【ノーベル物理学賞】湯川秀樹先生の研究-中間子理論が評価されて、日本で初めてノーベル賞を受賞

1949年物理学賞 湯川秀樹先生(コロンビア大学教授)※肩書は受賞当時

 この宇宙に存在する物質は、すべて原子で形づくられています。その原子は中心に陽子と中性子が集まってできた原子核があり、その周囲を電子が回っています。

 陽子は電気的にプラスで、中性子は中性であるため、プラスの陽子どうしは反発しあうはずなのですが、現実には原子核はバラバラになることはありません。どうして原子核がまとまっていられるかの理由は誰も説明できないでいました。

 この難問の解明に挑んだ湯川秀樹博士は、原子核には陽子と中性子のほかに別の素粒子があって、陽子と中性子を結び付けているのではないかと考えました。そして陽子と中性子がキャッチボールをするように素粒子が行ったり来たりしているという仮説に至り、計算してみると、この素粒子は電子の200倍ほどの重さ(質量)を持つことがわかりました。

 この素粒子の質量は電子と陽子の間ぐらいであることから、湯川博士は「中間子」と名付けて、中間子理論として発表しました。

 従来にない大胆な発想の理論だったため、当初は受け入れられませんでしたが、その後、実際に電子の200倍ほどの質量を持つ素粒子が発見され、湯川博士の中間子理論は正しかったことが証明されました。

 この功績を称えてノーベル財団は、1949年、湯川博士にノーベル物理学賞を贈呈。太平洋戦争で日本が敗戦してから4年目だったため、湯川博士の受賞は国民を大いに勇気づけました。

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サイエンスライター。1968年、大阪府生まれ。東京水産大学(現東京海洋大学)卒業後、ライターとなり、最新の研究成果を取材し、科学雑誌を中心に記事を発表している。著書に『がん治療の正しい知識』、『寄生虫の奇妙な世界』、『イヌとネコの体の不思議』、『群れるいきもの』などがある。

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