防弾服ってどんなしくみでできているの?

鋼鉄の何倍もの強度の繊維などを織り重ねる

防弾服には、防ぎたい銃弾や銃器の種類によっていろいろなものがあります。銃弾を止める材料としては「金属」が最も強いというイメージがありますが、先端的な繊維技術から生み出されたアラミド繊維(ケブラーやトワロンなど)や超高分子量ポリエチレン繊維(ダイニーマやスペクトラなど)は鋼鉄の5~8倍程度の強さを持っており、しかも金属に比べて非常に軽いことや衝撃エネルギーの吸収性能が優れていることから、防弾服の素材として中心的に使われています。またこれら高性能な繊維をどのように織ったり配置するか、単位面積あたりの糸の密度(詰まり具合)をどれくらいにするか、また織物だけでなく不織布(繊維がランダムに絡み合った構造)を効果的に使うことなど、繊維(布)の構造の設計によっても防弾性能は変わってきます。

一方、防弾服によって銃弾から体を守るためには、弾が人間の体まで到達しないという機能も必要ですが、被弾時の大きな衝撃が体の1か所に集中しないように分散させたり、エネルギーを吸収する機能も必要になります。このことから、繊維以外にもセラミック材料や特殊なプラスチックの板などを層状に複合して用いることにより、被弾時の体への衝撃を抑えたり、致命傷にならない機能を持たせています。

以上のように、警察官や軍隊などの活動現場での環境や想定される銃弾や銃器の種類に応じて、さまざまなタイプの防弾服が設計され使用されています。また防弾服は、動きやすさや温熱快適性も必要とされます。防護機能と快適性を両立することは簡単ではありませんが、世界中の研究機関・大学などで新しい防護服の研究が進められています。

(信州大学繊維学部教授 森川英明)

図 防弾服の断面構造の例

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