《子供の科学 深ボリ講座》東京学芸大学附属高校クイズ研究部 競技クイズでの必勝法とは⁉

「子供の科学」2023年5月号の「教えてセンパイ!」で取材したのは、東京学芸大学附属高校クイズ研究部。4年前に部に昇格し、現在、男女合わせて11名が在籍。根っからのクイズ好きが集まり、“競技クイズ”と呼ばれるジャンルで強くなろうと、日々、切磋琢磨しています。みんな普段から数々のクイズ大会に出場していますが、実際、勝つためにはどんな力が必要なのでしょうか? 教えてもらいました!

※生徒さんの学年は取材時のものです。

早押しの競技クイズで勝つには、スピードと推測する力が大事!

部員全員で早押しクイズ。始まる前にみんなが手持ちのボタンを押して、きちんと鳴るかをチェックします。

 クイズ研究会のメンバーが取り組む“競技クイズ”とは、その名の通り、他人と解答権を競い合って解答する、競技としてのクイズのこと。現在はテレビのクイズバラエティが花盛りで、設問自体にも映像が多用されることがほとんどですが、それとは異なり、競技クイズで出される問題は基本、読み上げだけというシンプルさ! 耳で聞き、とにかく早くボタンを押して解答するという、これぞ元祖なクイズスタイルです。

 さて、勝つために大事なことは何か? 部員のみんなによると「聞かれている内容をいち早く正しく推測し、解答に結びつけられるか」だそう。豊富な知識があるのは前提として、スピードと推測力がとにかくモノをいうのが、クイズの世界。たった0.01秒の早押しの差が勝敗を分けるといわれているそうですよ。

解答権をゲット! ただ、もちろん間違えてしまうことも……。悔しそうな表情!

みんなが注意して聞いているポイントは…

 ただ、せっかく解答権を得ても、まだ問題は出だしで、答えは複数考えられる状況が多いですよね。では、どのようなポイントから聞かれている問題を推測し、正解を導くのでしょうか? 一つの判断材料として、競技クイズの世界では、問題を読み上げる「読み手」が、どの言葉を強調しているかが推測のヒントになるといいます。

 例えば、「日本で一番高い山といえば〜」から問題が始まるとします。この短いセンテンスから、推測される正解は下記のようになります。

【1】読み手が「一番」を強調して、問題を読んでいる場合。正解は日本で二番目に高い山の「北岳」だと考えられます。(問題:日本で一番高い山といえば富士山ですが、では、2番目に高い山は?)

【2】読み手が「日本で」を強調して、問題を読んでいる場合。正解は世界で一番高い山の「エベレスト」だと考えられます。(問題:日本で一番高い山といえば富士山ですが、では、世界で一番高い山は?)

【3】読み手が「一番高い山」を強調して、問題を読んでいる場合。正解は日本で一番長い川の「信濃川」だと考えられます。(問題:日本で一番高い山といえば富士山ですが、では、日本で一番長い川は?)

【4】読み手がどこも強調せずにフラットに読む場合「…富士山、二番目に高い山といえば…」のように文章が続くでしょう。後半の「二番目に」が強調される場合、三番目に高い山の「奥穂高岳」や「間ノ岳」(同じ標高)が正解である可能性が高まります。(問題:日本で一番高い山といえば富士山、二番目に高い山といえば北岳。では、日本で三番目に高い山は?)

 今回の取材で問題を読んでくれた部員の久保川 唯さんは、まるでアナウンサーのようななめらかな読み上げで、解答に合わせて臨機応変に強調部分を変更。取材班はその技術に驚きました。「そうしないと競技クイズの世界ではクレームがついちゃうんで」と笑いますが、これってかなり熟練の技ですよね。

百人一首をたしなんでいたという久保川さん。アナウンサーのようにきれいな声とアクセントで、読み上げが部内一上手といわれています。

知識の積み上げにコストをいとわない!

問題づくりにはあらゆることに対するアンテナを張ることが必要!

 部員の中には設問づくりを担当するメンバーも。問題をつくる工程でいろいろなジャンルにアンテナを貼り、背景を含めて調べてアウトプットするので、知識が蓄積され、解答する力も自然とつくみたい。顧問の吉岡雄一先生曰く「そもそもこの部の生徒は知識を得るためのコストをいとわない、それを苦にしない子が多いと思います。例えば、Wikipediaで何か1つのことを調べると関連項目のリンクが貼られていますが、あれをどんどんクリックして読んじゃうタイプです。そういう部員が多いんじゃないかな」

ノートパソコンを見ている人たち

中程度の精度で自動的に生成された説明
設問の合間には、回答のしかたや改善点をお互いに意見し合う。

 ただ、単なる物知りが勝てるかというと、決してそうではないことは、部員たちを見ていて、実感しているそう。「私自身、雑学を得るのが好きですが、早押しクイズでは絶対に勝てません。やはり問題を推測する力が重要だと感じます。みんな次の言葉を予測しながら、問題を聞いているのがすごいですね」(吉岡先生)。

 いかがでしたか? クイズは本やテレビなどで触れることが多いので、比較的馴染みのある世界であるものの、初めて知ったこともたくさんあり、取材班も勉強になりました。みんなが見せてくれた部内対抗の早押しクイズは、早いと2〜5秒くらいでボタンを押し、正解を出していて、その姿はまるでアスリートのよう! 格好よかったです。

 今回、取材した東京学芸大学附属高校クイズ研究部のことは、本誌連載(2023年3月号掲載)で取り上げているので、こちらもぜひ、読んでみてくださいね。今後も「教えてセンパイ!」(奇数月掲載)では、自分の興味をとことん突き詰められる学校や部活動を紹介していきます。ぜひ、楽しみにしていてください!

撮影/川上秋レミイ

取材・文

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フリーの編集・ライター。育児、健康、暮らし、ファッションなど幅広い分野で活動。「子供の科学」では、連載「教えてセンパイ!」を担当。

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