《子供の科学 深ボリ講座》地球の大陸は将来どんな形になるの?

©NASA

2024年6月号の『子供の科学』では、「なぜ地球にはたくさんの生き物がいるの?」「地球は将来どうなっちゃうの?」などの疑問について、専門家に回答していただきました。ここでは、誌面で掲載しきれなかった、「将来、大陸はどのような形になるの?」という疑問について深ボリします。教えていただいたのは、岐阜聖徳学園大学教育学部の川上紳一教授です!

川上紳一先生。6月23日にはオンライン講演会も開催するよ!

プレートはなぜ移動するの?

 日本は世界でも類を見ないほど地震の多い国として知られています。それは、日本付近がプレートの境目にあたる場所だからです。地球は表面から中心に向かって地殻、マントル、外核、内核に分かれた構造をしていますが、プレートは、地殻とマントルの上のほうにある硬い岩盤のことです。地球上では何枚かのプレートが合わさる形で地球の表面を覆い、常に移動しています。

 日本の太平洋沖には、日本海溝や南海トラフなどの水深の深い場所がありますが、そこがちょうどプレートの沈み込む場所です。そして、海洋プレートが大陸プレートの下に沈みこむとき、大陸プレートの端が海洋プレートに巻き込まれていくのですが、あるときその大陸プレートの端が反発して跳ね上がることで巨大な地震が発生するのです

 ではなぜ、プレートは常に移動しているのでしょうか。これには諸説ありますが、その中の有力な説のひとつが、地殻より深い部分にあるマントルが移動しているからというものです。マントルは温度が高く、プレートに比べるとやわらかいです。そして、地球の深い場所から熱いマントルが上昇し、地表付近で冷えたら下降するという対流の運動をしています。この対流の運動に伴い、マントルの上にあるプレートも一緒に動いていると考えられているのです。

 プレートは、大西洋の真ん中にある、中央海嶺と呼ばれる長い海底火山の山脈で生まれます。中央海嶺ではマグマが地下から上がってきて、それが冷えることであらたなプレートがつくられているのです。そして、あらたにできたプレートは中央海嶺から離れるように東西に移動し、ちょうど日本列島付近で沈み込むのです。

大昔の大陸はひとつだった

 地球の大陸は、プレートの上にあるので、プレートの運動に伴って移動し、分裂したりくっついたりしてきました。現在の地球上の大陸は全部で6つあり、バラバラに分かれています。しかし、大陸が今のような姿に分かれ始めたのは約2億年前で、それ以前の地球上の大陸はひとつしかなかったと考えられています。このひとつの大陸(超大陸)は「パンゲア」とよばれています。パンゲアがプレートの移動に伴って分裂し、今の姿になったと考えられています。これは「大陸移動説」と呼ばれ、ドイツのウェゲナーという気象学者によって提唱されました。

パンゲア大陸のイメージ。

 なぜ、大陸が移動するなどという説が提唱されたのでしょうか。それは、ウェゲナーが大西洋をはさんだヨーロッパ・アフリカ大陸の西岸と、南北アメリカ大陸の東岸の海岸線の形がよく似ており、パズルのようにぴったりとくっつくことに気づいたからです。また、大陸の対岸どうしの地質もよく似ており、白亜紀初期以前の化石がアフリカと南アメリカの間でよく似ていることも大陸移動説の根拠となりました。

大陸は再びひとつになる!?

 プレートは今も移動しています。ですから、現在の大陸も将来移動して、再びひとつになるのではないかと考えられています。将来どのような姿になるのかは諸説ありますが、そのなかでも2つの有力な説があります。そのひとつは「パンゲアプロキシマ」という超大陸ができるというものです。これは、ヨーロッパ・アフリカ大陸と南北アメリカ大陸が分裂したときにできた大西洋が再び狭くなり、またヨーロッパ・アフリカ大陸と南北アメリカ大陸がくっつくという説です。

 もうひとつは、「アメイジア」という超大陸ができるという説です。こちらは、大西洋がどんどんと広がっていき、アメリカ大陸がアジアとくっついて超大陸ができるというものです。

3億年後のアメイジア大陸のイメージ。(カーティン大学のウェブサイトhttps://www.curtin.edu.au/news/media-release/pacific-ocean-set-to-make-way-for-worlds-next-supercontinent/の画像をもとに作成)

 最近では、これまでプレートができる場所だった大西洋で、プレートが沈み込む場所があらたに生まれているのではないかという説が出ています。そうなると、これまで広がる一方だった大西洋が、再び狭くなっていくのかもしれません。ただ、これだけの現象を見ただけではまだ大西洋は広がっているのか狭くなろうとしているのかはわからず、将来の地球にできる超大陸はパンゲアプロキシマなのか、アメイジアになるのかは五分五分の状態です。

 プレートは動いているといっても1年に数cmという世界です。そして今の動きがずっと続くのではなく、あるとき急に動きを変えることもありえます。太平洋プレートやフィリピン海プレートもある時期から方向転換しました。しかし、いつ動きが変わるのか、どの方向に代わるのかの予測は非常に難しいです。再び超大陸ができるのは、少なくとも今から2億年後くらいになりそうです。

取材・文/今井明子 イラスト/新保基恵

取材・文

今井明子 著者の記事一覧

1978年生まれ。首都圏在住。京都大学農学部卒。気象予報士。得意分野は科学系(おもに医療、地球科学、生物)をはじめ、育児、教育、働き方など。「Newton」「AERA」「東洋経済オンライン」「BUSINESS INSIDER JAPAN」「暦生活」などで執筆。著書に「こちら、横浜国大『そらの研究室』! 天気と気象の特別授業」(共著、三笠書房知的生き方文庫)、「異常気象と温暖化がわかる」(技術評論社)がある。気象予報士として、お天気教室や防災講座の講師、気象科学館の解説員なども務める。

子供の科学2024年6月号

6月号は地球を大特集! どうやってこの星が誕生したのか? このままだと滅びるって本当? どうやって守ればいい?……地球に住むみんなが知っておきたい地球科学や温暖化のぎもんに、専門家が答えます。また、地球が太陽の周りを回る工作付録も! その他、身近にあるのに実はよく知らない”ねじ”の世界を紹介。形や素材、つくり方まで、ねじの基本を解説します。さらに、実験やスイーツをテーマにしたまんが連載も大充実!

6月号の詳細はこちら

コカネットプレミアム(DX)会員は、雑誌『子供の科学』バックナンバー電子版が読み放題! 以下をクリック☆

中高生の科学『コカデミア』TOPに戻る

最新号好評発売中!

子供の科学 2025年 1月号

CTR IMG