《子供の科学深ボリ講座》肥料だけじゃない! 尿素がつかわれている物たち

『子供の科学』2022年8月号の特集「身のまわりの元素調査隊」では、窒素(N)を含む尿素を肥料として与えて、植物の成長と元素について調べました。実は尿素は、肥料以外にもハンドクリームや化粧水など、身近なものに幅広く使われています。ここでは、その尿素について深掘りしていきましょう。

尿素の結晶をつくろう!

 「身のまわりの元素調査隊」では、塩やミョウバンの結晶を観察しました。これらと同様に、尿素をとかしたお湯を蒸発させると、尿素の結晶を観察することができます。どんな形の結晶ができるか試してみましょう。

用意するもの

・尿素:20g
・ぬるま湯:50mL
・液体のり(原料がPVAのもの)
・食器用洗剤
・モール
・プラカップ
・計量カップ

つくり方

① 半分に切ったモールを、まん中で交差させてねじる。

② 計量カップにぬるま湯と尿素を入れ、よく溶かして尿素溶液をつくる。ここに液体のりと食器用洗剤を2~3滴ずつ入れてよく混ぜる。

③ プラカップに②を高さ8mmくらい入れて①を立て、風通しがよく湿気の少ない場所に置いて、結晶ができるようすを数時間おきに観察しよう。

④ 数日で尿素の結晶が成長して、まるで花やカリフラワーのようになる。

 尿素の結晶ができるようすを観察すると、針のような結晶がモールのてっぺんからできはじめ、そこから木の枝が広がるように成長するのが見られたのではないでしょうか。これは、尿素溶液が毛管現象によってモールに吸い上げられ、モールのてっぺんで水分が蒸発して、溶けていた尿素が結晶化するためです。

液体のり(PVA)や食器用洗剤を入れるわけ

 尿素の結晶をつくるとき、液体のりや食器用洗剤を入れるのはなぜでしょうか? 尿素の結晶はとてももろいため、液体のりを入れることで、できた結晶をこわれにくくしています。ここでは、原料がPVA(ポリビニルアルコール)の液体のりを使いましたが、PVAC(ポリ酢酸ビニル)が原料の木工用ボンドでもできます。一方の食器用洗剤には、界面活性剤が入っていて、水の表面張力を弱める働きがあります。洗剤をまぜることで、尿素溶液がモールにしみこみやすくなります。

 尿素の結晶をつくる実験を、次の4つの条件で試してみて、結晶のでき方を比べてみてもよいでしょう。

1:尿素だけを溶かしたとき(尿素溶液)
2:液体のりを尿素溶液に入れたとき
3:食器用洗剤を尿素溶液に入れたとき
4:液体のりと食器用洗剤を尿素溶液に入れたとき

また、入れる液体のりや洗剤の量を変えるとどうなるでしょうか?

顕微鏡で観察しよう!

 尿素の結晶は、「針状結晶」とよばれる細い針のような形をしています。本誌18ページで塩の結晶を観察したように、虫めがねとスマートフォンで尿素の結晶を撮影したり、顕微鏡で結晶のできるようすを観察してみましょう。

虫めがねとスマートフォンで撮影した尿素の結晶。
液体のりと食器用洗剤を混ぜた尿素溶液を、スライドガラスに1滴たらし、尿素の結晶ができる様子を、倍率100倍の顕微鏡とスマートフォンのタイムラプス機能を使って録画。

身近にある尿素

 尿素は、(NH2)2COという化学式で表され、窒素(N)、水素(H)、炭素(C)、酸素(O)からできています。尿素という名の通り、わたしたちの尿―おしっこには尿素が含まれています。この尿素は、体内でタンパク質が分解されてできたアンモニア(NH3)が、肝臓の尿素回路(オルニチン回路)で尿素に変わったもので、有毒のアンモニアを無毒な尿素に変え、腎臓を経ておしっことして排出しています。尿素にはにおいはありませんが、おしっこが体の外に出ると、尿素が細菌によってアンモニアに分解され、独特のにおいを放つようになります。

 尿素の成分の約46%は窒素で、窒素肥料の中で窒素がいちばん多く含まれ、化学肥料の中でいちばん多く生産されています。しかし、植物は尿素のままでは根から吸収できず、土の中で微生物によって尿素がアンモニアや硝酸に分解されてから吸収されます。このとき、土がアルカリ性だとアンモニアが気体になりやすく、植物の根や葉を傷めたりするほか、おしっこと同様に独特のにおいを出します。

 肥料に使われる尿素は、もちろんおしっこからできているわけではありません。工場でアンモニアと二酸化炭素から合成されています。そのもとになるアンモニアは、基本的に、本誌14ページで紹介したハーバーとボッシュが発明した方法(ハーバー・ボッシュ法)によってつくられ、世界で生産されるアンモニアの約半分が尿素として使われています。

 初めに説明した通り、尿素はハンドクリームなどによく含まれ、皮ふの保水・保湿効果を高める働きをしています。これは、尿素の水になじみやすい性質を利用したものです。尿素分子は、電荷のかたよりのある極性分子で、水素原子を含む極性分子は、プラスの電荷を帯びた水素原子が、他の分子のマイナスの電荷を帯びた原子とたがいに引き合う性質があります。これを水素結合といいます。尿素分子には、4つの水素原子と1つの酸素原子が、それぞれ水分子の酸素原子や水素原子と水素結合するため、水分子をたくさんとらえることができ、皮ふの乾燥を防ぐことができるのです。

尿素分子のつくりと水分子との水素結合。

 また、尿素には皮ふをやわらかくする働きもあります。私たちの皮ふは角質細胞でおおわれていますが、乾燥などによって古い角質細胞がたまってかたくなることがあります。角質細胞はケラチンというたんぱく質でできていて、その一部は水素結合でつながっています。ここに尿素分子が入ると、たんぱく質の水素結合の間に割り込んで結合を切るため、皮ふがやわらかくなるのです。実は、もともと角質細胞の中には尿素が含まれていて、皮ふの乾燥を防いだり、古い角質細胞をこわす働きをしています。

 このほか、たたくと急激に冷える瞬間冷却パックにも尿素が使われています。これは尿素が水にとけるときに周囲の熱をうばう性質を利用したものです。尿素の結晶づくりで、ぬるま湯に尿素をとかしているときに、ぬるま湯が冷たくなるのを感じた人も多いのではないでしょうか。

 また、トラックやバスの多くはディーゼルエンジンで動いていますが、その排気ガスをきれいにするために、純水に尿素をとかした尿素水が使われています。尿素水が排気ガスの熱でアンモニア(NH3)に分解され、アンモニアが排気ガス中の有害な一酸化窒素(NO)や二酸化窒素(NO2)と反応して、無害な窒素(N)と水(H2O)に変えています。

 さらに、尿素とホルムアルデヒドを反応させると尿素樹脂(ユリア樹脂)というプラスチックになり、食器や電気器具、ボタンなどの材料になります。このように、尿素は身のまわりのさまざまな場所で利用されているのです。

(監修/ガリレオ工房 文・写真/ハユマ イラスト/新保基恵)

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