《さかなクンに聞く》海の生きもののすギョい生態【後編】

 2021年6月11日(金)に公開される『驚き!海の生きもの超伝説 劇場版ダーウィンが来た!』でナレーションを担当しているさかなクンに、映画に登場する海の生きものたちについて紹介してもらうインタビュー後編をお届け!

前編はこちら

 後編では、映画に登場する海の生きものをより深く理解するためのヒントを語ってくれたぞ。このインタビューを読んでから映画館に行けば、映画を十二分に堪能できること間違いなし!

―― この映画でナレーションを依頼されたときはどのように感じましたか?

 「ダーウィンが来た!」は大好きな番組ですので、その劇場版でナレーターを務めさせていただけるなんて最高に光栄な事でギョざいます。ギョギョ!! うれしい~♫ ヤッタァ~!!って飛びはねて大喜びです。

 はりきって海の生きものさんたちのことをギョ紹介させていただきましたが、84分の上映時間の中に数多くの海の生きものさんたちの貴重な映像がギョー縮されていますから、生きものさんそれぞれについて詳しいギョ説明はギョざいません。映像から、いろいろなことを思い、どんどん海といきものを好きになりたいですね!

―― 「子供の科学」の読者が見ると、「なんでだろう?」と疑問に思うシーンがありそうですね。

 はい、疑問がいっぱい出てくると思います。見終わった後に図鑑やインターネットで調べてみましょう

 例えば、アリューシャン列島の周辺海域では甲殻類
こうかくるい
オキアミちゃんの仲間が大発生することがあり、これをエサとするザトウクジラさんや、オキアミちゃんを食べに来たお魚ちゃんを捕食するハシボソミズナギドリさんが集まってくることがギョ紹介されています。

ザトウクジラ(映像提供/NHK)

 映画ではエサを求めて集まっていると解説していますが、一体どのようにしてオキアミちゃんが大発生する時期や海域を察知しているのかまでは触れられていません。

―― 確かに、何か手掛かりがないことには集まってこれませんよね。

 私たちはカレンダーや時計を持っていますから、今が何月何日の何時何分かを知ることができて、人とのお約束の日時に間違いなく出かけられますよね♪ すれ違うことがあっても、携帯電話で連絡を取り合えば出会うことができます。

 でも、海の生きものたちはカレンダーや時計を持っていません。だから、人にはわからない情報をもとに、エサのある場所や産卵場所を察知して集まってくるんです。今回の映画には登場しませんが、二ホンウナギちゃんは日本の沿岸や河川で成長してから、はるか南方のマリアナ海溝まで泳いで行き、そこにある海山
かいざん
に集まって産卵することが知られています。何を手掛かりにマリアナ海溝にまでたどり着けるのか不思議でしかたがなかったのですが、近年のギョ研究で海山周辺ではスコールが多く、海水の塩分濃度が急激に変化しやすいことが明らかになっています。

 海の生きものたちは海水の塩分濃度や潮の満ち引き地磁気
ちじき
など、自然の変化の情報を手掛かりにしているんです。だから、こうした生態系が人間活動によって狂わされたら大変です

―― 環境破壊は、海の生きものの生態系にも影響を与えているのですか?

 はい!大いにあると心配しています。

 海の生きものにとって海水温の変化は深刻です。今後、地球温暖化がより深刻化すれば、多くの生物に影響を与えるようなことがあっても、何ら不思議はありません。実際、映画では温暖化の影響の一例として、サンゴ礁ホッキョクグマさんへの影響がギョ紹介されています。

ホッキョクグマ(映像提供/NHK)

 また、エンドロールでは近年、大きな問題になっている海洋プラスチックについても触れられています。海洋プラスチックに関しては、何か有効な対策を講じられなければ、2050年には海にいるお魚の量よりも多くなるという予測すらあるほどです。私たちの生活にも関わることなので、何ができるかよく考えていく必要があります。本編が終わってもすぐに席を立たずに、エンドロールの最後までじっくり鑑賞しなきゃ!ですね。

―― 素晴らしい映像を見ると、実際に海に出て生きものたちの姿を見たくなりました!

