自分の好きなことを究めていけるオンラインスクール「NEST LAB.」。NEST LAB.で自分の研究やものづくりの究め方を学び、大きな成果につなげた先輩がいます。今回は、「人の役に立ちたい」という気持ちと、植物やバイオテクノロジーへの尽きない好奇心で、小学生から高校生まで、立ち止まることなく研究を続けている諸井美遥(もろい・みはる)さんの、挑戦と成長のストーリーを紹介します。
本物の研究道具に大興奮!
魚肉の細胞培養と初めての学会
諸井さんの研究の道への扉が開いたのは、小学4年生のときでした。NEST LAB. (ジュニアドクター)の「マスターコース」に参加し、メンターの五十嵐先生とともに「魚肉の細胞培養」に取り組みました。「実験では、食べられる身の部分(筋肉細胞)の培養には苦戦したものの、腎臓細胞の培養でみごとに成功しました。研究者が使うような本物の実験道具を使い、魚の細胞を自分で増やすという経験は、小学生の私にとって想像もつかないほど刺激的な世界でした」と諸井さん。
生まれて初めて参加した研究発表の場「サイエンスキャッスル」でのポスタープレゼンテーションは、大人の研究者や仲間たちと科学について対話することができ、現在の諸井さんにとって、重要な原体験になったそうです。

不可能に挑むアイデア
自転車の空気入れを使って「光る植物」をつくる
その後、中学受験のために研究を少しお休みしましたが、中学1年生になると、ふたたび研究を始めた諸井さん。今度は大好きな「植物」に焦点を当て、「エアプランツを遺伝子組み換えで光らせる」という、極めてハイレベルなテーマに挑みました。 しかも、“中学生や小学生でもできる簡易的な方法”で行うことにこだわりました。遺伝子組み換え実験に使用する高価な専用機器の代わりに、自転車の空気入れを改造して、パーティクルガン(遺伝子銃)を自身で製作、蛍光遺伝子をコーティングした金粒子を植物に打ち込む方法を考案したのです。
学会直前の限られた時間の中での試行錯誤だったため、結果的には植物が光るまでには至りませんでしたが、諸井さんは「試行回数の不足が原因ということがはっきりわかりました。機会があればまた挑戦したい、自分の研究の中でも大好きなテーマです」と笑顔で語ります。


雑菌混入との格闘で培った
「深く考える力」
高校生になると、さらにビジョンが広がります。未来の街づくりを見据え、「都市環境の中で、効率よく酸素を生み出す媒体をつくりたい」という考えから、実験の手段として使われるイネの「カルス(光独立栄養細胞)」の光合成能力を調べる研究に没頭しました。
しかし、実験では試練の連続でした。無菌操作がうまくいかず、何回もコンタミ(雑菌の混入)に悩まされ、思うようなデータが出ない日々が続きます。 一般的な高校生ならここで挫折してしまいそうな状況ですが、諸井さんは諦めませんでした。「なぜ失敗したのか」「どうすれば改善できるのか」を執念深く突き詰め、自分の中で徹底的な考察を積み重ねていったのです。
有意なデータは出なくても、この日々の中で「失敗を科学的に分析する思考力」という、研究者としてもっとも大切な力が磨かれていきました。

失敗のプロセスを強みに
総合型選抜入試での成功
こうして、高校生活を通じて磨き上げた「地道に取り組む粘り強さと深い科学的思考力」を携えて、諸井さんは東京都立大学の総合型選抜(旧AO入試)に挑むことを決意します。
試験では、華々しい成功実績を取り繕って語るのではなく、「実験はここまでしかできなかったけれど、次のステップではこの手順と選択肢で改善します」という、自身のリアルな試行錯誤のプロセスと今後の展望をアピールしました。 大きな成果が出なかったことを隠すのではなく、そのプロセスを自らの強みに変えて表現した結果、みごとに生命科学科への合格を果たしました。

「誰かのために」から
「自分の好きを究めた先にある社会貢献」へ
研究活動と並行して、幼少期からダンスに打ち込んできた諸井さん。中学~高校の5年間は部活でヒップホップやジャズダンスに熱中し、現在は大学のチアダンス部で新しいターンやジャンプに挑戦しているそうです。
これまで、諸井さんの心の中にあり続けてきたのは、小学校4年生の「1/2成人式」のときに書いた「人の役に立ちたい」という夢、そして、NEST LAB.で出会った「SDGs」という社会的な意義への憧れでした。
しかし、数々の失敗や大学での学びを経て、諸井さんのマインドはさらに成熟しました。以前はただ「誰かの役に立つ技術をつくりたい」と思っていた諸井さん。しかし、現在は、ダンスや研究のように“好きなことを続ける力”そのものが自身の強みと捉えるようになりました。「自分が興味を持った疑問に突き進む中で生まれたおもしろい発見が、いつか巡り巡って社会の役に立つ」、いつか、そんな研究者になりたいと考えるようになったそうです。

「人工光合成」で社会に役立つ技術をつくりたい!
現在、諸井さんは東京都立大学の緑豊かなキャンパスに通いながら、かつて自分が学んだNEST LAB.で子供たちの学びを支えるスタッフとしても活動しています。大学では、1年生から自主的に研究室で実験ができる「自主研究」制度を使って、新しいテーマでの研究も始める予定とのことです。
今、諸井さんが見据えている未来は、地球の温暖化やエネルギー問題を解決する「人工光合成」の技術開発に携わること。植物や微生物が持つ精緻な光合成の仕組みを解き明かし、社会に役立つパズルのピースを1つでも多く生み出したいと考えています。そのために、諸井さんの地道に粘り強く積み上げていく研究はこれからも続いていきます。


諸井美遥(もろい・みはる)さん
東京都立大学 理学部 生命科学科(1年生)。小学生からNESTLAB.で研究を続け、魚肉培養、光るエアプランツ、光独立栄養細胞(イネのカルス)の研究など、多岐にわたるテーマに挑戦。現在は学業の傍ら、NEST LAB.の運営を支えるスタッフとしても活躍中。趣味はダンス。
■NEST LAB.では、夏の体験教室の参加者を募集中です!詳細はこちら