ゲームクリエイターになるには?《後編》

 大好評発売中の書籍『ゲームを改造しながら学ぶ Scratchプログラミングドリル』の著者であるゲーム開発会社・アソビズムのゲームクリエイターにお話を聞くこの企画。

 「ゲームクリエイターになるには?《前編》」では、そもそもゲームクリエイターとはどんなお仕事なのか、そして仕事のおもしろさや必要な能力について紹介したよ。

 《後編》では、おもしろいゲームをつくる秘訣と、ゲームクリエイターになるために今からやってほしいことを、アソビズムの現役ゲームクリエイターに伝授してもらおう。

アソビズムのみなさん。主催イベントでキャラクターに扮している!

1 おもしろいゲームをつくるには?

1-1 ゲームをおもしろくする秘訣

 では、書籍『ゲームを改造しながら学ぶ Scratchプログラミングドリル』のゲームづくりを例に、プロのゲームクリエイターがどうやっておもしろいゲームをつくるのか、具体的に紹介しましょう。

 この本では、「プロトタイプハッキング方式」といって、ゲームの原型となるプロトタイプのプログラムをハッキング(改造)していって、ゲームを完成させていきます。じつは、もとのプログラムを読み解いて改造していくというのは、本職のゲームプログラマーもやっているトレーニング法なんです。

 プロトタイプのプログラムを読み解いていって改造できたということは、すでにそのプロトタイプのレベルのプログラミングスキルが身についているということを意味します。この本には10本のゲームが収録されていますが、プロトタイプハッキングをするのに一番おもしろいのは、じつは最初のゲーム、「森の射撃訓練」なんです。

 このゲームはすごいシンプルにできています。本書の10本のゲームを一通りつくることができれば、矢のプログラムも的のプログラムも、すべて理解できる力が身についていると思います。シンプルなだけに、改造する幅もすごく広くて、自分のやりたいようにダイナミックに改造していけば、ほとんど自分で考えたゲームのようにもなります。 

 「森の射撃訓練」は、「的を撃つ」ところに“おもしろさの核”があるんですが、ゲームクリエイターを目指すみなさんが改造するときには、ここにこだわって、「手触り感」を工夫してみてほしいですね。的を増やしたり、新しいアイテムを出したり、みたいなことももちろんおもしろいのですが、どんどん“足し算”で増やしていく考え方じゃなくて、同じ的を撃つという操作の「気持ちよさ」にこだわってみると、プロのゲームクリエイターの仕事に近づきます。

 新人のゲームクリエイターは、いろいろ盛り込んで“足し算”したくなっちゃうもので、「武器が全500種!」なんて書いた企画書を出すんですが、量で勝負するゲームはあんまりおもしろくないことが多い(笑)。まずゲームのおもしろさの核になる部分がしっかりしていて、こだわりがあることが、おもしろいゲームをつくる秘訣です。

 「森の射撃訓練」なら、「的を撃つ」というシンプルな操作だけで、気持ちよさ、他のゲームとの違いを出せるのが、腕のいいプロのゲームクリエイターなんです。ここを小中学生ぐらいから意識できたらすごいと思いますね。

 だから、この本は1回ぜんぶのゲームをつくり終わってから、2周目にまた改造するのが一番おもしろいところです。1回つくって終わり、じゃもったいない! 私たちが運営している「未来工作ゼミ」の教室でもプロトタイプハッキングでゲームをつくりますが、同じゲームの教室に何回も出て、どんどんゲームをおもしろくする子がいっぱいいます。

1-2 自分で考えたオリジナルゲームをつくるには?

 ゲームプログラミングを始めたころは、キャラクターが思ったところに表示されたり、思った通りに動いてくれたりするだけで楽しい気持ちになれます。自分が書いたプログラムで指示した通りに動いてくれるところが、プログラミングのおもしろさです。

 ところが、段々それでは満足できなくなってきて、自分だけの表現をしたくなってくるときがきます。オリジナルのゲームづくりは、ここからがスタートですね。

 本では、Chapter5でどうやってオリジナルのゲームを考えていったらいいか、考え方のコツを紹介しています。

 最初に、どんなゲームにするか、コンセプトやテーマを決めることからスタートします。自分がどんなことを表現したいのか、オリジナルゲームを着想するヒントが書いてあるので、ぜひ参考にしてみてください。

2 どうしたらゲームクリエイターになれる?

