【ノーベル物理学賞】朝永振一郎先生の研究-量子力学の大問題を「くりこみ」理論で解決

1965年物理学賞 朝永振一郎
ともながしんいちろう
先生(東京教育大学(現筑波大学)教授
※肩書は受賞当時

 1940年代、電子の重さ(質量)を実験的に測定できるのに、非常に小さな素粒子を扱う量子力学の理論で電子の質量を計算すると、どういうわけか無限大という結果が導き出されてしまいました。

 実験結果と矛盾する理論を認めるわけにはいきませんから、この大問題は世界中の物理学者を悩ませました。

 東京文理科大学(その後の東京教育大学、現在の筑波大学)で、自分の研究室で物理学の研究に取り組んでいた朝永振一郎博士にとっても、理論計算で電子が無限大になってしまう問題は解決できないでいましたが、研究室の若い物理学者たちの討論を続けるうちに一つのアイデアに行きつきます。「無限大となった電子の質量の一部を電荷にくりこむことで、計算結果を有限にできる」という考えです。

 すでに考えられていた「非常に小さな粒子はそれぞれが異なる時間を持っている」という理論も応用して、朝永博士は「くりこみ理論」を完成。実験結果と計算の答えが異なる物理学最大の問題を解決しました。

 朝永博士が「くりこみ理論」を完成させたのと同じころ、アメリカのリチャード・ファインマン博士、ジュリアン・シュウィンガー博士も同じような理論を考えついていたことから、朝永博士、ファインマン博士、シュウィンガー博士は1965年にノーベル物理学賞を共同受賞しました。

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サイエンスライター。1968年、大阪府生まれ。東京水産大学(現東京海洋大学)卒業後、ライターとなり、最新の研究成果を取材し、科学雑誌を中心に記事を発表している。著書に『がん治療の正しい知識』、『寄生虫の奇妙な世界』、『イヌとネコの体の不思議』、『群れるいきもの』などがある。

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