【ノーベル医学・生理学賞】大隅良典先生の研究-細胞内のリサイクル「オートファジー」に関わる遺伝子を解明

2016年医学・生理学賞 大隅良典
おおすみよしのり
先生(東京工業大学栄誉教授
※肩書は受賞当時

受賞記者会見。中央が大隅先生。

 生物が食べ物を得られない飢餓状態に陥ると、細胞内のタンパク質を分解して、再利用する「オートファジー」が働きます。日本語では「自食作用」と訳されるこの現象は、1960年代から知られていましたが、どのようなしくみで働くのかは明らかになっていませんでした。

 そこで大隅良典博士は、東京大学の助教授になったのを機に、新しい研究を始めようとして、酵母
こうぼ
が持つ細胞内小器官の液胞
えきほう
の観察に取り組みました。当時、液胞は不要なものが集まるゴミ溜めだと考えられていたため、液胞に注目する研究者はほとんどいませんでした。

 それでも液胞の観察を続けた大隅博士は、液胞内に小さな粒があらわれることを発見。酵母でオートファジーが起こっていることを確かめました。さらに酵母の遺伝子を無作為に壊していく実験を行い、飢餓
きが
になってもオートファジーが起こらない酵母をつくり出して、オートファジーに関わる遺伝子を見つけ出しました。

 その後、哺乳類での研究が進んで、オートファジーを病気の治療に活かせるのではないかと期待されるようになり、世界中の多くの研究者がオートファジーを研究するようになりました。その原点といえる研究を行ったということで、大隅博士は2016年に医学・生理学賞を受賞しました。

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サイエンスライター。1968年、大阪府生まれ。東京水産大学(現東京海洋大学)卒業後、ライターとなり、最新の研究成果を取材し、科学雑誌を中心に記事を発表している。著書に『がん治療の正しい知識』、『寄生虫の奇妙な世界』、『イヌとネコの体の不思議』、『群れるいきもの』などがある。

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