砂をかけるのは、イヌは自分を主張、ネコは自分をかくそうとしている-もっと知りたい!イヌネコのふしぎ

イヌは自分を主張している!

 イヌと散歩に出かけると、道端に糞をしたあと、糞の周囲の土をけちらすのをよく見かけます。一見、糞に土をかぶせているようにも見えるため、糞をかくすための行動であるとの説もありますが、イヌの行動をよく観察していると、ただ糞の周囲の土をけちらしているだけで、糞に土をかぶせているわけではないことがわかります。

 では、なぜイヌは糞に土をけちらすのでしょうか。

 その謎を解くカギをにぎるのが、イヌの足の裏、肉球の間にある「趾間腺」
しかんせん
という分泌腺です。趾間腺からは、イヌそれぞれのにおい成分が分泌されます。後ろ足で土をけちらすと、糞の周囲に自分のにおいをつけることができます。

 また、糞自体もにおいを残すのに役立っています。イヌの肛門には「肛門嚢
こうもんのう》」
と呼ばれる器官があって、糞を排泄する際、表面に、そのイヌのにおいがついています。

 こうしてイヌは、糞と土をけちらす行為によって、においを残して自分の存在を主張しているのです。あとからやってきたイヌは、糞とその周囲に残されたにおいから、どのようなイヌが、いつごろにおいをつけたかなどを知ることができると考えられています。

ネコは自分をかくそうとしている!

 ネコはやわらかい砂地を好んで尿や糞をします。このような行動をとるのは、家畜としてのネコの祖先が、北アフリカの乾燥地帯に暮らしていた野生のリビアヤマネコであることと関係していると考えられています。

 そのため家の中に砂を敷き詰めたネコ用のトイレを用意してあげると、決まった場所で尿や糞をするようになるのです。

 ただし、ネコは自分の排泄物(尿や糞)に砂をかけます。その理由は、外敵から身を守るためだと考えられています。というのも、野外に放置していては排泄物が発するにおいによって、外敵に居場所を知られてしまいます。そこで、排泄物に砂をかけてかくすことで、外敵に見つからないようにしているというわけです。

 野生動物だったころの名残がネコに残っているのですが、ヒトに飼われるようになったことで外敵の心配をする必要がなくなったためでしょうか。排泄物に砂をかけないネコもいます。

 くわしい理由は明らかになっていませんが、同じネコでも、コアエリア内では砂をかけるのに、コアエリア以外ではかけないとの研究もあります。

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取材・文

斉藤勝司 著者の記事一覧

サイエンスライター。1968年、大阪府生まれ。東京水産大学(現東京海洋大学)卒業後、ライターとなり、最新の研究成果を取材し、科学雑誌を中心に記事を発表している。著書に『がん治療の正しい知識』、『寄生虫の奇妙な世界』、『イヌとネコの体の不思議』、『群れるいきもの』などがある。

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