【研救者列伝file.2】折り紙でおうちづくり!? 畳んで便利なスペシャル構造が世界を救う!

 みなさん、こんにちは! 「NEST LAB
ネスト ラボ
」の木村です。

 さて、このコカネット「地球を救う技術に挑む!研救者列伝」も2回目となりました。この連載では、地球を救う課題解決にチャレンジしている日本の大学や企業の研究者を、「研“救”者
けんきゅうしゃ
」として紹介していきます。前回は、特殊な風力発電機で日本の課題を解決する株式会社チャレナジーを取り上げました。まだ読んでいない人は、ぜひこちらも読んでくださいね。

 また、このコーナーは「インタビュー編」と「実験・工作編」に分かれます。インタビュー編で研救者の技術を知った後に、それに関係する科学の原理やしくみを「実験・工作編」で体験してみてください。そしてぜひあなた自身が、次の「研救者」を目指してほしいと思います!

 さて、今回紹介する研救者は、東京都大田区にある株式会社OUTSENSE(アウトセンス)の高橋さんです。

折り紙が宇宙を身近にする!?

 OUTSENSEはなんと「宇宙に家を建てる」ことを目指している会社なんです。

 NASAJAXA先駆者たちが宇宙を切り開き、

 イーロンマスクのスペースXが私たちを宇宙に近づけ、

 そして今、日本のOUTSENSEが、宇宙での滞在を身近なものにしようとしています!

 みなさんが一番気にしているのは「どうやって?」だと思います。 さて、宇宙に家を建てるために、OUTSENSEが持っているすごい技術がこれです!!

 「え、折り紙じゃない!?」

 「宇宙どこ?」 と思うかもしれません。

「しかし、この折り紙こそが日本の課題、そしてなんと宇宙の課題までを解決するんです!」

 そう語るのは株式会社OUTSENSE代表取締役CEOの高橋鷹山
ようざん
さん。ここからは対談形式でお届けします。

株式会社OUTSENSE代表取締役CEOの高橋鷹山さん

──どうして宇宙に家を建てるのに折り紙が役に立つのですか?

高橋 宇宙にものを持っていくのはすごく大変なんですよ。ロケットでたくさんの燃料を使って物を持っていかなくちゃいけないんです。持っていくものは、軽くて、コンパクトな方がいいんです。

 人工衛星や宇宙ステーションの太陽電池だって、持っていくまでに折り畳んでるじゃないですか。あれを開いたまま持っていくロケットは見たことないですよね。

──間違いなく風を受けて、もぎとれますよね。

高橋 そこで考えました。宇宙に持っていく家も折り畳んじゃえば、コンパクトになるんじゃないかと!

宇宙という過酷な空間にこそ活躍する折り紙技術 〜ソガメ折り〜

──でも国際宇宙ステーションだと、バラバラの部品を打ち上げて、ドッキングさせたり組み立てたりしてますよね。それじゃあ、だめなんですか?

高橋 もちろんいろんな方法があると思います。しかし、折り紙技術を使い、折り畳んだ家を宇宙に持っていけば、あとは「引っ張る」だけで展開が可能です。

──引っ張る?

高橋 百聞は一見にしかず、ですね。私たちの紹介動画を見てください。

──うおおお、なんですかこれ。

高橋 これはソガメ折りといって、東海大学の十亀
そがめ
昭人先生が考えた、宇宙でカンタンに建物を展開するための折り紙です。見てください、ひっぱるだけで円筒形の構造物が一瞬で建てられちゃいますね!

──すごいですね、これなら組み立てたりしないから気密が保たれたまま折り畳みできそうですよね。

高橋 はい、そのシンプルさから、OUTSENSEはこのソガメ折りをベースに、一瞬で宇宙に建てられる建物をデザインしました。下の動画を見てください。

 そのほかにも、OUTSENSEは地球上でも「不要なときに収納できる家具」や「防災時にパッと展開できる簡易施設」などといった製品の開発を行っています。

 また、折り畳んでコンパクトにしておき、個別空間が必要なときには大きく展開できるような展開式プライベート空間などの設計をしており、さまざまな課題の解決に折り紙技術の利用を提案しています。

OUTSENSEが提案しているワンタッチ式個別空間。

──これらも宇宙にそのまま持っていけば、そこで使えそうですね!

