生き物は炭素を中心にできていると聞いたのですが、どういうことですか?

筋肉や骨、DNAなどは炭素を骨組みにさまざまな元素が結合してできている

人間の体をつくる元素の割合を調べてみますと、体重50kgの人なら、酸素が約33kg、次いで炭素が約9kg、水素が約5kg、窒素が約1.5kgという順になります。これだけ見ると、酸素の方がずっと多いじゃないかと思われそうです。
しかし、人体の約6割は水(水素と酸素)ですので、残った筋肉や脂肪、骨などの重さの約半分は、炭素が占めていることになります。私たちの体の本当に重要な部分は、炭素が主体となってできているのです。
体をつくっている成分を詳しく見ていくと、筋肉や骨は「タンパク質」、脂肪は「脂質」と呼ばれる物質などが集まってできています。これらタンパク質や脂質の正体は、炭素や水素、酸素などがいくつもつながり合ってできた、「分子」と呼ばれるものなのです。
このつながり方はどうなっているかというと、炭素がつながり合って骨組みをつくり、その周りに水素や酸素、窒素などが結合しています。図は、タンパク質の構成成分であるタンパク質の一種です。炭素(灰色)の周りに水素(白)、酸素(赤)、窒素(薄赤)などが結びついている様子がわかります。
炭素が骨組みをつくっている分子はこれだけではありません。遺伝情報を伝えるDNAやRNA、体のエネルギー源になる砂糖などの糖分、体のあちこちに指令を伝えるホルモンなど数多くの分子が、炭素を骨組みとして出来上がっています。
炭素以外の元素、例えば酸素や塩素、鉄などを主体とした分子はないのでしょうか? もちろん、これらを含んだ分子もあります。しかし、これらの元素は電気的にプラスかマイナスかに偏っているため、反発し合ってたくさんつながり合うことができず、複雑な分子をつくることはできません。しかし炭素は中性であるため、いくらでも長くつながり、壊れることのない安定で複雑な分子を、たくさんつくり出せます。
生命の構成元素として炭素が「選ばれた」のは、これが原因であったと思われます。
(佐藤健太郎)

図 体を構成するアミノ酸の一種の分子構造。グレーで示された炭素を骨組みに、水素や酸素、窒素が結びついている。

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