《子供の科学 深ボリ講座》生物部ってどんなことするの?➁「ムササビの調査活動を紹介!」

『子供の科学』2022年5月号からスタートした新連載「教えてセンパイ!」。科学分野への興味を探求できる高校や高専の授業・部活動を隔月で紹介する連載です。連載の第1回では、将来の国際的な科学技術人材を育成のため、文部科学省に認められたスーパーハイエンススクール(SSH)に認定されている、中央大学附属高等学校の生物部を取材。附属の中学校の生徒も含め、約70名の部員がいる大所帯のクラブです。活動内容は多岐に渡りますが、主軸は月に1〜2回ほど放課後に高尾山などに足を運び、野生生物の調査活動を行うこと。ムササビ研究のエキスパート・岡崎先生率いる調査スタイルが本格的で、大学レベルとも言われています。ここではそんな生物部がとくに力を入れるムササビの生態調査と、学外でも評価されている研究発表について紹介します。

部員のムササビに関する研究発表が名だたる大会で表彰!

部員の松本くんと栗原さんがまとめた研究発表。SSHの大会では、ほかの生徒とも仲良くなれていい刺激になったそう。

 昨年のこと。中央大学付属高等学校の生物部に在籍する高校1年生・松本くんと栗原さんがまとめたムササビに関する研究発表が、SSHに通う生徒たちが集まる「令和3年度SSH研究発表会(全国大会)」の生物分野で奨励賞を受賞。東京都理科研究発表会の生物分野でも最優秀賞を獲得するなど、素晴らしい成績を納めました。

 この研究発表のタイトルは「高尾山におけるムササビの分布と環境要因」。ムササビの生息エリアが、標高やよく食べる葉っぱの木が生えている場所、住居として好む高い木と相関しているかなどを、これまで生物部で集めたデータをもとに検証したものです。昔からムササビの姿が見られる高尾山ですが、高尾山全体のムササビ分布の報告はこれまでになく、画期的な研究発表となりました。

調査データは普段の生物部の活動により、採集されたもの

ムササビが食べた形跡のある葉っぱ。折ったところを中心として、左右対象になっているのがポイント。

 このムササビの研究発表に使われた調査データは、生物部員全員が採集して、積み上げてきたものです。普段の調査活動の流れを紹介すると、行われるのは月に1〜2度程度。部員は学校が終わって日没前に高尾山に移動します。夜行性のムササビが日没後20分〜30分程度で、木の穴からひょっこり顔を出すため、その時間に合わせるのです。複数のルートを確認したいため、調査はグループに分かれます。部員の数が多いことで、いろいろなルートを調査できるのが強みです。

 さて、ムササビはどこで見られるのでしょうか? よくいるのは、直径30cm以上で高さが20m以上ある、太くて高い木。巣穴に適した空洞状の空間があり、テンなどの天敵から身を隠すことができる場所にいます。部員は、ムササビかな?という姿を見かけたら、赤のセロファンを貼った懐中電灯の光をあてます。ムササビは夜行性のため、眩しくないようにという配慮と、ムササビの目の奥の「タペタム」という反射板に反射して、目がきらりと光るためです。見つけたら、その場所や木の種類、高さ、日付、時刻などを記録します。フンや食痕のついた葉っぱは採取し、これもまた見つけた場所や日付、木の種類などを記します。フンは小さく丸っこくて、草の香りがするのが特徴。食痕は、ムササビが葉を真ん中で折って食べるため、左右対称になっています。

 ムササビといえば、皮膜を広げて、座布団のような四角い形で滑空する姿が印象的ですが、実はこの姿、簡単には見ることはできません。そのため、姿を見かけたら、木の上にいるムササビを見つめながら、首をあげて静かにじっと待つことになります。中には首が痛くて、一瞬、顔を下に向けた隙に見逃してしまうことも。岡崎先生は「ムササビを観察することで、忍耐力も鍛えられる」と教えてくれました。

 そして、帰り道。山の中はスマホが圏外になって使い物になりません。別グループとは無線のトランシーバーで連絡を取り合います。調査状況を報告し、帰りのルートは各グループが行きとは異なるところを通ることで、調査エリアを拡大。効率的にデータを採集します。データはパソコンに打ち込まれて積み上がっていき、これが松本くんと栗原さんがまとめた研究発表のような形へとつながっていきます。

顧問の先生が許可を得て、学内で特別にムササビを飼育

生物部の人気者・グリくん。普段はケージの中の樹洞を模した木箱の中にいる。※ムササビは顧問の先生が特別に東京都の許可を得て飼育しています。

 こうした学外での活動が盛んな中央大学附属高等学校の生物部ですが、学内では顧問の先生が特別に東京都の許可を受けて、グリくんという名のムササビを飼育中です。高尾山などで見られる野生のムササビと飼育しているムササビの違いが比較できるため、ムササビの生態研究の手助けとなるそう。ちなみに食べている葉っぱや、フンの形も少し異なると部員の皆さんが教えてくれました。

 さて、いかがでしたか? ムササビ研究に対する生物部の本気が見られましたね。高校生のときから大学レベルの専門性の高い研究ができるなんて、羨ましいの一言! 実際、生物の活動について語る部員の皆さんの目はとてもキラキラしていて、充実していることが伺えました。これからも科学に深い関わりのある学校を紹介していくので、ぜひ、本誌(「教えてセンパイ!」は、2022年5月号〜。奇数月掲載)もチェックしてみてくださいね。

取材・文

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フリーの編集・ライター。育児、健康、暮らし、ファッションなど幅広い分野で活動。「子供の科学」では、連載「教えてセンパイ!」を担当。

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