【サイエンス“手に職”図鑑】獣医師/家畜の健康を守り、酪農家の経営を支える仕事

【家畜を元気にする縁の下の力持ち度 ★★★

北海道農業共済組合オホーツク統括センター北見家畜診療所の産業動物獣医師・狩集努
かりあつまりつとむ
さんに聞きました。

キャリアプラン

高校卒業
獣医学部(あるいは獣医学科)がある大学を卒業し、獣医師国家試験に合格する
獣医師として活躍

必要な資格

獣医師免許(国家資格)
獣医師国家試験は大学を卒業すると受験資格が得られる
(獣医学部(あるいは獣医学科):国公立が11校、私立が6校)

仕事データ

勤務時間 1日平均8時間~
休日 週休2日(4週8休)
働ける年齢 65歳くらいまで

現場のお話を聞いてみよう!

ウシなどの家畜の健康を守る

 動物の診療にあたる獣医師には、ウシやウマ、ブタなどの家畜の獣医さんと、イヌやネコといったペットの獣医さんがいます。どちらも同じ獣医師の免許が必要ですが、扱う動物と仕事の内容は違います。家畜の獣医さんは、正式には産業動物獣医師と呼ばれます。

 家畜の獣医さんの仕事はおもに3つ。ここではウシの例を紹介します。1つめはウシの病気やケガを治すことです。北海道など酪農が盛んな地域ではウシの数がとても多いので、忙しい毎日が続きます。大きな病気やケガをしたときには、たくさんのスタッフとチームを組んで治療や手術をします。チームでの仕事はやりがいを感じます。

 2つめは病気の予防です。治療も大切ですが、病気にかからないようにすることも重要。ワクチン接種や牛が快適に過ごせるような環境づくりを提案し、酪農家さんといっしょに考えたりしています。

 3つめは元気に見えるウシでも隠れた病気を持っている可能性があるため、それをいち早く発見することです。人間も毎日バランスのよい食事をしないと体調を崩してしまいます。ウシも同じで、栄養バランスのよいエサを食べないと病気にかかってしまうことも。そこで、牛乳の成分と血液を分析して不足している栄養を調べ、酪農家さんへエサのアドバイスをします。エサが改善されると健康が保たれ、ウシから出る牛乳の量も増えてきます。このようにして酪農家さんを影から支えることも大事な仕事です。

コミュニケーションをとって、いつも治療にあたる

 獣医師として働くには、動物が好きというだけでなく、人とのコミュニケーションがとても大切です。例えば、小児科の医師は子どもの状態を知るために保護者の話をよく聞きます。それと同じように、獣医師も動物の状態を酪農家さんから聞き出します。治療に必要な情報を会話から得ていくのです。家畜の病気の多くの原因はエサの中身や与え方にあります。このときに「エサが悪い」といわれたら、酪農家さんも気持ちがすっきりしません。相手の気持ちになって、病気の原因をいっしょに改善していくことが大切なのです。

 コミュニケーション力を高めるのにオススメなのが、自分の得意なものを深めたり、大好きなことをみつけたりすること。そうすることで、そこから会話がふくらみ弾みます。どんなことでもよいので自分の好きなことをとことんやってみましょう。 また同じ年齢の友だちだけでなく、年上の人や、ときには年下の子の話をよく聞くようにしてみましょう。

こうやって稼いでいます!

・動物病院、家畜保健衛生所、製薬会社、ペットフードを作る企業などで働く
・定年後も長く勤めることができる
・家畜保健衛生所や屠畜場の食肉検査などに再就職することができる
・その他、大学の教員、JICAの国際協力隊として海外で働くこともできる

年収

400〜1000万円以上

(夜勤当番などの時間外手当によって増減がある)

★お仕事メモ★
産業動物獣医師の仕事では、治療や予防だけでなく、ウシなどの出産に立ち会うことも。難産で大変な思いをすることもありますが、親子とも元気に分娩させられれば、苦労も報われます。

(文/保谷彰彦 イラスト/浅野知子)

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