《好きをミライへつなげる講座》米村でんじろう先生 -科学のおもしろさを伝える仕事【後編】

米村でんじろう先生に仕事のことをとことん聞くインタビュー。前編では、でんじろう先生がサイエンスプロデューサーとなったきっかけ、サイエンスショーづくりの舞台裏についてお話いただきました。インタビュー後編では、でんじろう先生のこれからの目標や、将来「科学のおもしろさを伝える仕事」をしてみたいという中高生のみなさんへのアドバイスなど、さらに深堀りして聞いていきます!

米村でんじろう
サイエンスプロデューサー。1955年、千葉県に生まれる。東京学芸大学大学院理科教育専攻科修了後、自由学園・講師、都立高校教諭を勤めた後、広く科学の楽しさを伝える仕事を目指し、1996年4月独立。NHK「オレは日本のガリレオだ!?」に出演、話題を呼ぶ。1998年「米村でんじろうサイエンスプロダクション」設立。現在、サイエンスプロデューサーとして、科学実験等の企画・開発、各地でのサイエンスショー・実験教室・研修会などの企画・監修・出演など、様々な分野、媒体で幅広く活躍中。

インタビュー前編を読む

得意なことをとことん突き詰めて、やってみる

──科学部の生徒が文化祭で実験教室を行うときや、これからサイエンスコミュニケーターなどの仕事を目指す人に向けて、おもしろい実験を考案するポイントや観客を楽しませる秘訣などを教えていただけますか?

 部活や学校での発表、ボランティア活動で実験ショーを行うのであれば、やりたいことを思いっきりやってください。自分たちでアイディアを出して、工夫して形にして、やれるところまでやってお客さんや自分たちが盛り上がればそれが一番です。先ほどお話したように、ビジネスとしてやる場合は、利益を出す内容を探る必要があります。でもボランティアなら、一生懸命考えたことをぶつけてみればいいんですよ。

 ひとつアドバイスをするとすれば、科学が好きで詳しいと、つい原理をあれこれと説明したくなりますよね。でもお客さんはキョトンとしていたり、退屈そうにしていたりすることが多い。説明はほどほどにするのがいいです。

──でんじろう先生のようにサイエンスショーを仕事にしたいと思ったら、どうするのがいいのでしょう?

 もし、サイエンスショーをする人になりたいのであれば、実際にやっている人のグループに加わるのがいいと思います。

 自分で一から新しいサイエンスショーを始めたいのであれば、まず僕らがやっているサイエンスショーをよく見て、しっかり研究してほしいですね。既存のショーのいいところを取り入れて、なおかつ自分なりの特技を活かしたアレンジを加えてつくっていくのがいいと思います。また、サイエンスショーはひとりで何もかもやるのではなく、演出担当、アイディア担当、演技担当など、それぞれの分野が得意な人を集めてグループでやっていくことをおすすめします。

 僕は一からここまでのものをつくり上げるのに、25年かかっています。これからこの道を進む人は、25年かかったものを一からやり直す必要はない。僕が積み上げてきたものをぜひ引き継いでほしいです。僕がやめたらサイエンスショーがすたれてしまってはさびしいので、どんどん若い人が入ってきてほしいと思っています。

──科学のおもしろさを人に伝える仕事をするにあたって、どんなことが大切になりますか? 中高生は、どんな勉強や体験をするとよいでしょう?

 自分の得意な分野について、深く理解することが大切。先ほど、お客さんへの説明は控えめに、とアドバイスしましたが、それでも伝える側の理解の深さが、自然と内容に出てくるものです。

 科学のおもしろさを伝えるのは、ショーだけでなく今ならYouTubeのような動画配信もいいと思います。人気のユーチューバーが、科学実験をやってみる動画もたくさんありますね。でも、配信している人があまり科学を理解していない場合、インパクトを出して再生回数を稼ぐためだけの偏った内容のことも多いようです。

 本やインターネットの情報を読んで理解するだけでなく、とにかく手を動かして実験してください。よいアイディアは、自分自身の経験からしか出てきません。僕の場合は人生の役に立たないような実験を、人生の多くの時間をかけてやり続けてきました。どんなことでもほかの人が体験できない分量をやっておけば、その分野でとび抜けることができます。プロになるには、まわりからたとえ馬鹿にされても、ずっとやり続けることが必要なんです。

科学を文化として根付かせ、発展させたい

──でんじろう先生が、これからやってみたいのはどんなことですか?

