みんな、フクロモモンガって知っているかな? くりくりとした瞳に、ふさふさのしっぽがチャーミングな小動物で、最近では、ペットとしても注目を集めているよ。ここでは、フクロモモンガの生態のふしぎから、ペットとしての魅力、飼育のコツまでわかりやすく紹介するよ♪
滑空が得意技! フクロモモンガってどんな生き物?
袋の中で育つ有袋類
フクロモモンガ(Petaurus breviceps)は、有袋類の仲間です。体重はオスが100~160g、メスが80~130gと、手のひらに乗るようなサイズの小動物です。尻尾が長く、リスのようにも見えますが、実はカンガルーやコアラなどと同じ仲間です。

有袋類は、メスがお腹に袋(「
木から木へと滑空して移動!
野生のフクロモモンガはオーストラリアの北東部やニューギニアの熱帯・亜熱帯の森林で、5~10匹ほどの小さな群れをつくって暮らしています。群れの仲間同士は強い絆で結ばれていて、鳴き声やにおいによるコミュニケーションをとっています。
夜行性なので夜になると活発になります。生活する場所はおもに樹上で、木から木へと移動するときは、飛膜を広げて、風に乗って滑空します。その距離はときには50mにも及びます。
このように、まるでグライダーのように滑空することや、樹液などの甘いものを食べることから、フクロモモンガの英名は「sugar glider」といいます。

同じ「モモンガ」でも違う種類!?
「モモンガ」といえば、日本には、ニホンモモンガやエゾモモンガが生息しています。彼らも樹上で暮らし、飛膜を持ち、滑空が得意ですが、分類はげっ歯類の仲間です。同じように「モモンガ」という名前がついていますが、フクロモモンガとはまったく種類が異なります。
このように、異なる種類の動物が、別々の場所で進化したのに外見が似てくることを「
フクロモモンガはこんなところがチャーミング!
体のしくみをみてみよう

フクロモモンガといえばくりくりとした大きな目が魅力のひとつです。眼球の奥、網膜の裏にあるタペタム(「
滑空するための飛膜は体の側面にあって、手首から足首までつながっています。尻尾の付け根から足首の間にも小さな飛膜がついています。手足を伸ばして飛膜を広げて滑空します。
尻尾は長く、
においを使って自己主張をしたり仲間とコミュニケーションをとったりするフクロモモンガには、おでこや胸などに臭腺(におい物質を分泌する器官)があります。特にオスでは、成長すると臭腺が目立つようになります。これらの臭腺を使って、なわばりの境界線ににおいつけをしてなわばりを主張したり、群れの仲間にもにおいをつけて、同じにおいを共有したりします。飼育すると、飼い主ににおいつけをすることもあります。

おでこの脱毛部もにおいつけをするための臭腺だ。
高いコミュニケーション能力
フクロモモンガは群れで暮らす動物なので社会性があり、高いコミュニケーション能力を持っています。そのため飼い主によく慣れ、鳴き声でアピールしてくる、くっついてきて離れないなど、嬉しいコミュニケーションがとれる個体が多いのもフクロモモンガの魅力のひとつになっています(ただし個体差はあり、すぐに慣れないこともあるので、そういう場合はじっくり時間をかけて接してあげてください)。
フクロモモンガの鳴き声にはいろいろなものがあります。「ジコジコジコ…」、「ギコギコギコ…」と鳴くのは、警戒しているときや威嚇してくるときの鳴き声です。飼い始めたばかりでまだ人のことを怖いと感じているときにはよく聞く鳴き声かもしれません。
群れで暮らすフクロモモンガには、仲間に呼びかけたり自分の居場所を知らせたりする鳴き声もあります。「アンアン」、「ワンワン」と聞こえ、まるで子犬のようです。ほかにも、不満があったりイライラしていたりするときには「シューシュー」、嬉しいときなどには「プププ…」、満足した気持ちのときは「ククク」など、フクロモモンガはいろいろな感情を鳴き声によって伝えてきます。
さまざまなカラーバリエーション
多くのカラーバリエーション(毛色)があることも、フクロモモンガの人気の理由のひとつです。一般的な毛色は「ノーマル」といい、野生のフクロモモンガと同じ色です。青みがかったグレーで、目の間から尾の付け根にかけて濃い色の線があります。

人気がある毛色のひとつが「リューシスティック」です。白変種ともいい、色素の量が少ないために全身が白い毛色です。同じような白い毛色に「アルビノ」がありますが、アルビノは色素がないため目は赤く、リューシスティックには色素はあるので目の色は黒です。ほかにも、毛色はクリーム色で目が濃い赤のクリミノ、明るいシルバーの毛色に明るいグレーの縞が入るプラチナなどさまざまな種類があるほか、柄(模様)のバリエーションとして、毛色に関わらず白いぶち模様が入るモザイク、尾の先端が白いホワイトチップ、尾に濃い色のリングがあるリングテールなどがあります。

