《コカデミア カガクノ英語》 第5回 フラミンゴもコスメでモテモテ?

英語の科学トピックを読み解きながら、科学と英語の知識を学ぶ一挙両得の新コーナーへようこそ。背景知識とともに英単語を知ることで、言葉の深みを味わおう!

今回のトピック

フラミンゴが羽毛の色をピンクに染める技

 フラミンゴといえば、鮮やかなピンク色の羽毛が特徴的です。今回は、そのピンク色を保つためのある行動について注目した論文を紹介しましょう。このニュースは、「コカトピ」2022年1月号でも掲載しました。

 オオフラミンゴの羽毛はピンク色です。この色はエビや藻類などのエサに含まれるカロテノイド類の色素によるもの。特に首の羽毛が濃いピンク色だと、餌を十分とれて健康というアピールになり、異性にモテると考えられています。羽毛自体がピンク色ですが、首の羽毛には、尾の近くにある尾腺という部位から出るカロテノイドを含む分泌液が念入りに塗られます。
 ラプラタ大学(アルゼンチン)などの研究グループは、太陽光に含まれる紫外線がカロテノイドを分解してしまうため、尾腺の分泌液を何度も塗り直さないと、羽毛が色あせてしまうのではないかと予想。そこで、首の部分の羽毛を集め、実験を行いました。羽毛の半数は屋根の上で太陽光に当て、残りの半数は暗室に置きました。40日後、羽毛の色を分析したところ、予想は的中。太陽光に当てた羽毛は、暗室に置いた羽毛よりも色が薄くなっていたのです。このとき、尾腺の分泌液がたっぷりと塗られた羽毛は、少なく塗られた羽毛よりも色あせしにくいことも判明しました。
 オオフラミンゴは尾腺の分泌液で化粧をして、異性にアピールしているというわけです。

ここに注目① pigment

 この論文には、「羽毛に色素を含む分泌液を塗る」ということを示す文章がいくつも出てきます。そのうちの1つが以下の文章です。

The red coloration in neck and head feathers of greater flamingos results from the application by the birds themselves of uropygial secretions pigmented with carotenoids.

 ざっくりと訳すと、「オオフラミンゴの首と頭の羽毛がピンク色(赤色)なのは、カロテノイドで着色された(pigmented with carotenoids)尾腺の分泌液(uropygial secretions)を鳥自身が塗っているからです」となります。

 オオフラミンゴの羽毛には、もともとカロテノイド(carotenoid)という色素が含まれるため濃いピンク色(赤色)です。カロテノイド類は、おもに明るい黄色、オレンジ色、赤色などになる色素です。カロテノイド類には多くの種類がありますが、フラミンゴの羽毛やその他の組織には、6種類ものカロテノイドが存在することが知られています。

 色を意味する英語「color」はそのまま日本語の「カラー」という言葉になっていて馴染みがありますが、カロテノイドなどの色素を意味する言葉は「pigment」といいます。「pigmentation」 には「色素による着色」、「pigmentize」 には「着色する」といった意味があります。colorと比べて耳馴染みのない言葉ですが、動物や植物など、さまざまな生き物に見られる色には pigment が関わっているものが多いので、生物に興味がある人にはぜひ覚えておいてほしい単語です。

ここに注目② cosmeticsとcourtship displays

 さて、この記事のもとになった論文のタイトルは「The color of greater flamingo feathers fades when no cosmetics are applied」です。直訳すると、「オオフラミンゴ(greater flamingo)の羽毛(feathers)の色は、化粧をしないと(when no cosmetics are applied)薄くなる」となります。

 オオフラミンゴの羽毛は、紫外線が当たると色あせてしまう。そこで、羽毛にカロテノイドを含む分泌液を塗ることで濃いピンク色を保っているわけですが、そうやって羽毛に分泌液を塗ることを、この論文のタイトルでは「cosmetics」と表現しています。

 cosmeticには「化粧用の、美容の」あるいは「化粧品」といった意味があり、私たちの生活でも「コスメ」という言葉はよく使われています。今回のオオフラミンゴの例のように、鳥が分泌液で羽毛の色を変えるときにも使えるんですね。

 ところで、オオフラミンゴが化粧をするのは、首の羽毛が鮮やかなピンク色だとパートナーにモテるからだと考えられています。羽毛を赤く保つ時期については以下の文章を読んでみましょう。

Courtship displays extend from October to May.

 直訳すると「求愛ディスプレイ(Courtship displays)は10月から5月まで続きます」となります。これは地中海に棲むオオフラミンゴについての説明で、求愛ディスプレイの期間がずいぶん長いようですが、その間は、羽毛が濃いピンク色に保たれるわけです。

 courtship displays は、生物学で使われる用語で「求愛ディスプレイ」のことです。courtshipは「求愛」のこと。displayには「見せること、展示、陳列」といった意味がありますが、生物学では、ある特定の姿勢を取ったり、体の色や模様を見せたりする行動を指すことが多く、そのまま「ディスプレイ」と訳されます。

 オオフラミンゴが紫外線で色あせた羽毛にカルテノイドを塗るのは、まさしく化粧のようで、cosmeticと表現するのにピッタリの行動ですね。

 

 

参考論文 
タイトル
The color of greater flamingo feathers fades when no cosmetics are applied
著者
Chiale M.C. et al.
論文情報
Ecology and Evolution (2021) 11: 13773.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ece3.8041


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文筆家。博士(学術)。主な著書は『生きもの毛事典』(文一総合出版)、『ヤバすぎ!!! 有毒植物・危険植物図鑑』『有毒! 注意! 危険植物大図鑑』(ともに、あかね書房)、『タンポポハンドブック』(文一総合出版)、『わたしのタンポポ研究』(さ・え・ら書房)、『身近な草花「雑草」のヒミツ』(誠文堂新光社)など。中学校教科書「新しい国語1」(東京書籍)に「私のタンポポ研究」掲載中。 http://www.hoyatanpopo.com/

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