小学3年生でロボット開発に目覚めて以来、科学の探究に熱意を注いできた遠藤康生さん(えんどうこうき・小学6年生/取材時)。
遠藤さんは小中学生のための研究スクールNEST LAB.で研究経験を積み重ねました。その集大成として発表した「フーセンガム自動仕分けマシン」の開発実績が、なんとイギリスの名門寄宿学校である立教英国学院への編入合格を後押しした!
“好きなことに夢中になると、受験にも役立つ!” そんな遠藤さんのスゴイ挑戦をのぞいてみよう!
夢中を究める力:ロボット工学への関心
遠藤さんがNEST LAB.で研究を始めたのは、小学3年生。もともとレゴや段ボールで物を作るのが大好きで、大学教授であるおじいさんの影響もあり、小さいころから、さまざまなサイエンス系のイベントに参加していたそうです。遠藤さんは熱中すると、のめりこむ性格で、4年生のときに熱中したルービックキューブでは6面を揃えるのに、わずか28.09秒で達成するほどまで上達したそうです。
NEST LAB.では、まず「ロボットAIテクノロジー専攻」を選び、初めてのプログラミングに挑戦。リモコンでゴミを回収する「モノ運び機『ロボちゃん』」を完成させました。「機能もデザインもバッチリで、すごく嬉しかったのを覚えています」と遠藤さん。オンライン教室だったけれど、わからないことは先生がSlack(スラック=SNSツール)で丁寧にアドバイスしてくれたので、完成まで頑張れたそうです。自分の興味を突き詰めることのおもしろさを、このときに強く感じたそうです。

失敗から学んだ「研究者の思考」
小学4年生になると、遠藤さんは好奇心からNESTLAB.の「サステナブルサイエンス専攻」にも挑戦。ここでは生き物や自然をテーマに研究を進めました。特におもしろかったのが、ダンゴムシが進むときに右に曲がった後は左に曲がる「交替性転向反応」を、自分でつくった迷路で確かめる実験。予想通りではない結果が出たときに、「ダンゴムシにも学習の可能性があるのでは?」と、新しい疑問に気づいたそう。
また、酵母の発酵実験では、砂糖を与えたシリンジから酵母が噴き出して部屋が大惨事になる失敗も経験したそうです。しかし、遠藤さんの保護者の方によれば、「こうした経験を通じて、仮説を立てて検証し、考察から新たなテーマを見つける“研究のサイクル”が自然と身についたのでは」とのこと。この経験のおかげで、遠藤さんは改めてプログラミングが好きだと再確認できたそうです。

サイエンスキャッスルでの研究発表
生き物の研究も楽しかったけれど、遠藤さんはやっぱりプログラミングが好きなので、小学5年生でロボットAIテクノロジー専攻マスターコースに戻りました。そして、その研究の集大成として、2024年12月7日、小学校5年生のときに中高生の学会である「サイエンスキャッスル」の東京・関東大会で、「フーセンガムを自動仕分けしてくれるマシンを作りたい!!」というテーマを発表。
遠藤さんが製作したマシンは、WEBカメラと画像認識AI(Teachable Machine)を使って、ガム(抽選球を使用)の色を識別させ、IoTマイコンボード「obniz」とサーボモーターを連携させて、最大6色に分別する装置。これは、工場のラインなどで実際に導入されている最先端のAI技術を、「ちょっと面倒だな」と思った身近な課題に応用した、本格的な研究です。遠藤さんが特に力を入れたのは、AIに正確に色を識別させるための工夫。AIの画像認識能力を最大限に引き出すために、機体にLEDライトを組み込み、ガムの色がカメラに鮮明に映るよう光の調整をしました。また、ボールが一度に2〜3個まとめて落ちてしまわないように、レールの傾きを何度も調整して、一つずつ確実に分別口に落ちるように設計を修正したそうです。
プログラミングだけでなく、機体の設計でも細かいエンジニアリングの工夫を重ねることで、遠藤さんは「6色の正確な分別」という目標達成を目指し、ものづくりの楽しさを深く知ることができたそうです。

研究が受験を後押し!イギリスでの新たな挑戦
遠藤さんがイギリスの立教英国学院への編入学を決めたのは、お母さんがロンドンに赴任するのがきっかけでした。この学校は科学技術教育(STEM教育)に力を入れていて、遠藤さんがNEST LAB.で究めてきたロボット工学の取り組みと、学校の教育内容がすごく合っていたのも編入学の大きな決め手になったそうです。特に、学校にはロボットクラブが設立されていて、3Dプリンターなどの機材も整っていると聞いて、遠藤さんの興味は一層高まったそう。編入試験の際、小学部・中学部は作文(「がんばってきたこと」などを書く欄がある)や面接があり、何年もかけて夢中になった研究実績や、東京まで行って発表をやり遂げた経験などが、面接で「この学校でロボットをやりたい」という強い意志を伝えるときに役立ったそう。これが編入学成功の大きな後押しとなったようです。現在、遠藤さんは同校でロボットクラブに所属し、小学生なのに中・高校生が使うような機材を使った活動にもチャレンジしているそうです。
将来はIT系に進み、プログラミングなどを活用し、実用的なロボットを開発するのが夢とのこと。これからも夢に向かって頑張ってください!

遠藤さんの保護者からのコメント
小学5年生で編入学試験に挑む際、この年代で誰もが認める「誇れる実績」を持っていることは、受験において非常に重要でした。NEST LAB.で3年間にわたり熱中して取り組み、東京でのポスター発表までやり遂げた研究経験は、他の受験生にはない、「何年もかけてやってきた誇れる事実」となりました。
立教英国学院がSTEM教育に注力し、ロボットクラブを設立していたため、本人の興味と学校の教育内容が合致し、進学を大きく後押ししたと考えています。作文や面接で自分の情熱を自分の言葉で語れる経験が、受験において最強の武器となったと実感しています。