アニメはどうやって動いているの?

脳のメカニズムを利用して、少しずつ変化する静止画を連続で見せている

実際には動いていなくても、少しずつ変化している静止した絵を連続して見ると、あたかも動いているように感じられます。これは仮現運動という現象です。アニメに限らず、映画、TV、コンピューター上の動画など、人間のつくった映像で実際に動いているものは存在せず、すべて静止画の連続です。エジソンのキネトスコープから最新のデジタルシネマまで、原理そのものは何も変わっていません。
人間の脳には、目に映った映像の変化から動きを検出するメカニズムがあります。このメカニズムが生理的に刺激されるような条件に合った映像が目に入れば、実際に動いていなくても動いて見えるのです。脳にとっては、実際に動くものが動いて見える場合と、実際に動いていなくても動いて見える仮現運動の間には、本質的な違いはありません。
アニメでは、滑らかな動きをつくろうとすると、多くの枚数の絵を描かないといけません。TVアニメでは1秒間に8枚程度の絵を描くことが多く、30分間のTVアニメでは数千枚もの絵が使われます。
キャラクターなどを素早く動かしたい場合、ある絵と次の絵の間で、動かそうとするものの距離が離れてしまい、そのままではカクカクとしてうまく動いて見えないこともあります。そこで、少ない枚数の絵で、いかにいきいきとした動きを表現できるかがアニメーターの技術となります。ある絵と次の絵の間に動きを表す線やぶれ、かすれを描いたり、動きの激しさに応じて絵の枚数を変化させたりします。
近年では、CGを取り入れて、時間や制作費を抑えて、絵の質を高める方法が採られていますが、仮現運動を効果的に使った手描きの絵による動きの表現は、実際の映像とは違ったスピード感で、独自の味わいを出すことができます。
(九州大学芸術工学研究院教授 伊藤裕之)

 手の位置を少しずつ変えた静止画を連続して見せることで、
実際に手が動いているように見える。

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