【ノーベル化学賞】白川英樹先生の研究-実験の失敗が導いた電気を通すプラスチックの開発

2000年化学賞 白川英樹先生(筑波大学名誉教授※肩書は受賞当時

子供の科学を愛読していたという白川英樹先生

 軽いのに丈夫な上、いろんな形に加工しやすいプラスチックは、さまざまな製品に使われていますが、通常、プラスチックは電気を通すことはありません。電気を通すプラスチック(導電性ポリマー)が実現すれば、より多くの用途に利用できるでしょう。

 世界中の多くの研究者が導電性ポリマーの開発に取り組んだ結果、白川英樹博士がポリアセチレンにヨウ素などの不純物を加えることで導電性ポリマーになることを発見しました。

 この発見は偶然から始まったといいます。1966年に東京工業大学で研究していた白川博士は、留学生にポリアセチレンの合成実験をさせたところ、ポリアセチレンの合成に必要な触媒の量を誤って1000倍も加えてしまったのです。正しく実験していたら粉末状のポリアセチレンが得られるのに、間違った量の触媒によって薄い膜状のポリアセチレンが出来上がりました。

 白川博士は、膜状のポリアセチレンを詳しく調べて論文として発表しました。電気を通すかどうかは粉末状よりも膜状のほうが調べやすいため、アメリカのアラン・ヒーガー博士、アラン・マクダイアミッド博士からの依頼で共同研究がスタート。高効率に電気を通せるように改良した結果、今では電子機器には欠かせない材料になっています。

 こうした功績から、白川博士はヒーガー博士、マクダイアミッド博士とともに、2000年にノーベル化学賞を受賞しました。

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サイエンスライター。1968年、大阪府生まれ。東京水産大学(現東京海洋大学)卒業後、ライターとなり、最新の研究成果を取材し、科学雑誌を中心に記事を発表している。著書に『がん治療の正しい知識』、『寄生虫の奇妙な世界』、『イヌとネコの体の不思議』、『群れるいきもの』などがある。

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