どうしてアルコールで酔っ払うの?

脳の神経を抑制し、思考などを担う部位に影響するから

脳には2種類の神経の回路があります。興奮性の神経回路と抑制の神経回路で、脳はそれらの回路をうまく調整してさまざまな機能を担っています。車にたとえるとアクセルとブレーキに当たりますが、アルコールは脳の中のアクセルを抑えてブレーキを働かせます。そのため、アルコールを飲むと、眠くなったり、うまく歩けなくなって千鳥足になったり、記憶できなくなったりします。
また、脳には、呼吸などの生命活動に直結する機能を担う原始的な部分(脳幹)、情動などを担うほかの動物の脳にも存在する部分(大脳辺縁系)、思考などの機能を担うヒトだけが大きく発達させた部分(大脳皮質)などがあります。アルコールはヒトで発達した脳の部分から影響していくので、アルコールを飲むと普段抑えていた感情が現れて、大笑いしたり大泣きしたりといったことが起こるわけです。
アルコールを飲んで車酔いのように気分が悪くなることもありますが、これはアルコールが体内でアセトアルデヒドという物質に変わるため。アセトアルデヒドの分解能力は、遺伝子のタイプによって大きく異なるので、酔いやすい、気持ち悪くなりやすいなどには大きな個人差があります。
脳は周りの状況に対応できるよう柔軟性を持っています。未成年の脳の発達期ではこの柔軟性が特に高く、アルコールの影響を大きく受けかねません。アルコールを飲みすぎると、脳が萎縮して記憶障害や言語障害が続くようになります(図1)。自分の脳を守るためにも、未成年の間は飲酒しないことが大切ですね。
(公益財団法人東京都医学総合研究所 依存性薬物プロジェクト・プロジェクトリーダー 池田和隆)

図1
ピンク色の部分は脳の実質、黒い部分は脳のすき間。
多量のアルコールを飲むと脳が萎縮する。多量飲酒者の脳(右)と普通の人の脳(左)。

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