 はい♫ 映画を見るとやっぱり観察しに行きたいと思うのでしょうけど、今は遠い外国まで出かけていくことは難しいですね。でも、映画に登場する海の生きものの多くは、私たちの身近な生きものの仲間なんですよ。

 例えば、カナダ東部に生息するズキンアザラシちゃんはネコ目(食肉目)に分類されていて、イヌちゃんやネコちゃんに近い仲間なんです!

ズキンアザラシ(映像提供/NHK)

 イヌちゃんやネコちゃんとギョ一緒に暮らされている方なら、映画に登場するズキンアザラシちゃんの姿形やしぐさを見ると、ファミリーのイヌちゃん、ネコちゃんと比べてみたら、似ているところ、違っているところを見つけられますね!

―― こうした映画に登場する生きものというと、遠い外国に暮らす縁遠い生きものに思えますが、案外、身近な生物の仲間だったりするんですね。

 食べものの少ない深海では、沈んできたクジラさんの死骸はギョ馳走で、多くの生きものたちが集まります。その生物群集の中にいるオオグソクムシちゃんはワラジムシ目等脚目
とうきゃくもく
)に分類されていて、お庭の石の
かげ
にいるダンゴムシちゃんに近い生きもの
なんですよ。

 それに現在クジラさんは鯨偶蹄目
くじらぐうていもく
に分類されていて、広くまとめられるとウシさんやシカさん、カバさんなどと同じ仲間とされています。その姿形はまったく違うように思えますが、映画に登場するカツオクジラさんが大きな口を開けて大量の小魚ちゃんを食べる様子を見ると、動物園さんで大きなお口を開けているカバさんを思い起こさせます。

 こうした分類についても先に少し調べておくと、映画に登場する海の生きものさんたちをより深く理解できると思います♫

―― 今日はたのしいお話をいただきありがとうございました!

 こちらこそ、ありがとうギョざいます! 子供の科学の読者のみなさまにぴったりの映画ですから、ぜひ映画館でおたのしみでギョざいますね♫

「驚き!海の生きもの超伝説 劇場版ダーウィンが来た!」を見に行こう!

 さかなクンのお話に登場した海の生き物たちの驚きの映像は、ぜひ映画館でおたのしみください!

 登場する海の生きものは、なんと約60種! 特別な時期だけに“大集結”する生きものや、潜水艇でとらえた神秘の深海生物など、珍しい生きものたちの姿は驚きがいっぱい!

 インタビューに登場した生きもの以外でも、猛ダッシュしてヒナに走りを教えるジェンツーペンギンや、貝の割り方を辛抱強く教えるラッコの子育てなど、胸キュン必至のかわいい姿だけでなく、生きるためのすべを伝える親から子への“命のリレー”には、心揺さぶるドラマがたくさんあります。

ラッコ(映像提供/NHK)

■ナレーター:水瀬いのり
■出演・ナレーター:さかなクン
■ヒゲじい:龍田直樹
■監督:田所勇樹
■制作:NHKエンタープライズ
■映像提供:NHK
■製作・配給:ユナイテッド・シネマ
 公式HP:https://umi-darwin.com/  
 公式 twitter:@umi_darwin

2021年6月11日(金)よりユナイテッド・シネマ他全国ロードショー!

取材・文

斉藤勝司 著者の記事一覧

サイエンスライター。1968年、大阪府生まれ。東京水産大学(現東京海洋大学)卒業後、ライターとなり、最新の研究成果を取材し、科学雑誌を中心に記事を発表している。著書に『がん治療の正しい知識』、『寄生虫の奇妙な世界』、『イヌとネコの体の不思議』、『群れるいきもの』などがある。

(さかなクン撮影/青柳敏史)

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