どうして学名はラテン語なの?

かつて学問言語として使われていた言語だから

生物の分類において、学名をラテン語で記すという原則が生まれたのは、中世以後、ラテン語が学問言語としてヨーロッパで広く使われていたためです。
18世紀スウェーデンの博物学者リンネが、ラテン語の属名と種小名を組み合わせて固有の(地球上にただ1つの)種を表す現在の分類法をつくりあげました。学名によって、各地でいろいろな名で呼ばれていた同じ動植物を、単一の種として正確に記述できるようになったのです。例えば、鳥のトキは「ニッポニア・ニッポン(Nipponia nippon)」で世界中通用します よね。
このリンネの分類方法は種を定義しようとする研究者たちの関心をかきたてました。例えば、リンネは『自然の体系』という著書の中で、「ヒト」を類人猿から区別して「ホモ・サピエンス」(知恵のある人)と名付けました。それに対し、オランダの歴史家であるホイジンガという人物は、ヒトの特徴は「遊戯」する心を持っているかどうかだと考え、ヒトを「ホモ・ルーデンス」(ラテン語で「遊ぶ人」)と定義し直したのです。学名というシステムへの機知のある応答の1つですね。
みなさんだったらヒトにどんな学名をつけるか考えてみてはいかがでしょうか?
(東京外国語大学大学院教授 今福龍太)

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