《子供の科学 深ボリ講座》海城中学高等学校 地学部の湧水調査を追った!

「子供の科学」3月号の「教えてセンパイ!」で取材したのは、海城中学高等学校地学部。2007年に同好会からスタートし、翌年、部に昇格。現在は数々の国内外の地学(地球科学)に関わる大会で優秀な成績をおさめる、自然科学系の部活です。一口に地学といっても、部内が水文、地質、気象、天文の4班に分かれているように、扱う分野がとても広いのが特徴。その分、部員の興味もそれぞれで、自分の気になる題材をとことん深める活動をしています。そして、みんなの研究の中心に必ずあるのが足を使って学ぶフィールドワーク! コロナ禍になってからというもの、なかなか思うような学外活動ができなかった地学部ですが、最近は少しずつ復活してきているそう。今回は、所属するみんながどんな研究に取り組み、調査活動をしているのか、その一部を教えてもらいました。

部員がほぼ毎日出かけている、おとめ山公園。新宿区唯一の湧き水が見られます。

10年以上前からおとめ山公園の湧水調査に取り組む

湧水を採取している様子。15秒など、一定時間を決めて汲み取ります。

 おとめ山公園の湧水調査に注力してきたのは、前部長である高校3年生の青山くん。このおとめ山公園の湧水は、海城高校がある新宿区唯一の湧き水で、東京都の名湧水57にも選ばれている美しいスポットです。データの収集は、歴代の先輩たちから引き継がれ、もう10年以上も継続! いわば部の核となる取り組みで、所属する班にかかわらず、全員が交代で参加しています。

 収集するデータは、おとめ山公園の湧水の流量と水温、EC(電気伝導率)、pHなど。流量は手動で行っており、決まった地点の小川の段差をビニールシートで抑え、バケツで採水。その量をシリンダーで測定しています。毎日行うにはなかなか地道で根気のいる作業ですね!

採取した湧水はシリンダーで計測。夏や秋の雨の多い時季は湧水量が増えます。

 青山くんは入学した中学1年生のときからこの湧水調査に関わってきましたが、あるとき、水の湧出量が激減していることに気づいたそう。そこで、「おとめ山公園の湧出量の変動には何が関連しているのか」を題材とし、調査研究を進めました。

 湧水は、地層に滞留した地下水が表に湧き出た状態のことを指しますが、おとめ山公園の湧水は2つの地層から流れ出る地下水が混ざりあっており、湧水量の変動について調べるには、地下水のことを調査するのが重要な手がかりとなるそう。そのため、地下水の調査データが必要で、そのために同じ新宿区内の、井戸のある民家の協力を得たと話します。おとめ山公園と民家の井戸のデータを集積し、分析した結果、同じ雨の降水量でも降り方によって湧出量が変化することなどがわかったとか。

 第1志望の大学への進学を推薦で決めた青山くん。取材の入ったこの日も部室に顔を出し、学校帰りにおとめ山公園に寄っていくと話すなど、彼にとっておとめ山公園の湧水調査は部活動を超えて、ライフワークとなっている印象を受けました。

地質調査のため、工事現場にアタック!

現副部長の河野くん。小学生のときから理科が好きだったとのこと。

「化石や地層に興味があったので、入部しました」と話をしてくれたのは、高校2年生の河野旺実くん。地質班に所属しており、地層や化石、鉱物などの観察に取り組んでいます。今、調べているのは多摩川エリアの地層について。調査エリアで工事現場を見つけたため、工事を担っている会社に直接電話し、採取した土をもらえないかお願いする予定とのこと。もちろん、断られることのほうが多いそうですが、地道にアタックを続けているそうです。

部員のみんなの足もとに見えるのが、海城高校の下にあった地層の剥ぎ取り標本です。

「地層を形成する土の性質や鉱物の比率などから、こっちの地域とあっちの地域の地層が同じだということがわかったり、その歴史が推測できたりします」と話す、河野くん。ちなみに地学部の普段の活動は2021年にオープンしたばかりのサイエンスセンターにある地学実験室で行っていますが、この建物の建設時に海城高校の下を掘ったところ、関東ローム層が見られました。地層を剥ぎ取り、その時代や名前、でき方などを調査したとのこと。地層や地質などの言葉は、普段の生活では縁遠いものですが、自分の学校の下にあったとなると、一気に身近に感じられますね!

自主性と行動力によって、よりよい研究が生まれる

顧問の山田先生。生徒の自主性を尊重するために、あまり口出しはしないのだそう。

 最後に顧問の山田直樹先生に話を聞きました。普段の活動について「僕はほとんど見守り役。決まったメニューがあるわけでもなく、活動は生徒による自主的なものです」と話をしてくれた、山田先生。フィールドワークを行うときはもちろん学校に許可を得ていますが、発起人は大概部員の誰かであり、普段から「●月●日に●●まで出かけて、巡検するので興味のある人は集まってください」など、みんなが気軽にしたいことについて手を上げ、人を集めることが当たり前となっているそう。自主性と行動力に優れた部員が多く、それによってよりよい研究が生みだされていることがよくわかりますね。

 さて、今回は水文班の青山くんと地質班の河野くんのお話を取り上げましたが、海城高校地学部の研究は天文や気象など、ほかにも興味深い分野がたくさん! 地学部のブログ(https://kaijo-chigaku.com/)では、部員が普段どのような活動をしているかよくわかるので、ぜひ、アクセスしてみてください。

 また、取材した海城高等学校地学部については、本誌連載(2023年3月号掲載)で取り上げているので、こちらもぜひ、チェックを。今後も「教えてセンパイ!」(奇数月掲載)では、科学に深い関わりのある学校を紹介していくので、楽しみにしていてくださいね。

撮影/川上秋レミイ(室内分)

取材・文

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フリーの編集・ライター。育児、健康、暮らし、ファッションなど幅広い分野で活動。「子供の科学」では、連載「教えてセンパイ!」を担当。

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