《イグノーベル賞2021》日本人が15年連続受賞!「歩きスマホで実験? 歩行者の流れの研究」

 人々を笑わせ、そして考えさせてくれるユニークな研究に贈られるイグノーベル賞。今年は「動力学賞
どうりょくがくしょう
」として、京都工芸繊維大学
きょうとこうげいせんいだいがく
村上
ひさし
助教ら4人が受賞しました。これで日本人の受賞は15年連続です。

表彰盾と賞金10兆ジンバブエドル(模造品)を手にする村上 久先生(京都工芸繊維大学 情報工学・人間科学系助教)。専門分野は認知科学、動物生理・行動学。

 考えごとをしながら道を歩いていると、他の人にぶつかりそうになることがあります。片方がスッとよければいいのに、なぜ歩行者同士がぶつかることがあるのでしょうか?

 村上先生らの研究グループは、その理由を突き止めるためにおもしろい実験を行いました。まず、54人の歩行者をそれぞれ27人ずつ、赤と黄色の帽子をかぶった2つのグループに分け、幅3m、長さ10mの道路を向かい合わせに歩いてもらいます。普通に歩くと、どちらの進む方向にもまっすぐな人の流れができて、スムーズにすれ違うことができました

 次に、片方のグループの先頭の3人にスマホで簡単な足し算をしながら歩いてもらうと、スマホを見ている本人も周りの人も、ぶつかりそうになるのをよけようとして人の流れが乱れ、全体の歩くスピードも遅くなりました

実験では黄色の帽子をかぶったグループの先頭3人(青い丸)がスマホで計算問題を解きながら歩行。衝突を避けようとして急に向きを変えたりしたことが他の歩行者の動きにも影響を与えた。(画像提供/村上 久)

 スマホ操作で注意をそらされた人は、前から来る人に突っ込んだり、ちょっと立ち止まったり、急に向きを変えたりします。そうした動きが周りの人の動きにも影響を与え、歩行者同士がぶつかる原因になっていることがわかったのです。

 この研究では、歩行者が一方だけではなく、お互いに動きを予測することで人の流れをスムーズにすることが確かめられました。私たちは普段から無意識のうちに、周りの人の動きを読みながら行動しているのかもしれません。

 将来的には、この研究成果が混雑や事故の防止避難経路の計画づくり、さらにロボット群の行動システムの開発などにも役立つのではないかと期待されています。

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フリーライター。『子供の科学』をはじめ児童教育や科学分野、趣味の雑誌・専門書籍を中心に取材・執筆を行う。

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