世界初の試みに成功! 小型実験機で小惑星に体当たり!!~小惑星から地球を守る防衛ミッションへの備え~

将来の地球防衛のため、実験機を小惑星に衝突させて軌道
を変えさせることができるかを確かめるNASA(アメリカ航空宇宙局)のDART(ダート)計画。アメリカ東部時間9月26日午後7時15分すぎ(日本時間27日午前8時15分すぎ)、ついに衝突実験が行われました。NASAでは軌道変更に成功したのかどうか、解析が進められています。

(DART計画については、こちらの記事もご参照ください。「【宇宙の重大ニュース】小惑星衝突の脅威から地球を守れ! NASAのDART計画とは?」)

インターネット中継を通じて世界中が注目! 衝突は成功!

 「惑星防衛実験ミッション」というキャッチフレーズがつけられたNASA(アメリカ航空宇宙局)のDART(ダート)計画。アメリカ東部時間26日午後6時から始まったNASA TVによるインターネット中継を通じて、世界中がその経過を見守りました。

 地球から1100万km離れたダート実験機の光学航法カメラがとらえたターゲットの小惑星。距離が近づくにつれ、次第に大きくなっていく様子がわかります。「5、4、3、2、1」のカウントダウンとともに、小惑星の表面が画面いっぱいに広がり、途中で途切れた画像が送られてきたのが最後となりましたが、これで実験は成功。管制室に詰めていたNASA関係者は拍手して互いに喜びを表していました。

ダート実験機が体当たりする直前に中継されたNASA TVの画像。(画像/NASA)
ダート実験機の光学航法カメラがとらえたターゲットの小惑星。上から順に、衝突2分半前920km離れた地点から撮影。小惑星ディディモスとターゲットの小惑星衛星ディモルフォス(中央)が写っている。2枚目はディモルフォスの全体像、3枚目は衝突2秒前に12kmの地点から撮影したディモルフォス。最後は途中で途切れた衝突1秒前6kmの地点からの画像。(画像/NASA/Johns Hopkins APL)

小型衛星が衝突の瞬間を撮影

 衝突の瞬間は地球からの天体望遠鏡での観測のほか、ダート実験機が搭載していた小型衛星LICIACube(イタリアが開発)が確認。LICIACubeの運用にあたったASI(イタリア宇宙庁)が記者会見で発表したLICIACubeが撮影した画像からも、体当たりによって発生した熱(エネルギー)で衝突地点が明るくなったことが確認されました。

ディモルフォスから56.7km離れた地点でLICIACubeが撮影した衝突後の画像。中央上部のディモルフォスが明るくなっているところは、衝突によって発生した熱によるものとみられる。(画像/ASI/NASA)

体当たりで、小惑星衛星ディモルフォスの軌道を変えられたのか?

ダート実験機、小惑星ディディモス、小惑星衛星ディモルフォスの想像図。(画像/NASA/Johns Hopkins APL)

 DART計画の正式名称は、”Double Asteroid Redirection Test(DART)”。直訳すると「二重小惑星方向転換テスト」という意味です。ダート実験機は2021年11月にスペースXのファルコン9で打ち上げられ、小惑星ディディモス(直径約780m)の周りを小惑星衛星ディモルフォス(直径約160m)が回る二重小惑星(Double Asteroid)を目指してきました。

 2つの小惑星のうち、体当たりのターゲットとなったのはディモルフォス。その大きさは、エジプトのギザの大ピラミッドくらい。自動販売機サイズのダート実験機が秒速6kmで激突して、どれだけ軌道を変えられるのか。今回の実験の成果について、NASAなどで解析が進められます。

 小惑星衛星ディモルフォスは、ディディモスの周りを11時間55分かけて一周しています。2つの天体は1.2kmほど離れています。下のイラストのようにダート実験機の体当たりによってディモルフォスは別の軌道を描くようになるとみられていますが、果たして――。

小惑星ディディモスと、その周りを回る小惑星衛星ディモルフォスの軌道図。衝突によって軌道が変わると期待されている。(画像/NASA/Johns Hopkins APL)

 今後は、ESA(欧州宇宙機関)が2024年10月に打ち上げるヘラ(Hera)ミッションの小型衛星が2026年12月にディモルフォスに到達し、体当たりの状況を確認することも予定されています。衝突によってできたクレーターを調べることで衝撃の度合いや状況がわかるので、将来の危機に向けて小惑星の軌道を変える技術を開発するのに役立ちそうです。

2022年10月12日追記:NASAはディモルフォスの衝突前はディモルフォスが太陽光を遮ることでディディモスが11時間55分周期で暗くなっていたのに対し、衝突後はディディモスが暗くなるタイミングが11時間23分周期に変化したのが確認されたとして、ダート実験機の衝突によるディモルフォスの軌道変更実験は成功したと発表しました。

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サイエンスライター。1960年、神奈川県出身。東京工業大学理学部卒。新聞社科学記者を経て、川巻獏のペンネームで執筆活動をしている。自然科学からテクノロジーまで幅広い分野をカバー。宇宙・天文学分野を中心に活動している。

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