【2011年ノーベル化学賞】結晶とも非結晶とも違う「準結晶」を発見

2011年化学賞 ダニエル・シェヒトマン博士(イスラエル・イスラエル工科大学) ※所属は受賞当時

 2011年の化学賞は、イスラエル工科大学のダニエル・シェヒトマン博士に贈られました。かつて固体は、原子が規則正しく並んだ結晶か、原子の並びが乱雑な非結晶のいずれかになると考えられてきました。しかし、シェヒトマン博士によって、結晶でも、非結晶でもない「準結晶」が発見され、固体の状態についてのそれまでの常識が覆されました。

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 私たちの身の回りの固体は、原子が規則正しく並んだ「結晶(クリスタル)」と、原子の並びが乱雑な「非結晶」の2種類に分けられてきました。例えば、ナトリウムと塩素が規則正しく並ぶ食塩(塩化ナトリウム)は、結晶の代表格といえます。ダイヤモンドも炭素が規則正しく並んでいる結晶です。一方、非結晶の代表格といえるガラスは、主成分の二酸化ケイ素がバラバラに結合しています。

 このように固体は必ず結晶、非結晶のいずれかの状態になると考えられてきたのですが、シェヒトマン博士が、液体状態にあったアルミニウムとマンガンを急激に冷やして固体化させたものの結晶の形を調べたところ、通常はあらわれることのない五角形の結晶構造を発見。バラバラというほど原子の並びは乱雑ではないものの、結晶というほど規則正しくないことから、結晶でも非結晶でもない「準結晶」の固体を見つけたと発表しました。

 しかし、準結晶は、この発表がなされた1984年当時の固体の結晶に関する常識からは大きくはずれたものでした。すぐに多くの研究者から「あり得ない」との批判が寄せられましたが、その後、他の研究者からさまざまな物質で「準結晶であることを確認した」と報告されるようになり、シェヒトマン博士の学説は徐々に認められていきました。

 2009年には、ロシアで採取された自然の鉱物からも準結晶状態のものが見つかり、今では結晶、非結晶に次ぐ、「第3の固体」と認識されるようになりました。 

 準結晶は耐久性に優れていることから、すでにさまざまな分野での応用が進んでいます。身近なところでは、カミソリの刃、フライパン、手術用の針などには準結晶の金属が用いられているものがあります。

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サイエンスライター。1968年、大阪府生まれ。東京水産大学(現東京海洋大学)卒業後、ライターとなり、最新の研究成果を取材し、科学雑誌を中心に記事を発表している。著書に『がん治療の正しい知識』、『寄生虫の奇妙な世界』、『イヌとネコの体の不思議』、『群れるいきもの』などがある。

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