洗濯機の研究で世界の海を救う? マイクロプラスチックの謎を追う菅野花鈴さんの挑戦【NEST LAB.体験ストーリー】

自分の好きなことを究めていけるオンラインスクール「NEST LAB.」。NEST LAB.で自分の研究やものづくりの究め方を学び、大きな成果につなげた先輩がいます。今回は、小学校時代からマイクロプラスチックの研究を続け、現在は東京都市大学環境創生学科の2年生として活躍している菅野花鈴(すがの・かりん)さんの体験ストーリーを紹介します。

NASAでの衝撃と身近な川で見つけたゴミ

 菅野さんが研究者になりたいと思ったのは、小学4年生のとき。旅行でNASAを訪れた際、ロケットの事故で亡くなったパイロットの遺品が展示されているのを見て、宇宙開発の明るい側面だけではなく、厳しい現実があることに強い衝撃を受けたそうです。この体験から、技術や研究で社会に貢献したいという夢が芽生えました。

旅行でNASAを訪れたときの写真。パイロットの遺品を見て強い衝撃を受けた。

 その後、小学校の授業で、近くの川へ魚を探しに行ったときに、菅野さんはたくさんのプラスチックゴミを発見。そのころニュースでマイクロプラスチック問題を知り、自分たちの身近な川でも問題が起きているのではないかと感じたことが、菅野さんの「探究の旅」の始まりでした。

NEST LAB.での発見~コロナ禍での転換

 その後、NEST LAB.(ジュニアドクター育成塾)に入った菅野さんは、当初、川の水質とマイクロプラスチックの量の関係を調査していました。顕微鏡で地道にサンプルを観察する中で、糸くずのようなマイクロファイバーを大量に見つけます。

 菅野さんは、川でプラスチックを回収する装置をつくりたかったのですが、当時は新型コロナウイルスの流行による外出自粛期間のため、それができませんでした。そこで、家の中でできる研究をしようと、洗濯機から出るマイクロファイバーの研究にターゲットを絞りました。これが、後に大きな成果を生む研究の転換点となりました。

研究発表の場である「サイエンスキャッスル」にて、NEST LAB.ドクターコースでの研究を発表した菅野さん(当時、中学2年生)。

高校3年間で挑んだフィルター開発と数々の受賞

 研究を続けるため、菅野さんは理系の強豪校である東京都立多摩科学技術高校に進学しました。そこで取り組んだのは、海外製の高価な装置ではなく、一般的な日本製の洗濯機に付いている糸くずフィルターを改良して、マイクロファイバーをキャッチするというアイデアでした。

 研究では、フィルターの目を細かくするとマイクロファイバーは取れるけれど、大きな糸くずが取れなくなってしまうという“壁”に直面しました。試行錯誤の末、既存のフィルターの外側に細かいメッシュを重ねる二重構造を考案し、シミュレーションによってその効果を突き止めました。

 この独創的な研究は高く評価され、第13回GSCジュニア賞(GSC=Green Sustainable Chemistry)を受賞したほか、朝日新聞主催のJSEC(高校生科学技術チャレンジ)での入選や、日本財団主催のマリンチャレンジプログラムでの奨励賞など、多くの賞に輝きました。

観察をすることができたマイクロファイバー
電子顕微鏡で観察したフィルターの様子。装置Ⅰは既製品の糸くずフィルター、装置Ⅱはマイクロファイバーを回収できる程度の目の細かいフィルターに張り替えたもの、装置Ⅲは装置Ⅱよりも目の細かいフィルターに張り替えたもの。

大学選びの決め手は“世界とつながる研究室

 大学進学にあり、菅野さんは「世界とつながるマイクロプラスチックの研究室があるところ」という条件で進路を検討しました。その結果、韓国出身でマイクロプラスチック研究の第一人者である咸泳植(ハム・ヨンシク)先生が率いる研究室がある東京都市大学への入学を決めました。研究室は留学生が多く国際色も豊かです。

 通常、研究室への配属は3年生以降ですが、菅野さんの高校までの研究実績が認められ、1年生からの研究室所属が特例として許可されました。大学2年生の現在では、大学院の留学生たちに囲まれて刺激を受けながら、自分専用の研究室の席と実験機材、さらには研究室の一角に自分の部屋もある環境で、日々研究に没頭しています。

東京都市大学の研究室で実験中の菅野さん。

シービン(Seabin)への興味からオーストラリアに留学

 大学2年生になった菅野さんは、4ヶ月間のオーストラリア留学へ飛び出しました。オーストラリアで開発された海洋マイクロプラスチック回収装置「シービン(Seabin)」への興味が、同国への留学を決めた動機でした。オーストラリアは環境対策が進んでいるイメージがあり、菅野さんは国民の意識が日本とどう違うのかも実際に体験してみたいと考えていました。

 残念ながら、シービンを開発した企業が、菅野さんの滞在先から遠く離れていたため、直接見に行くことは叶いませんでした。しかし、菅野さんはオーストラリアのビーチを自分の足で調査。そこで見たのは、日本よりもゴミの分別が厳格ではないにもかかわらず、目に見えるプラスチックゴミが驚くほど少ないという現実でした。その要因として、自動販売機が少なくペットボトル消費が抑えられていること、カフェでの脱プラスチックの取り組みが進んでいることなどがある、ということを知りました。現地で得られた情報は、菅野さんの探究心をさらに刺激しました。

友人と訪れたオーストラリア・パースのビーチ。プラスチックゴミの少なさに驚いた。

未来へのステップアップ~社会を動かす研究者へ

 現在は、高校時代の研究手法をさらにブラッシュアップし、世界に通用する学術論文にするための再実験に取り組んでいます。これからは、研究資金を得るための助成金申請にも本格的に挑戦していく予定です。

 菅野さんは、「科学的な研究だけでなく、啓発活動や政府への働きかけなど、どうすれば社会のしくみを変えられるかを考えていきたい」と語ります。小学生のころに育んだ好奇心は、今、世界をきれいにするための確かな力へと進化し続けています。

【取材協力】菅野花鈴(すがの・かりん)さん
東京都市大学 環境創生学科 2年生。小学生時代からNEST LAB.で研究を始め、高校時代は東京都立多摩科学技術高校でマイクロファイバー回収装置を研究。現在は大学の研究室に所属し、マイクロファイバー回収の社会実装を目指して、より高度な研究と論文執筆に励んでいる。

■オンラインスクールの詳細・お問い合わせ NEST LAB.(株式会社スペースノーム研究所)
https://school.lne.st/

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