ふしぎな錯覚を体験しよう①「カフェウォール錯視」

 『子供の科学』誌で「錯覚道
さっかくどう
」を好評連載中の錯覚道師範・杉原厚吉
すぎはらこうきち
先生
に、さらに詳しくふしぎな錯覚のひみつを紹介してもらおう。

カフェウォール錯視とは?

 下の図のように、黒と白の長方形が水平に交互に並んだ列を、長方形の辺の2分の1だけずらして縦に積み重ねると、列の境界をなす灰色の水平線が、曲がっているように見える

カフェウォール錯視。

 この錯視はカフェウォール錯視
さくし
と呼ばれる。

 水平線が灰色のとき錯視量は大きいが、下の図のように境界の水平線を黒で描いても錯視は起こる。水平線を黒にしたものはミュンスターベルク錯視と呼ばれる。

ミュンスターベルク錯視。

 白と黒の長方形を平行四辺形に置き換えても錯視が起こる(下)。しかも、その錯視量はより大きい。

平行四辺形によるカフェウォール錯視。

 さらに下のように、平行四辺形の向きを縦方向に交互に入れ替えると、錯視量はいっそう大きくなる

交互に向きの入れ替わる平行四辺形によるカフェウォール錯視。

カフェオール錯視の階段は危ない

 下に示したのは、水平垂直の板でできた普通の階段に、カフェウォール錯視図形を貼り付けたところである。その結果、水平のはずの階段のステップが湾曲
わんきょく
して見え、歩きにくい階段になってしまう。

カフェオール階段。タイルを不用意に並べると、歩き難い階段になってしまう。

 平面に描かれたカフェウォール錯視図形では、線が湾曲して見えたが、このように立体に貼ると、線だけでなくて平らな面が湾曲して見える錯視が生じることがある。タイルを不用意に貼るとこのような錯視が生じてしまう危険性があることは、注意すべきであろう。

カフェウォール錯視をつくるポイント

 この錯視図形は、上下に隣り合う白と黒のパターンの幅が2分の1だけずれているとき錯視の効果が大きい。また、曲がっているように見せたい線は、黒で描くより灰色で描くほうが錯視効果が大きくなる。

 白と黒のパターンは、長方形や平行四辺形に限らず、もっと複雑な図形でもよい。また、横方向に並べたパターンの幅が徐々に変わっていってもよい。さらに、水平に並べるだけでなく、同心円に並べるなどのバリエーションも楽しむことができるだろう。

古今東西の錯視を集めた図鑑も!

 今回の記事の内容は、書籍『新 錯視図鑑』をもとに構成している。杉原先生が「面白い!」と思う錯視を集め、錯視が起きるしくみから、それが身のまわりにどのように現れているか、同じような錯視図形を自分でもつくろうとしたらどんなことに注意したらよいかまで紹介した1冊だ。世界錯覚コンテストで優勝した杉原先生自身がつくった錯視も登場するよ。

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杉原厚吉 著者の記事一覧

1971 年、東京大学工学部計数工学科卒業、1973 年同大学院修士課程修了。東京大学工学部助手、電子技術総合研究所主任研究官、名古屋大学助教授、東京大学教授などを経て、現在、明治大学研究・知財戦略機構研究特別教授。工学博士。東京大学名誉教授。専門は数理工学、コンピュータビジョン、コンピュータグラフィックス。

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