《子供の科学 深ボリ講座》気象庁ホームページを使いこなして防災に役立てよう!

2022年6月号の『子供の科学』では、梅雨から夏にかけての空模様について詳しく解説し、豪雨災害から身を守るためのポイントまで紹介しています。ここでは、誌面で掲載しきれなかった、「気象庁ホームページ」の使いこなし術をもっと深掘りします。サイエンスライターで気象予報士の今井明子さんが特別にレクチャーするよ!

気象予報士がおすすめ! 気象庁ホームページ

 皆さんは天気予報をチェックするときに、どこの天気予報を見ていますか? 朝にニュースの天気予報コーナーでチェックする人もいるし、スマートフォンの天気予報アプリを見る人もいるかもしれませんね。

 これらの天気予報は、私も必ずチェックしています。でも、気象庁ホームページをチェックする人は、少数派かもしれませんね。実は気象庁ホームページは情報の宝庫! 気象予報士は必ずといっていいほどチェックしています。皆さんも使い方を覚えておくと、普段の生活や災害が起こりそうなときにとても役に立つんです。

 気象庁ホームページは、基本的にパソコンやスマートフォンから見ることができます。ただし、スマートフォンの専用アプリはないので、インターネットを開き、「気象庁ホームページ」と検索してアクセスしてください。画面はスマートフォンのサイズに合わせて表示されます。「お気に入り」に入れておくのがおすすめです。

まずは「今後の雨」をチェック!

 気象予報士がおすすめする気象庁ホームページのチェックポイントは、「今後の雨(降水短時間予報)」、「雨雲の動き(高解像度降水ナウキャスト)」、「キキクル(危険度分布)」の3つです。どれも、トップページから「防災情報」というタブをクリックすると見ることができます。

 もし、朝にテレビの天気予報でその日に雨が降りそうだといわれたのなら、「今後の雨」をチェックしてみてください。下の画像がその画面です。このコンテンツは、レーダーやアメダスなどの降水量の観測値から出した過去の降水量の分布と、15時間先までの1時間ごとの降水量分布の予測が見られます。画面の再生ボタンを押せば動画で雨の降っている場所、雨が今後降りそうな場所がわかります。また、画面右の+と−のボタンで、表示画面の拡大・縮小もできます。

「今後の雨」。画面は2022年4月26日のもの。(気象庁ホームページより)

 この「今後の雨」は、15時間先までの雨の様子がわかるため、朝に家を出る前に「今日の下校時は雨が降りそうかな? 今は降っていなくても傘を持って行った方がよさそうかな?」という判断をするのに役立ちます。

 「今後の雨」で表示される色は、白が1mm未満の雨、水色が1mm以上の雨で、濃い青、緑、黄色、オレンジ色、赤、紫の順で雨が強くなっていきます。1mm以上の雨、すなわち白以外の色がかかっているときは傘が必要だと覚えておきましょう。ちなみに、1mm未満の雨とは、ポツポツと降る雨や霧雨です。

空模様があやしくなったら「雨雲の動き」を見よう

 「空が暗くなってきた」「近くに雄大積雲や積乱雲が見える」など、雨が降りそうなときは、「雨雲の動き」をチェックしましょう。こちらは、気象レーダーの観測データを利用した予報で、現在の雨の詳しい降り方や、1時間後までの予測されている雨の降り方がわかります。

「雨雲の動き」。画面は2022年4月26日のもの。(気象庁ホームページより)

「雨雲の動き」は「今後の雨」よりも解像度が高いのが特徴です。「今後の雨」を表示するためのメッシュ(正方形のピクセル)は6時間後までが1km四方、15時間後までが5km四方となります。これに対し、「雨雲の動き」は30分後までが250m四方、1時間後までが1km四方です(ただし、陸から離れた海上は30分後までも1km四方)。ひとつの積乱雲の大きさは直径数km~十数kmなので、「雨雲の動き」を見ると、ひとつの積乱雲からの雨の様子がよくわかるのです。

 ひとつの積乱雲からの雨は、範囲が狭いうえに寿命が30分~1時間程度と短く、いつ、どこで発生するのかを数時間前の天気予報でピタリと予測することが今の技術では難しいです。そのかわり、その日に積乱雲が発生しそうなときは、「大気の状態が不安定です」という言葉で表現されます。もし朝のニュースでこのような言葉を聞いた日はこまめに空模様を観察して、空が暗くなってきたら、「雨雲の動き」をチェックしてみてください。積乱雲がどこにあるのか、近づいてきているのか、今降っている雨はいつ頃あがりそうかがわかります。「積乱雲による雨が来る前に室内に移動しよう」とか「今降っている雨を室内でやりすごすべきなのか、それとも待たずに外出すべきか」などの判断が「雨雲の動き」を活用することでできるようになります。

 なお、「雨雲の動き」には、下にいくつかのアイコンがあります。一番左が「雨雲の動き」で、左から順に「雷活動度」「竜巻発生確度」「アメダス10分間雨量」「前5分間の雷の状況」「線状降水帯」です(2022年5月現在)。必要に応じてアイコンを押してみると、それぞれの情報が見られますので、そちらもぜひ活用してみてください。

雨が降り続くときにチェックしてほしい「キキクル」

 土砂降りの雨が何時間も続くと、河川の氾濫による洪水や土砂災害の危険が高まります。いつ頃避難したらよいかという判断に役立つのが「キキクル」です。

「洪水キキクル」。画面は2020年7月4日のもの。(気象庁ホームページより)
※画面は旧バージョンの気象庁ホームページです

 「キキクル」では危険度に応じて色分けされています。黄色が注意報レベル、赤色が警報レベル、紫色が土砂災害警戒情報などの気象情報が発表されたときのレベルです。そして、洪水キキクルに関しては黒もあります。こちらは大雨特別警報や氾濫発生情報が発表されたときに表示されます。

 避難のめやすですが、赤は警戒レベル3とされており、「高齢者等避難」といわれています。「高齢者」とついてはいますが、病気やけがの人、乳幼児のいる家庭など、避難に時間がかかる人は赤色が表示されたら避難を始めてください。そうでない場合は、紫色で表示された警戒レベル4のときに避難します。なお、警戒レベル5の黒で表示されたら何らかの災害がすでに発生している可能性が極めて高く、避難しようとするとかえって危険です。黒が表示される前に避難するようにしてください。

 以上、気象庁ホームページを活用した防災テクニックについて詳しくお伝えしました。

 「今後の雨」、「雨雲の動き」、「キキクル」の3つを使いこなせば、日常生活がとても便利になり、いざというときに命を守ることができます。普段から雨が降りそうなとき、降ったときにこまめにチェックしておくのがおすすめです。

取材・文

今井明子 著者の記事一覧

1978年生まれ。首都圏在住。京都大学農学部卒。気象予報士。得意分野は科学系(おもに医療、地球科学、生物)をはじめ、育児、教育、働き方など。「Newton」「AERA」「東洋経済オンライン」「BUSINESS INSIDER JAPAN」「暦生活」などで執筆。著書に「こちら、横浜国大『そらの研究室』! 天気と気象の特別授業」(共著、三笠書房知的生き方文庫)、「異常気象と温暖化がわかる」(技術評論社)がある。気象予報士として、お天気教室や防災講座の講師、気象科学館の解説員なども務める。

 

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