 僕は日本に「文化としての科学」を根付かせたいんです。たとえばスポーツや音楽、演劇なら、プロにあこがれて習い始め、たとえプロにならなくても趣味で楽しみ、お金を払ってプロのパフォーマンスを見に行く文化が出来上がっています。僕の夢は、音楽ライブや演劇のように、普通の人がサイエンスショーを見て、科学がエンタメのように楽しめるような世界を実現すること。

 科学で新しい発見、役に立つ発見をするためには、土台として役に立たない膨大な研究が必要です。そのためには多くの研究者や技術者が必要だし、研究が失敗しても許される風潮も必要です。研究者や技術者を増やすだけでなく、科学が好きで、楽しんだり学んだりしている普通の人がたくさんいて、プロの研究者や技術者を応援してくれるような社会になると、もっと思い切って自分の好きな研究ができるようになると思います。

──スポーツ選手やアーティストのように、好きな科学者を応援するファンがいるという世界。とてもおもしろそうです!

 科学のおもしろさを伝える仕事の意味がここにあると思っています。研究者や技術者は、科学が好きでとても熱心に勉強してきた人たちですが、専門知識がない人の気持ちがわからないことが多い。おもしろい研究をしていても、みんなに伝わらないんですね。

 科学技術って、魔法の世界を実現させていくことだと思うんです。おとぎ話では魔女がほうきで空を飛んでいるけれど、今は飛行機がある。テレパシーがなくても、オンライン通話で遠く離れた人と顔を合わせて話すことができる。すべて科学技術が実現したことですよね。「科学ってすごいおもしろいことなんだよ」とみんなに伝えて、子供たちがもっと科学者に憧れてくれるといいなあと思っています。

 ですから、僕のような立場の人間が、専門家と一般の人の橋渡しになって、科学のおもしろさをわかりやすく料理して伝える。子供のころからおもしろい科学の体験ができる場を増やして、「なんだかわからないけど楽しい!」と思ってもらうことが、科学のすそ野を広げて、結果的に科学の発展につながると信じています。

 僕はいつか、サイエンスショーに特化した劇場をつくりたいんです。劇団四季のミュージカルのようにロングランのサイエンスショーがいつでも見られて、チケットがなかなか取れないほど人気で、どんな人も気軽に科学がエンタメとして楽しめるようになる世界。そして、サイエンスショーに出ることに憧れて、それを目指す若い人がたくさん出てくる。そんな、科学が文化として根付いた世界を思い描いています。

──本日は貴重なお話をいただき、ありがとうございました!

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米村でんじろうサイエンスプロダクションによるショーも見られる!「チャリンコワールド2022」に注目

“科学の目”で自転車を分解。五感を通して体感できる特別展が、3月25日(金)~4月3日(日)、東京・科学技術館で開催されます! 米村でんじろうサイエンスプロダクションによるサイエンスショーも見られますよ。詳しくは公式サイトをチェック!

「技術と科学のCharinko World2022」概要
●会期:2022年3月25日(金)~4月3日(日)
●メインイベント:2022年3月26日(土)~27日(日)・4月2日(土)~3日(日)
●入場料:無料
●開催時間:9:30~16:30 ※3/25は15:00~より開会し、オープニングセレモニーがございます。
●会場:科学技術館1階 展示・イベントホール 他(予定)
●公式サイト: https://www.charinkoworld2022.jp/

取材・文

今井明子 著者の記事一覧

1978年生まれ。首都圏在住。京都大学農学部卒。気象予報士。得意分野は科学系(おもに医療、地球科学、生物)をはじめ、育児、教育、働き方など。「Newton」「AERA」「東洋経済オンライン」「BUSINESS INSIDER JAPAN」「暦生活」などで執筆。著書に「こちら、横浜国大『そらの研究室』! 天気と気象の特別授業」(共著、三笠書房知的生き方文庫)、「異常気象と温暖化がわかる」(技術評論社)がある。気象予報士として、お天気教室や防災講座の講師、気象科学館の解説員なども務める。

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