《子供の科学 深ボリ講座》気を付けよう! 山菜や野菜と間違えやすい有毒植物

「子供の科学」2023年6月号の記事「近くにいる! 毒のある生き物」をさらに深ボリしていくこのコーナー。今回は、本誌で紹介しきれなかった、毒のある植物について紹介します。食べられるものと姿が似ている種類は要注意!

意外に怖い園芸植物

 『子供の科学』2023年6月号の特集「近くにいる! 毒のある生き物」では、海や野山、街中など、身近なところにいる有毒な生物を紹介しています。そうした身近な有毒生物の中でも、意外に見落とされがちなのが園芸植物です。もちろん、全ての園芸植物に毒があるわけではありませんが、たとえば、スイセン、アヤメ、クレマチス、クリスマスローズ、チョウセンアサガオ、アジサイなど、庭や校庭、公園で見かける園芸植物には毒が含まれています。

クレマチスの花
©photolibrary

 さて、園芸植物を含めて、有毒な植物による食中毒の事故は、毎年のように発生しています。それらの食中毒の多くは、山菜や野菜と間違えて、有毒な植物を食べてしまうことで起こります。「そんなことってあるのかな?」と疑問に思う人もいるかもしれませんが、外見がとても似ていて、間違えてしまうことが実際にあるのです。それでは具体的な例を見てみましょう。

 厚生労働省の集計を見てみると、有毒な山菜と植物による中毒事故は、ここ10年では213件も発生し、患者数は合計821人にもなります。その大部分は、山菜や野菜と間違えて、有毒植物を食べてしまった事故です。とても悲しいことに、それらの中毒事故によって17名が死亡しています。そして、そのうち13名がイヌサフランの誤食で命を落としているのです。イヌサフランとは、いったいどのような植物なのでしょうか。

美しい花を咲かせるイヌサフラン

 イヌサフランはイヌサフラン科の多年草で、原産地はヨーロッパから北アフリカとされます。日本には明治時代に持ち込まれ、園芸植物として観賞用に各地に植えられています。球根植物で、ホームセンターなどでも球根が販売されています。

 土に植えられたイヌサフランは、秋になると、淡い紅紫色の花を咲かせます。ところが、このとき、葉がありません。球根から花茎
かけい
を伸ばして、その先に花がついているのです。球根は土の中で冬を越します。春先には葉が目立つようになりますが、夏には全ての葉が枯れてしまいます。そして秋になると、再び花が咲きます。

イヌサフランの花 
© 保谷彰彦

 さて、イヌサフランは草全体が有毒ですが、食中毒の原因になるのは、おもに葉と球根です。春に出てくる葉は、山菜として人気のあるギョウジャニンニクの葉やギボウシの葉によく似ています。そのため、イヌサフランを山菜と間違えてしまうのです。また、イヌサフランの球根をタマネギやジャガイモと間違える事故も、これまでに起きています。秋に、地上に葉や花がなく球根だけだと間違えやすいのです。

イヌサフランの葉
© 保谷彰彦
ギョウジャニンニクの葉
© 保谷彰彦

猛毒のコルヒチン

 イヌサフランの毒成分は、おもにコルヒチンという猛毒です。コルヒチンには細胞の働きを妨げる作用があります。誤って食べてしまうと、まず下痢
げり
嘔吐
おうと
といった症状が現れます。これはコルヒチンが腸の細胞に影響して、消化や吸収ができなくなるために生じます。さらに、ひどい場合には、呼吸困難などを起こし、死に至ることがあります。

 イヌサフランに含まれるコルヒチンは猛毒ですが、じつは乾燥させた球根や種子に含まれるコルヒチンは、古くから痛風の薬として使われてきました。ただし、毒性が強いので、専門医による処方が必要です。

 現在では、コルヒチンをもとにして、循環器や腎臓の病気、がんなどの治療薬として開発が進められいます。また作物の品種改良では、花を大きくする、食用部分を大きくする、タネなしスイカをつくるといった場合に、コルヒチンが利用されることがあります。「毒変じて薬となる」といわれるように、使い方次第で毒にも薬にもなるわけです。

間違えると危ない植物いろいろ

 イヌサフランだけでなく、注意が必要な植物は多く知られています。たとえば、グロリオサという園芸植物には、イヌサフランと同じくコルヒチンが含まれています。コルヒチンは草全体に含まれますが、とくに地下部(塊茎
かいけい
)に多く含まれます。やっかいなことに、この塊茎が、食用にするヤマノイモとよく似ています。そのため、誤食による中毒事故が起きていて、これまでに死亡事故も発生しています。ちなみに、ヤマノイモはすりおろすと粘り気がでますが、グロリオサは粘らないことが見わけるポイントの1つです。

 そのほかにも、有毒なスイセンやヒガンバナの葉を、野菜のニラの葉と、間違えて食べてしまうという事故も多発しています。有毒なフクジュソウの芽を山菜のフキノトウ(フキの芽)と間違える事故も起きています。

フクジュソウの芽
©photolibrary
フキノトウの芽
©photolibrary

 中毒事故を防ぐためにはどうしたらよいのでしょうか? まずは、観賞用の植物を植える場所と、野菜を育てる場所は別々にして、同じ場所に植えないようにすることが大事です。それぞれの植物にプレートをつけるのもよいでしょう。そして、食用であると判断できない植物は、採ったり、食べたりしないように、十分に気をつけましょう。

保谷彰彦 著者の記事一覧

文筆家、植物学者。博士(学術)。主な著書は『ワザあり! 雑草の生き残り大作戦』(誠文堂新光社)、『生きもの毛事典』(文一総合出版)、『ヤバすぎ!!! 有毒植物・危険植物図鑑』『有毒! 注意! 危険植物大図鑑』(ともに、あかね書房)、『タンポポハンドブック』(文一総合出版)、『わたしのタンポポ研究』(さ・え・ら書房)、『身近な草花「雑草」のヒミツ』(誠文堂新光社)など。中学校教科書「新しい国語1」(東京書籍)に「私のタンポポ研究」掲載中。 http://www.hoyatanpopo.com/

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