もしもペットとして迎えるとしたら?
飼う前に考えておきたいこと
日本国内で販売されているフクロモモンガは、すべて飼育下で繁殖されたもので、野生個体は流通していません。フクロモモンガの飼育を規制する法律はないので、問題なく飼うことができます。ただし、飼うにあたってはしっかりと考えておきたい点がいくつかあります。
フクロモモンガは外国産の動物(外来生物)で、日本の野生下には存在しない動物です。捨てたり逃がしたり、脱走させてしまったりして、生態系を乱すことのないようにしなければなりません。
また、小さな体の動物ですが、寿命は10年以上あり、長いと15年生きてくれることもある動物です。飼い始めたら、毎日の世話を欠かさずして、最後まで責任をもって飼育しなければなりません。フクロモモンガの場合、偏食な個体もいて食事を与えるのに苦労する、独特のにおいがあったり、トイレを覚えない個体が多かったりするので、まめに掃除をしないとにおいが気になることがある、夜行性なので夜になると騒がしいといったこともあります。
飼い主に慣れてくれる個体が多いのは嬉しいことですが、一度飼い主を仲間と認識すると、かまってもらえないことがストレスになってしまうので、ずっと仲良くしてあげる必要もあります。フクロモモンガを診てくれる動物病院が通院できる範囲にあるかどうかも、あらかじめ調べておきましょう。
フクロモモンガを迎えたらどんな生活になるのか、フクロモモンガの飼い方を簡単に紹介していくので、具体的に想像してみましょう。
フクロモモンガの飼育用品
フクロモモンガの住まいとなるのはケージです。広さと高さが十分にあるものが必要です。金属製の小動物用ケージのほか、アクリル製の飼育ケースも人気があります。
ケージの中にセットする基本的な飼育用品は、食器・水容器、ケージ内に高低差をつけて運動ができるようにするためのステージや止まり木、寝床や隠れ家となる巣箱やポーチ、ケージの底に敷く床材などです。回し車を置いたり、ケージの中に吊るす小動物用おもちゃなどを取り付けたりすることもできます。

おもちゃはケージ内のスペースの余裕を考えて設置する。
ほかには、移動させるときや体重測定などに使うキャリーケース(プラケース)、健康管理のための体重計、適切な環境のための温湿度計なども用意しましょう。
季節に応じた用品や対策も必要です。フクロモモンガは寒さに弱いので、冬場にはペット用ヒーターなどを利用して暖かな環境づくりをします。暑さには比較的強い動物ですが、最近の日本の夏はとても暑くなるので、エアコンを使って室内を適切な環境(温度24~27℃、湿度50%前後)にしておくことが欠かせません。
フクロモモンガの食事
野生のフクロモモンガは、ユーカリやアカシアの花や花蜜などの植物性の食べ物と、昆虫などの動物性の食べ物を食べている、雑食性の動物です。家庭では「ひかりモモン」(キョーリン)などのフクロモモンガ専用フードを主食に、副食として少量の動物質(ミールワームやコオロギ、ゆでたささみなど)や野菜・果物などを与えます。糖質の多い食べ物を与えすぎると肥満になるので注意しましょう。

(画像/キョーリン)
フクロモモンガの世話
フクロモモンガは夜行性なので、昼間は静かに休ませて、夕方以降に世話をするのが基本です。排泄物を取り除き、汚れた部分を掃除し、食事を与え、飲み水を交換します。健康状態が良好かどうかの健康チェックも行います。朝になったら、食べ残した食事をケージから出して捨てておきます。ケージや飼育用品は、月に一度くらいはよく洗います。飼育日記をつけ、毎日の世話の内容や健康状態などを記録しておくと、動物病院で診察を受けるときなどに役立ちます。
フクロモモンガとの楽しい生活
フクロモモンガを慣らすには、好物を手から与えたり、専用のポーチにフクロモモンガを入れて、飼い主が身につけ、飼い主のにおいを覚えさせたりする方法があります。フクロモモンガが飼い主に十分に慣れれば、ケージから出して室内でも遊ばせることもできます。そのときは、部屋の安全を十分に点検しておくようにしましょう。
実際に「フクロモモンガを迎えたい!」と思ったときは、飼育書などをしっかりと読み、ペットショップでは法律で定められている「販売時説明」をよく聞いたうえで購入するようにしましょう。大変なことも多いですが、責任ある飼い主として大切に飼育すれば、かけがえのない楽しい時間を一緒に過ごすことができるでしょう。
おすすめの本
フクロモモンガを飼いたくなったら、まず飼育書を読むと参考になります。下記の本では、生態やコミュニケーションについても詳しく解説しています。
(文/大野瑞絵、写真/井川俊彦、協力/キョーリン)