利き手は何で決まるのですか? もしDNAで決まるならゲノム編集で変えることはできますか?

遺伝的な要因と環境的な要因の両方で決まります

人の利き手の人口比は、右利きが90%、左利きが10%です。利き手の比率の差が生まれる要因の1つは、親から子供への遺伝です。右利き同士

の親から生まれた子供の左利きの比率は9.5%ですが、右利きと左利きの親の組み合わせの場合は19.5%、左利き同士の親の場合は26.1%にもなります(図)。


図 両親の利き手の組み合わせと子供の左利きの割合。

利き手を決める遺伝子を見つけることを目的として、高精度のゲノム解析が世界中の研究機関で行われています。しかし、現在までに、利き手を決めるのに決定的な役割を持つ単一遺伝子や突然変異は見つかっていません。

一方で、左利きの人によく見られる遺伝子グループが複数あることがわかってきました。したがって、利き手の決定には複数の遺伝子が少しずつ関わり、その組み合わせが影響すると考えられます。もし完全に遺伝で利き手が決まるのであれば、同じ遺伝子セットを持つ一卵性双生児の利き手は一致するはずですが、実際には2割ほど違います。つまり、利き手の決定メカニズムは遺伝子情報を調べて、右利きか左利きかの遺伝子を見つけたらそれで円満解決、というわけにはいかないようです。

利き手の決定には、遺伝子以外の影響も考えなければなりません。左利きになる原因として、妊娠時や分娩時に加わるストレスや母親の高年齢出産など、発達中の胎児における環境要因が影響するという意見があります。しかし、このような不確実な要素だけでは利き手の比率を説明できません。ただ、本来左利きの人が幼いころに右手の使用を強いられた結果として、利き手が右手になった、という話はよく耳にします。また、利き手は経験や学習に応じてどんどん器用になる、という研究報告もあります。したがって、利き手は環境からも影響を受けると考えた方が適切です。

遺伝子編集技術を使えば、まるでパソコンで文章を編集するようにゲノムを簡単に書き換えられる、とさえいわれています。とはいえ、現状の技術では、ごく少数の遺伝子しか同時に改変することはできません。利き手を遺伝子編集技術で自在に変更することは、現実的にはかなり難しいでしょう。
(富山大学医学部解剖学講座助教 竹内勇一)

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