インフルエンザのワクチンってどうやってつくっているの?

ウイルスをニワトリの卵で殖やし、有効成分を取り出す

インフルエンザワクチンをつくるためには、ワクチンの原材料であるインフルエンザウイルスが必要になります。インフルエンザウイルスの性質は毎年のように変化するため、その年の冬に流行が予測されるウイルスを使って、ワクチンをつくらなければなりません。日本では国立感染症研究所で検討され、ワクチン用のインフルエンザウイルスが選定されます。そして毎年、春ごろから半年ほどをかけ、ワクチンの製造を行います。

まずは使用するインフルエンザウイルスを殖やすために、ワクチン製造専用のニワトリの卵を大量に準備します。そして、準備した卵にウイルスを注入し、ウイルスが殖えるのに適した温かい部屋で卵を温めます(図1)。卵の中のウイルスが充分に殖えたところで、ウイルスが含まれる液だけを取り出し、その後ウイルス以外の余分な卵成分などを取り除きます(精製)。さらに、ウイルスをエーテル処理などによってバラバラにして毒性をなくし、その中からワクチンの有効成分であるトゲのような表面のタンパク質(HA)を集めます(図2)。これがワクチンの原液となります。現在のワクチンは、3種類のインフルエンザウイルスから得られたHAを混ぜてつくっているため、上記のような工程で3種類のワクチン原液をつくり、それらと安定剤などを大きなタンクで混ぜ合わせて、最終的なワクチン液が完成します。

完成したワクチン液は小さな容器に一定量ずつ入れられ、しっかりと密閉されます。そして、機械と人の目で、出来上がった製品に傷がないか、ワクチン液の中に異物が紛れ込んでいないかなどを入念にチェックします。工場で厳しい検査を受けた後にも、国家検定という国の検査を受け、ワクチンとしてふさわしい品質と認められたものだけが、箱に詰められ、予防接種を行っている病院などに運ばれます。

このようにして、毎年インフルエンザワクチンはつくられ、みなさんに接種されています。(一般財団法人 阪大微生物病研究会)


図1 ニワトリの卵の中にウイルスを注入し、温かい部屋で殖やしていく。


図2 精製していらないものを取り除いたら、ウイルスをバラバラにして有効成分であるHAを取り出す。

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