【JWST短期連載①】ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡のカラー画像が公開! 10年にわたる観測がスタート

2021年12月25日の打ち上げから半年以上かけて調整などが進められてきた、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)。本格的に稼働を開始し、2022年7月12日、待ちに待ったカラー画像が公開されました。この短期連載ではジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡について、さまざまな点から詳しく解説していきます。初回はなんといっても、その撮影能力の素晴らしさを実感していただきましょう。

これがジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の最新画像だ!

 2022年7月12日、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した天体のカラー画像が3枚公開されました。1990年4月に打ち上げられたハッブル宇宙望遠鏡が初めて撮影した画像も衝撃的でしたが、その後継機で、主鏡の面積が6倍になったジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影した画像は期待を上回る素晴らしいものでした。

7600光年の距離にあるNGC3324。JWSTの近赤外線カメラ(NIRCam)と中間赤外線観測装置(MIRI)で撮影された。(©NASA, ESA, CSA, and STScI)

 この山や谷のように見える風景は、散開星団NGC3324という星が形成されている領域の端に位置します。最も高い”峰”は約7光年の距離にわたって広がっていますが、実際には若い星からの強烈な紫外線が星雲を削り取ることでこのような光景になっています。”山”や”谷”から白い水蒸気のようなものが立ち上っているように見えるのは、星雲から流れ出る高温の電離ガスや高温の塵。これが幻想的な雰囲気を一段と引き立てています。

 下の画像にある「ステファンの五つ子」は、約2億9000万光年の距離で近接している4つの銀河(NGC7317、NGC7318A、NGC7318B、NGC7319)と、かなり手前の4000万光年の距離にある1つの銀河(NGC7320、画像では左に位置)で構成されています。4つの近接した銀河を観察することで、相互作用する銀河が互いに星形成を促す状況や銀河内のガスがどのように撹乱されているかがわかります。

これまでJWSTが撮影した中で最も広い、月の直径の約5分の1に相当する領域をカバーした画像。約1000の画像ファイルから構成されている。(©NASA, ESA, CSA, and STScI)
蚕の繭のような惑星状星雲NGC3132の画像。約2500光年の距離にある。(©NASA, ESA, CSA, and STScI)

 惑星状星雲NGC3132もジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の異なる観測機器で観察すると違って見えてきます。左の近赤外線カメラ(NIRCam)の画像では、中心の星のほか星雲の光の層が細部にわたって見分けられます。右の中間赤外線カメラ(MIRI)の画像では中心に2つの星があるのがわかります。暗い方の白色矮星はかつては赤色巨星で、これによって星雲が形成されました。明るい方の星は進化の初期段階ですが、これもいずれは自身の惑星状星雲を形成すると考えられています。

 これらの画像が公開される直前の7月11日にアメリカのバイデン大統領が一足先にお披露目したのが、銀河団SMACS0723と、その前後にあるさまざまな銀河の画像です。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の近赤外線カメラ(NIRCam)によって撮影され、異なる波長の画像を12時間半かけて合成したものです。

銀河団SMACS0723など何千もの銀河が浮かび上がっている。(©NASA, ESA, CSA, and STScI)

 地球から150万Kmと遠く離れたラグランジュ点の軌道から観測するため、万が一に故障してしまっても修理して元に戻すのがほぼ不可能なジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡。搭載燃料の残量から稼働が可能とみられる10年間、まずはトラブルに見舞われることがないよう祈りたいですし、数々の成果を挙げられるよう期待したいところです。

 次回からは、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が打ち上げられるまでの長い道のりや、ラグランジュ点とは何か、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡に期待される役割などを解説していきます。お楽しみに!

川巻獏 著者の記事一覧

サイエンスライター。1960年、神奈川県出身。東京工業大学理学部卒。新聞社科学記者を経て、川巻獏のペンネームで執筆活動をしている。自然科学からテクノロジーまで幅広い分野をカバー。宇宙・天文学分野を中心に活動している。

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