頭の回転が良いってよくいいますが、脳の中で何が起きているのですか?

覚えている情報を結びつけたり、足りない情報を類推したりしている

「頭の回転が良い」というのは、物事や状況を理解して素早く正確に対応できる状態をいいます。例えば、「授業が始まる前に隣の席の子が教科書とノートは机の上に出しているのに、困った顔をしてカバンの中を探している」のを見れば、たぶん「筆箱を忘れたんだな」と思うよね。これが『状況の理解』です。そこで、自分は鉛筆をたくさん持っているから1本貸してあげようと「これ使っていいよ」と渡す、これが『対応』です。「授業」、「教科書、ノート」から「鉛筆」を結びつけて、さらに「困った顔」、「探している」から「持っていない」という状況を想像し、「困っているので助けてあげよう」と思うのです。頼まれる前にこんなことが瞬時にできると「頭の回転が良い」といわれるんですね。

頭の回転とは、実際に回っているわけでなく、こんなイメージで
さまざまな記憶のひも付けが行われている。

脳は知識としての情報、「授業」・「教科書、ノート」・「鉛筆」などをたくさん持っています。でも脳のすごいところは、これらの情報の関係を結びつけて覚えていること(記憶のひも付け)なんです。しかも、友達が「困っている」のを類推して「嫌だろうな」と思う自分の体験に基づいた感情の作用によって「助けてあげよう」と判断しているのです。

頭の回転を良くするポイントは、知識としての情報の量に加えて、それらの関係をうまく結びつけること、足りない情報を類推すること、豊かな感情の作用などの脳の優れた機能をうまく使えるようにすることです。

じゃあどうすればいいか。当然知識は必要ですが、その上に新しい体験をして楽しんだり悲しんだり苦しんだり悩んだりすること。脳は感情が動いた情報の方がよく覚えられるし、情報同士の結びつきを強くします。次に、物事の因果関係をつかむこと、想像することが必要です。それには、小説を読んだり日記を書いたりするのが有効です。ちなみに、あまり得意でない教科などであっても、「へえ~、こんなこと知らなかった、おもしろい」と思いながら勉強すると記憶に残りやすくなって、頭の回転がより良くなるかもしれませんね。

(名古屋大学環境医学研究所 脳機能分野教授 澤田 誠)

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