット開発にもすごくつながっていると思っています。物をつくるときは必ず課題にぶつかりますが、失敗したときに“どこがまずかったのか”を分析し、改善してもう1回つくり直すというサイクルを実際に経験できたことが大きかったです」と小松さんは当時を振り返ります。

有志5人から世界へ!
小石川ロケット班の果敢な挑戦
小松さんは、中学2年生のとき、同じ中学校の有志5人が「自分たちの手でロケットをつくりたい」という強い想いで立ち上げた物理研究会「小石川ロケット班」に感銘を受け、創立直後から活動に合流しました。しかし、知識もノウハウも頼れる人もまったくない、手探りからのスタートでした。
手探りで機体を製作して臨んだ2022年の全国大会(日本モデルロケット協会主催)では、コピー用紙を主な素材にしてつくった重い機体が、悪天候の中で危険飛行や墜落を引き起こし、「DQ(失格)」が相次ぎました。結果は参加校の中で最下位。悔しさと共に、根本的な設計の見直しを迫られる苦い挫折となりました。
最下位という現実に対し、小松さんたちは、プライドを捨てて外部から学ぶ道を選びました。大会で出会った他校の優れた軽量の機体に目を見張り、頭を下げて製作法のアドバイスを乞いました。この謙虚でオープンな姿勢からブレイクスルーが生まれます。
それまでの重いコピー用紙から、世界一軽量とされる木材「バルサ材」や「繊維強化プラスチック(FRP)」へと機体の素材を変更。さらに、複雑な形状を持つロケットの先端「ノーズコーン」などの部品を高い精度で量産するために、NEST LAB.時代に使用経験があった「3Dプリンター」を活用しました。また、飛行時に翼が振動して機体が不安定になる問題に対しては、機体に溝を掘って翼を挟み込む設計を考案して解決しました。無理に大きな性能向上を目指すのではなく、まずは“確実に安定して飛ぶ設計”を確立し、そこから不要な部分を取り除いて軽量化を図る、という着実なエンジニアリング・アプローチへの転換を果たしました。
モデルロケット競技には、飛翔高度や滞空時間を単純に競う「小型機体(20〜30cm程度)」と、決められた目標数値への精密さが問われる「大型機体(65cm〜1m程度)」が存在します。特にロケット甲子園などで用いられる大型機体競技では、「指定された目標高度と機体から射出されたパラシュートの目標滞空時間に、どれだけ正確に合致させられるか」さらに「パラシュート部分に繋がっている機体の中に搭載した生卵を割らずに回収できるか」というシビアなミッションが課されます。
この精密飛行を実現するため、小松さんは海外の英語論文などを読み、流体力学、重力、空気抵抗の関係式を調べました。また、降下時の「終端速度(落下速度が一定になる速度)」を算出する独自の計算式を組み込んだ「Excelシミュレーションシート」を仲間と共に自作しました。 打ち上げ当日の風速や気温データを入力することで、目標滞空時間にぴたりと合致するパラシュートの断面積・サイズを割り出すロジックを自分たちの力で構築したのです。

理論的シミュレーションとPDCAサイクルが実を結び、小石川ロケット班は目覚ましい飛躍を遂げます。2024年の小型機体全国大会(第45回モデルロケット全国大会)で高度競技1〜3位を独占して総合優勝
を果たすと、2025年の「ロケット甲子園」でも初出場にして優勝。日本代表としてフランス・パリで開催されたモデルロケット国際大会(IRC)へと駒を進めました。
世界大会挑戦に際しては、旅費やエンジン輸送費を自ら捻出しなければならない、という新たな課題にも直面しましたが、ロケット班の魅力を発信するホームページを自作し、クラウドファンディングに挑戦したり、活動に興味を持ってもらった企業にプレゼンをすることで協賛を募ったりし、資金調達を果たしました。パリの地では打ち上げ競技部門世界4位、プレゼンテーション競技部門世界2位を獲得し、総合4位と健闘しました。