高橋 実はこのソガメ折りにはさらに元があって、それはすでに宇宙開発の技術に使われているんです。

先駆者の技術 〜ミウラ折り〜

高橋 ソガメ折りは、東京大学宇宙航空研究所の三浦先生が宇宙で太陽電池などをカンタンに開くために考えた「ミウラ折り」を元にして考えたものなんです。

──ミウラ折り??

高橋 これも百聞は一見にしかずです。以下の動画を見てください。

──うおー、すごい!

高橋 宇宙で大きな太陽電池を開くときは、もちろん人の手で、ヨイショヨイショみたく開くことはできません。無人の人工衛星なら、複数のモーターやアクチュエーター、エンジンなどを使って開かなくてはいけませんね。

──それだけで凄い重さやサイズになりそうです…。

高橋 でも、ミウラ折りを使うことで、複雑な配置のアクチュエーターやモーターを使わなくても、1つの方向にこうやってパカっと引っ張るだけで展開できるんです。

──あっ、これ見たことあります。私、電波天文が専門なんですが、電波天文衛星の「はるか」のアンテナに使われてますよね!

高橋 そうなんです、ほかにも衛星の太陽電池開閉のしくみ等にも使われています。必要な機械の重さが軽くなる上に、宇宙線などで機械に誤作動が起きやすい宇宙の環境ではシンプルがベストですからね!

 開くときのアクションがすごくシンプルなミウラ折りは、宇宙で構造物をつくるのに適しているんです。

地球での実装、そして宇宙での活躍を目指す

高橋 そして平面な2次元構造を展開するミウラ折りから、3次元構造をつくれるようにしたのが、このソガメ折りなんです!

──シンプルでトラブルが起きにくい、それをさらに逆手に取って、組み立てる必要のない、宇宙で気密をとるための構造にしたんですね!

高橋 そうなんです。OUTSENSEでは、このソガメ折りをベースにした構造体を使って、宇宙で手軽に住める空間を目指しています! まずこの方法を使って、2020年代中旬に月面で無人の構造物を試験的に建てることを目指しています!

宇宙に展開されている建物のイメージ。

──すごいですね! あっ、よかったら私をアウトセンスさんの月面基地に滞在する地球人第一号にしてもらってもいいですか?

高橋 木村さん大きいから折り畳んで持っていくことになりますよ? ミウラ折りとソガメ折り、どっちがいいですか?^^

──すみません!勘弁してください……。

実験・工作編では、一緒にミウラ折り・ソガメ折りをやってみるよ! お楽しみに。

【7/11(日)開催】「生き物の設計図!自分のDNAを取り出そう」ワークショップ参加者大募集

 「地球を救う技術に挑む!研救者
けんきゅうしゃ
列伝
」を好評連載中の小中学生のための研究所「NEST LAB
ネスト ラボ
」と子供の科学が、2021年7月11日(日)にコラボワークショップを開催します! お家にいながら体験できるオンライン開催。また使用するキットを事前にご自宅にお届けします。

生き物の設計図!自分のDNAを取り出そう

 世界にはたくさん生き物が住んでいます。色や形、動き方など、それぞれの特徴はさまざま。この特徴はとうやって生まれているのだろう?

 今回のワークショップでは、自分自身のDNAを取り出して、生き物の秘密を解き明かします

 「NEST LAB」ライフサイエンス専攻は、生物をさまざまな切り口で観察・実験し、生命の不思議を学んでいく講座です。今回はその中の一コマを体験してもらいます。

NEST LAB 著者の記事一覧

「NEST LAB(ネストラボ)」は世界の課題を科学技術を用いて解決していこうと活動をしている株式会社リバネスがつくり出した「小中学生のための研究所」。ものづくりとライスサイエンスをテーマとしたオンライン教室を毎月2回開催しており、2021年度も6月より開講します。リバネスの本物の研究者である講師が、オンラインでレクチャーします。詳しくはホームページをご覧ください。 NEST LAB公式ホームページ

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子供の科学 2025年 1月号

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