2-1 ゲームプログラマーは学び続ける

 ゲームプログラマーは、常に新しいプログラミングの知識や技術を学び続けることが大切です。「ずっと勉強しなきゃいけないのか……」と思ったかもしれませんが、「勉強している」という感覚じゃなくて、新しいプログラミングの知識や技術に「興奮する」という感覚でしょうか(笑)。新しい知識や技術を習得すれば、もっとおもしろいゲームをつくれるようになれる! と思って学び続けます。

 それから、ゲームに使えそうな新しい表現媒体が手に入ると、すごいワクワクします。最近だとARやVRですね。自分の新しいアイデアを表現できると思うと、ARやVRのゲームをつくるためのプログラミングを学んでいく道中が楽しいわけです。新しい表現ができるようになるプロセスなら、勉強なんだけど、勉強じゃないんです。

アソビズムのゲーム開発現場。

2-2 コミュニケーションできるようになろう

 みなさんにぜひ伝えたいのは、ゲームプログラマーはプログラミングの技術力だけじゃなく、「コミュニケーション能力」が求められること。専門職の技術者は人と話をする必要がないんじゃないかと思われがちですが、チームで仕事をする以上、ちゃんと話ができることが大切です。これは別に「明るく元気に」ということではなくて、ちゃんと人の話を聞いて、ちゃんと伝えるべきことをわかりやすく伝えられる、ということです。

アソビズムのゲームクリエイターのみなさんが会議をしている様子。

 ゲーム開発の現場では、いつもチームで会話をしながら、「ここはこうしたほうがいいんじゃないか」と細かくリクエストを聞いて、プログラムを修正しながら進めていきます。コミュニケーションがとれていないと、問題がどんどん積み上がって大きくなってしまって、プログラムを直すことができない状態にもなりかねません。プランナーとプログラマーがいつも会話していることが大切なんです。

2-3 いろいろな経験を積もう

 もうひとつ大切なのは、「ゲームが好き」ということはもちろん一番大切なんですが、ゲーム以外のこともたくさん経験することです。ゲームクリエイターの経験が、ゲームのおもしろさにつながると思っています。たくさん本を読んでいるとか、映画を観ているとか、なんでもいいのですが、ヒット作をつくるようなゲームクリエイターは、何か別の趣味をもっていて、すごく突き詰めているマニアな人が多いですね。

 ぜひみなさんもいろいろな経験を積んでください。そしてゲーム以外にも夢中になれることを見つけるといいと思います。オリジナルのゲームを考えるとき、ゲーム以外で自分の好きなことから何かを考えてみると、おもしろいアイデアが浮かぶかもしれません。

3 まずは自分の作品をつくってみよう!

 ゲームクリエイターになりたいと思ったら、まずは自分の作品をつくってみてほしいですね。チャレンジしてみると、いろいろ見えてくることがあるはずです。「自分らしい表現ってなんだろう?」とか、「おもしろいってどういうことだろう?」とか。これは自分で作品をつくってみないと、わからないことです。

 そして、つくったゲームを家族や友達にプレイしてもらうことです。「おもしろかった!」と人に喜んでもらえた瞬間は、何物にも代えがたい経験になります。

 ぜひ『ゲームを改造しながら学ぶ Scratchプログラミングドリル』でゲームづくりのおもしろさを知ってもらって、近い将来、私たちも想像できないようなすごいゲームをつくるクリエイターになってほしいと思います!

書籍『ゲームを改造しながら学ぶ Scratchプログラミングドリル』の詳細はこちら

(取材協力/アソビズム 文/子供の科学編集部)

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