文理の垣根を超えた論理的思考
「ディベート甲子園」全国優勝
小松さんの探究心は、理系のモノづくりだけに留まりません。「論理的に思考し、相手と議論することがおもしろそうだった」という純粋な好奇心から挑戦したのがディベート競技でした。
高校生世代の最高峰とされる準備型日本語ディベート大会「ディベート甲子園」において、小松さんたちのチームはみごと全国優勝を勝ち取りました。
部員60人を抱える強豪校のディベート部は、資料収集専門の部員と“スピーカー(演者)”とを分業して大会に挑んでくる中、小松さんたちの学校にはディベート部すら存在しませんでした。有志メンバーの6名で、膨大な文献の調査から「第1反駁」などの難関スピーカーの役割までを兼任。客観的な論拠の分析と説得力ある反論構築を“自走力”だけで徹底的に突き詰め、強豪校を打ち破る快挙を果たしたのです。さらに、準備型英語ディベートの全国大会でも全国3位に入賞しました。
事前に綿密な論理を組み立て、相手の主張を客観的に検証して自分の意見を明確に伝える経験は、小松さんの中で大きな強みとなりました。
「自分の意見を論理的かつ明確に伝える力は、研究者やエンジニアとして活動する上で極めて強力な武器になると感じています」と小松さんは語ります。ディベートで培われた論理的思考力と多角的な発信力は、海外論文を読み解く力となり、モデルロケット国際大会で果たしたプレゼンテーション部門世界2位や、クラウドファンディングで多くの共感を呼び込んだ実績へと直接結実することになりました。
持続可能な宇宙開発を目指して
人工衛星研究と未来への展望
高校生活での多角的な探究活動を終え、現在は大学受験へと向かっている小松さん。その眼差しは、すでに高度な航空宇宙研究と持続可能な宇宙産業の未来を見据えています。
将来は「衛星の機構設計や根幹部分の構造開発」に携わることを目指し、極限環境で確実に作動するメカニズムを探求したいと考えています。
近年、世界的な宇宙開発の加速に伴い、「宇宙デブリ(宇宙ゴミ)」による軌道上での衝突リスクが深刻な課題となっています。小松さんは、宇宙ゴミの回収技術に挑むベンチャー企業の取り組みや、環境負荷の少ない「木製衛星」の試みにも強い関心を寄せています。
「宇宙にものを打ち上げる以上、それが将来ゴミとなって事故を起こさないよう、打ち上げた後の回収や循環まで見据えて持続可能な(サステナブルな)仕組みを設計することが不可欠だと考えています」と小松さんは語ります。
「おもしろそう」という純粋な興味を起点として、壁にぶつかってもPDCAサイクルを回して自ら走り続ける小松さん。“探究心と自走力”で推進し、未知の課題へ挑み続ける小松さんの挑戦は、これからも宇宙のように果てしなく広がっていきます。

小松宥揮(こまつ・ゆうき)さん
東京都立小石川中等教育学校 高校3年生(取材時)。小学5年生からNEST LAB.で学び、色素増感太陽電池の実験や3D CAD(Fusion 360)、PDCAサイクルを通じて科学的思考の土台を習得。中学2年時から物理研究会「ロケット班」で機体設計を担当。初出場の全国大会最下位という挫折から、他校からのアドバイス収集、バルサ材やFRP、3Dプリンターの導入、自作Excelシミュレーションの構築により著しい技術の向上を果たす。2024年モデルロケット全国大会総合優勝、2025年ロケット甲子園優勝を経て、パリ開催のモデルロケット国際大会(IRC)にて打ち上げ競技部門4位・プレゼンテーション競技部門2位を獲得。さらに有志チームで「ディベート甲子園」に出場し全国優勝。英語ディベート全国3位を達成。将来は航空宇宙・人工衛星の構造設計研究を目指している。
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