【ヘルドクターくられ先生のあやしい科学を疑え! vol.4】科学を勉強するのはどうして?  つづき【子供の科学12月号】

 『子供の科学2023年12月号』の「ヘルドクターくられ先生のあやしい科学を疑え!」は読んでくれたかな? 本誌では収まりきらなかった、くられ先生の頭の中の徒然考えているお話を、コカネット限定で配信中! 本誌の連載とあわせて楽しんでね。

イラスト/obak(@oobakk

正しい科学は正しい知識がないと広まらない

 じゃあ正しいって何?

 正しい科学は広めにくいという話は結構あちこちでしてきました。

 地球は平面である……さらには平たい地球を中心に太陽や天体が回っている……と信じている人は流石に少ないといえますね。

 いや、地球は平面です! こんな常識すら知らないなんて! って憤慨して見てる人が読者にいないことを祈るばかりですが、これは日本だからまだそうなのであって、アメリカでは地球平面論者の謎のカルトまであったりするので冗談ですまないまであったりします。「科学が進んでいる印象の強いアメリカ」って人も多いかと思いますが、社会保障が微妙で広い国ではいろいろ日本では考えられない問題があるようで……。

 ともあれ、でもこの常識、当たり前ですが、その目で見て確かめた人は人類でもごく少数です。

 地球を外から見るってこれつまり宇宙旅行、そうそう普通の人は行けるものじゃありません。当然映像でみたとか、飛行機から見た感じでも球体っぽいとかはありますが、その目でみて確信することってすごく難しいですよね。地球は人間個人からすると大きすぎるからです。確かに水平線や地平線はまるっっこい感じはしますが、球体であるとは言い難いです。

 地球が球体で全周は4万6000kmと、紀元前三世紀もの昔に計算だけでたどり着いた人がいます。エジプトで活躍したギリシャ人の学者です。彼は2か所で平たい板の上に棒をたてて、そこに落ちる影から数学で地球の外周まで計算で導き出した偉人として教科書に載っています。

 現在の科学からすると、この地球のサイズは少し間違っていますが、紀元前300年という相当昔の人でさえ、理論の力だけで地球が球体であり、なおかつ近い値まで出していたというのは恐るべきことです。

 まぁ地球が球体であるというのは結局、世界1周旅行を成しえた人が出てハッキリしたわけですが……。とはいえ、地球が平面だと信じる人は、あまりいません。この常識の感覚、すごい大事なので、では事柄を変えて話を進めてみましょう。

今やすべての分野を1人では理解できない

 現在は科学が発展し、細分化も激しく、もはや1人の人間が多分野の専門を抱えることは不可能となっています。ダヴィンチの時代は天才が1人で多くの分野を抱え込むことができましたが、現在はもはや人間が覚えられる限界を遙かに超えた多くの積み重ねの上になりたっているのが現在の科学です。

 そんな科学の巨城の上に暮らしているのが我々です。例えば、身の回りのお菓子。そのお菓子がどうやってつくられているかもわかりませんし、その梱包でさえどういう構造なのか大半の人が知りません。お菓子のフィルムはただの1種類のプラスチックではなく、だいたい数層もの、一定のガスだけ通すとか、水分は一方向しか通さないだったりとか、特殊な接着面だったりとか、そういった数層で構成されています。

 あらゆる科学の情報がある世界では、どの話が科学の常識なのか非常識なのかを見分けることが難しいという問題が生まれてきます。先のお菓子の梱包材が1種類のプラスチックのフィルムではなく数層になっているというのも、「信じられないー」、「嘘にきまってる」といってしまえばそう思うこともできるわけです。

 こんな科学の世界だからこそ、何を信じればいいのかわからなくなりますね。

 例えば、最近、とある食品添加物(人工甘味料のアスパルテーム)に発がん性があることをWHOが発表しましたよ……みたいなニュースが流れました。このニュースに対して、AさんはYouTubeで動画で配信、BさんはTwitterで鼻で笑うみたいな発信をしているのを見かけた……とします。

Aさん「つまりこの食品添加物は発がん性がある‼ 入っている食品はすべて食べない方がよい!」と動画で熱心な顔で語りかけています。

Bさん「この発がん性は発表されたデータシートみたけど焼き魚よりさらに低い漬物レベルの扱いだしそもそも大量に摂るわけでなし、発がん性はシフト勤務以下……こんな話、気にしなくていいよ(笑)」と気にもとめていません。

 さて、この2人の意見をみて、どちらに共感するでしょう?

 Aさんの意見は白黒ハッキリしたい人からすると気持ちよくて、スッキリします。しかも熱く語ってます。

 Bさんの意見は、確かにその通りだなって思う人と、ホントに大丈夫なの? って思う人もいるかもしれません。それでも多くの人は、まぁ気にしなくていい話なんだな……って思う程度のことが多いでしょう。

 多くの人はまぁ言うほどヤバくはないんだろうけど、なんとかくこの添加物入ってるっていう食べ物は避けておくか……程度か、それも気がつけば忘れてしまうものでしょう。逆にこの話を聞いて、じゃあ焼き魚も発がん性があるのか!! じゃゃあ魚はもう食べないようにしよう……え? 漬物もワラビも発がん性があるのか……怖い! って思う人もいるでしょう。

 シロクロはっきりしていないとスッキリしない。

 逆にこれをゼロから勉強して理解してスッキリするのは本当に大変なのかは先ほど話した通り、それこそがん研究の専門家にならないとすべては理解するのは困難ですし、それこそガン研究だけでなく、免疫学から毒性学まで幅広く学ばなければちゃんと説明できるかと言われれば難しいです。自分でも100%誰かのすべての質問に対して答えられるかといわれればNOです。

中学までの理科の知識って、大事だよ

 では何を信じれていけばいいのか?

