『子供の科学2025年8月号』の「ヘルドクターくられ先生のあやしい科学を疑え!」は読んでくれたかな? 本誌では収まりきらなかった、くられ先生の頭の中の徒然考えているお話を、コカネット限定で配信中! 本誌の連載とあわせて楽しんでね。
イラスト/obak(@oobakk)
世の中は準備が9割
本誌では、予習の大事さ、予習を自分でする方法……なんて話をしました。
こちらでは、予習、準備というものは、世の中で見えない部分で本当にたくさんあるという話をしましょう。
みなさんがライブを観たり、展示会で珍しいものが飾ってあってそれを観に行ったり、ワークショップがあったりと、世の中にはいろいろなイベントがあります。
そうしたイベントって一見すると、たった1日歌を歌うだけなのに、1人何千円もするチケットを何千枚も売ってて、さぞかし楽で儲けてていいなぁ〜と思う人もいるかもしれません。
もちろん、収益が上がることは別に悪いことではないですし、続けるためには収益は大事です。
とはいえ、実際はボロ儲けなのかというと、もちろん、主役以外にも、スタッフというのは何十倍もの人がいます。
例えば、自分は幕張メッセの「ニコニコ超会議」というイベントでブースを持っていました。
ゴールデンウィークの2日間に、1日1時間の演目を3回やるだけ。
これだけみると、1日3時間くらい、好きなように楽しくおしゃべりしてお金がもらえる仕事に見えます。
実際は、こんな程度の話にもすごい金額のお金と、膨大な人の手間と準備が積み重なっています。用意自体は半年前から始まり、グッズの打ち合わせからグッズの納期、全体予算の把握、スポンサーからお金が出たとしても、それだけでは足りないため、イベントグッズの収益の何%かを割り当て、費用計算を行い、演目はシナリオをつくったら、そこに使われる音楽の手配、現場の人との打ち合わせ、オンラインで放送もあるので、放送用の画像の用意とか、告知のための動画づくりとか、それはそれはとんでもない手間と時間をかけています。
だいたい小さな舞台セットをつくって、数人が舞台の上でなんかコンサートでもトークショーでもするだけで、その舞台設置費用や、それを廻す人達の人件費、撤収費用などを含めると、ショボくても1千万円のお金がかかりますし、そこでバルーンや火炎放射、花火などの演出なんか加わってくると、それだけで数百万、場合によっては数千万という費用がかかるものもあります。
多くの人は主役の活動にしか目がいってないので、楽そうな仕事に見えるわけですが、実際は、コンサートなら振り付けの練習やリハーサル、お客さんの見えないところでの膨大な練習や宣伝などなど、多大な時間と手間をかけてますから主役は主役で大変ですし、舞台を廻すスタッフも当然大忙し、そして彼らにも当然給料がありますから、人件費という形でお金はどんどんかかっていくわけです。
こう考えると、世の中のほとんどの物事は準備が9割で、本番はほんの一部に過ぎません。
会社のプレゼンや面接でも同じです。その瞬間は短くても、その場に向けて資料をつくり、相手の背景を調べ、質問を予測して答えを用意するなど、目に見えない部分に時間をかけてしっかりした用意をするほど、仕事の質は高くなります。
準備をしっかりすればするほど、本番での緊張や焦りが減るという安心感にもつながり、それはその人の「落ち着いた」感じになり信用度が上がります。
人生全般にいえることですが、私たちはついつい本番だけに目を向けがちです。しかし、本番は日々の積み重ね、つまり予習と準備の延長線上にあります。
今取り組んでいることがあるなら、本番だけでなく、その準備にぜひ時間とエネルギーを惜しまないでください。準備がしっかりできれば、本番は自ずとうまくいきます。これは勉強の積み重ねが結果を生むのと同じで、結局は積み重ねという話です。


文
