将来はどんな仕事が残り、増えていく? -サイエンス“手に職”図鑑

最終的な判断は人間がやる!

 AIが活躍することになっても、残る仕事はあるといいました。なぜかというと、AIは人間のように「こうしたい」「こうしよう」という意志は持っていないからです。そのため、AIは指示待ちでしか動くことができないのです。自分でこうしようと思って動くことは、かなり人間に近くないとできないことです。そのため、AIが発達してからもやってほしいことを命令するのは人間で、最終的な判断も人間がやっていくでしょう。

 例えば、農業をAIがかわってやるようになっても、どういうものを作るか、どういったふうに仕事を広げていくかは人が決めます。ほかにも、お店の店長などのマネージメントの仕事もそうです。さまざまな決定権を持つマネージャーの仕事は人間だけのもの。店長は人間がやって、ほかの作業は人ではなく、機械化するようなことが起こるかもしれません。

AI関係の“つなげる仕事”に注目!!

 AIが活躍するようになったときに、新しく生まれる仕事もあります。AIを開発する技術的な仕事はすでに生まれていますが、この先はそのAIの技術を実際の仕事の中でどう活用するかを考えられる人が必要。考えたものを会社に提案し、AIの技術と会社をつないでいくのです。

 この仕事は会社の仕事の内容を見て、それに合うAIの技術を考え、実際にAIを開発する人へ依頼をするというものです。この仕事は理系の人ではなく、文系の人に向いているといわれています。AIが主役といっても、文系の人が活躍できる場面はたくさんありそうです。

体を使う、相談にのる そんな仕事が人気に!?

 AIにまったく関係ない仕事も増えると考えられます。1つは手足や体を使う仕事です。例えば、スポーツのインストラクター。教室で大勢の人を対象にするのではなく「パーソナルトレーナー」といって、個人に指導をするインストラクターは増えています。

 ほかには、人にアドバイスをするような仕事も人気が出るかもしれません。人の生活に関わるような相談、例えば、恋の相談にのる「恋愛コンサルタント」といった仕事が増えてくるかもしれません。

将来のためにやっておくとよいことは?

 AIには意志がないため、指示がないと動けないといいました。それと同じように、人間のように困るという感覚もないため、AIには「問題を発見すること」ができません。つまり、今ある状況から「もっとこうするとよいだろう」などと、問題を発見して解決できるのは人間だけなのです。

 そのため、今からやっておきたいことは、誰かに何かをいわれてやるのではなく、興味のあることを自分で見つけ、主体的にそれについて調べてみることです。具体的にいうと「夏休みの自由研究」。これです! 自分の頭で考え、「こうしたらおもしろいだろう」という発想力を今から鍛えておきましょう。

 そうすることで、将来、いわれたことしかできない機械のような人間になることはありません。いわれたことだけしかできないということは、AIにとってかわられてしまうということ。指示待ち人間にならない発想力のある大人をめざしましょう。

アフターコロナはどうなるの?

 コロナ感染拡大にともなって、おうちにいながら仕事をする「リモートワーク」ができる会社が増えました。コロナ収束後はリモートワークと、今までのように出社して働くこととをうまく使い分けるのが当たり前になると思います。

 その結果、重要になってくるのがマネージメント能力です。これまでの日本企業は労働者をまず集めて、チームとして仕事をするという形をとっていました。これだと、上司にマネージメント能力がなくても仕事を進めることができます。しかし、リモートワークが増えると、誰が何をやるかという仕事の割り振りをきっちり決めなくてはならないのです。

 また、IT・AI・ロボット等に関わる仕事は以前にも増して求められるでしょう。IT系はコロナ危機下でも強かったことから、元々あった世の中のIT化、ロボット化の流れがさらに進みそうです。

取材協力

井上智洋 著者の記事一覧

駒澤大学経済学部准教授。慶応義塾大学環境情報学部卒業。経済学博士。専門はマクロ経済学、貨幣経済理論、成長理論。人工知能と経済学の関係を研究するパイオニアとして活躍している。著書に『人工知能と経済の未来』(文春新書)『ヘリコプターマネー』(日本経済新聞出版社)などがある。

(文/井上 幸 イラスト/浅野知子)

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