 SNSがここまで生活に根ざしたものになる前の世界では、身の回りの「ちょっと科学に詳しい人」がこの立ち位置にいて、ワクチン打つとスマホの電波を受信してガンになるとか、地球は平面だとか、突拍子もない話は、ゲラゲラ笑い飛ばして話題にもならなかったのですが、最近はあまりにも複雑な情報が多くなり、ぱっと見本当なのか嘘なのかを専門家でさえ迷う話が出てくるご時世になっているので、専門家が迷うくらいですから、科学にそれほど詳しくない人が迷うのも当然なのです。

 ワクチンの普及により多少はマシになったものの、今だ社会全体に影を落とすコロナ禍も、そのパンデミックの初期の先行きの見えない得もいえない不安と恐怖を感じた記憶がまだ新しい人も多いかと思います。

 こうした不安に晒されると人は、不安から逃れるために情報を集めようとしたり、行動したりします。それでもともと理科をそれほど勉強したことない人が、急に疫病という難しい話を調べようとネットをさまようと、まんまとニセ科学のインチキニュースにハマってしまうという恐ろしいことが起こります。

 SNSの隆盛とコロナ禍で多くの人が孤独になって不安に駆られて情報を求めだしたというのが、そうした危ないカルト集団からみると、まさにニセ科学の布教時となり、大成功を収めてしまいました。

 人の不安に対して応えてくれるのは科学ではなくニセ科学であることが多いのです。ニセ科学はわかりやすく(中身がないから)シロクロハッキリしていて、気持ちがよい。一方現実の科学は複雑で、理解しにくく、なんだか偉そうです(あくまでそうみえるだけなんだけど)。

 この「お気持ち」におもねってしまうと、現実を見誤って、食品添加物は悪だからオーガニックが最高! 生き物を殺すのは悪いことだからビーガンになる! ウイルスは茶番、ワクチンは悪! みたいなとんでもない結論にたどり着いて、そこが居心地がよいとなると、今度はそのインチキを守る先兵にされてしまう……という悪循環になるわけです。

 たしかに何か1つを悪いものだと信じて忌避するほうが心情的には楽です。「〜は危ない」といわれたとき人は本能的にその情報に食いつくものだから、リスクは確かにあるけど誤差みたいなものなので、自分で判断して付き合っていれば問題はないよ……という、どっちにもつかない意見を天秤にかけてしまう気持ちもわからないでもないです。

 現に、Twitter(Xとかいう名前になってますがw)などのSNSではほぼ毎日のように、話題のトピックに「コロナ後遺症は実はワクチンの後遺症」とか「ワクチンを打った人から毒がでてる」とか、そういった類いの、デマがこれでもかというくらいに流れているのを目にしている人も多いと思います。

 例えばコロナ後遺症はワクチンの後遺症だという反ワク系のヤバいツイートは、医学、生理学に携わる人からすれば地面を叩いて笑う程度のものなんですが、アメリカではそうした反科学を標榜してカルト宗教のように集会を開いてお金を集める、筋金入りの悪い組織が堂々と存在していて、そうした組織が運営するフェイクニュースサイトまであって、日々、あるはずのないことを真実のようにニュースとして流しています。

 そうした海外のフェイクニュースを引用元にさらにどこかの誰かがねつ造したデータで武装したニセ科学はもはや素人には判断するのはかなり難しいものとなります。

 専門家だって、きちんと否定するには、運営元がデマの発信源そのものであることを調べたり、論文は有名な論文の名前に似せて作ったねつ造で、元のデータは存在せず、このグラフは改変されててみたいに専門家が全部チェックして否定しないといけない。嘘はつくのは秒でも検証には専門家が膨大な時間をかけないといけないのです。

 もちろん、科学者はそういった詐欺を見抜く専門家ではないので、詐欺や嘘情報はただただデタラメをばらまけばいいだけなので、この否定合戦は、感情論に流れやすい人ほど、「世界は陰謀に満ちている」って、よくわからんカルト思想のほうが強くなってしまうのです。

 こう考えると、情報化社会、SNSという誰ともすぐに繋がってしまうネット社会の危険な側面がみえてくるわけですが(じゃあネットは禁止ね! とかいうのはシロクロつけたい論だからダメですね(笑))

 ではどうしたらいいのでしょう?? 

 これは、最初にその人の中にある教育がある程度、どのくらい根付いているかという問題にまで関わってくる。

 例えば、「地球は平面である」と信じる人は、反ワクチン論者の中にもさすがに少ないといえます。

 結局大事なのは、中学生くらいの理科の理解、これは中学生レベルなどとバカにした表現でなくて、中学生の理科の範囲ってわりと丁度良くて、この基準から逸脱したようなことは、そうそう世界では起こらない。

 ものは高いところから低いところに落ちる、それくらいの常識を常識として持っていれば、その世界から見れる科学というのは、逸脱した意味不明なものではないのです。地に足を付けてしっかり歩く……それが今の時代一番難しいのです……。

子供の科学2023年12月号

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くられ先生 著者の記事一覧

自称、不良科学者。サイエンス作家、科学監修、大学講師と多岐にわたって活躍。YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」での配信や、『アリエナイ理科ノ大事典』シリーズ(三才ブックス)、『アリエナクナイ科学ノ教科書 ~空想設定を読み解く31講~』(ソシム)などの著書も多数。

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