【ヘルドクターくられ先生のあやしい科学を疑え! vol.20】合理的に考えると友達づくりは重要である つづき【子供の科学4月号】

 『子供の科学2025年4月号』の「ヘルドクターくられ先生のあやしい科学を疑え!」は読んでくれたかな? 本誌では収まりきらなかった、くられ先生の頭の中の徒然考えているお話を、コカネット限定で配信中! 本誌の連載とあわせて楽しんでね。

イラスト/obak(@oobakk

其の人を知らざれば、其の友を見よ

 友人、知人、恋人、結婚相手、同級生、先輩、同僚、上司、部下……人間は、生きていく上で、いろいろな人を、自分なりのカテゴリー分けをして付き合って生きていく生き物です。

 もちろん、自分が友達だと思っていても、相手からすれば知人かもしれませんし、なんなら敵かもしれません。それくらいに人間関係というのは一方的で、お互いにどう思っているのかは実は難しいという側面があります。

 ともあれ、その人と仲よくしている人、つるんでいる人というのは、その人と利害関係があるので一緒に居ることが多いわけです。利害というのは経済的な意味だけでなく、気が置けないとか楽しいとか、落ち着くとかも含みます。特定の個人を中心にウニのように人物図を作れば、その平均値がその人であるともいえます。

 そう見ると、特定の人物を評価するときに、上辺を繕っていても、その周りを見ると、どういう人間なのかがわかってくるわけです。

 本当にヤバい人は、それを恐れて、コミュニティごとに友人を徹底的に分けて、別人格で付き合う人までいるので、個人の友達というのは非常にわかりにくいものです。しかし、今はSNSというものがあり、その人のタイムラインを見ると、だいたいの交友関係は見えてきます。おまけで趣味趣向も(笑)

 それが恐ろしいので、本アカウントは職場や家族にバレないようにしている……という人も多いかと思いますが、みなさんはいかがでしょうか?

 とはいえ、結局は、「類は友を呼ぶ」という諺の通り、その人なりにあった人が集まっていく、そして人は朱に交わればなんとやらで、その中でよくも悪くも影響を与え合うわけです。

 そう考えると、自分を中心とした友人ネットワークは、自分を中心とした部活なりサロンのようなグループなわけです。

 そのグループ内の空気が「勉強なんか大人になって何の役にもたたないよダラダラいこうぜ」となるか「みんなで勉強も遊びも楽しくやろう」とか、いろいろできあがってくるわけです。

 この空気の変化に馴染めなくて、そのグループから出て行った、また別グループに入ったなんて記憶がある人も多いと思います。また、どこのグループにも所属せず、孤立無援に過ごしている人もたまにいますが、大なり小なり、結果的にどこかのなにかのグループに所属しているものです。自分がやっているYouTubeチャンネルだったり、本をつくっている面々も、基本的には、あちこちで浮いていた人が集まって出来た感じがあります。

 こうしたグループは、学生の間は「なんとなく」で、ソレが次第に「価値観」に変わってきて、次第に「損得」になっていきます。
 
 では、例えば「勉強ができる子のグループ」に所属したら、勉強ができるようになるのでしょうか?

 答えは、基本的にはYESなのですが、そこに至るまではちょっと道のりがあります。

価値観や社会的信用度はだいたい同レベルで推移する

 例えば、自分の周りの友達が勉強しっかりするグループだと、その中ではなんとなく勉強しっかりするのが当たり前になります。じゃあ、今まで何も勉強してこなかった子が、そういうグループに入っても勉強出来るようにはならないわけです。お金持ちのグループに、貧しい人が入ってもお金持ちになるのかというと、だいたい、そうはいかないのです。

 結局のところ、その友達や所属するグループというのは、自分自信で積み重ねたものと「近い」ものだけでしか共有できないからです。

 なので友達の力で勉強できるようになるとか、モテるようになるとか、お金持ちになるとか、手助けになることはあっても、本人の価値観や積み重ねが、周りと合ってないと共有できず、一緒にまわることができず、うまくいかないわけです。

 歯車として廻ろうとしても歯車のかみ合う高さが違うので、噛みあうことがない……みたいなイメージです。

 これが大人になると、社会的信用度という感じで、わりと現実的なスコアとして評価されてきます。

 どこの大学を出たとか、どういった研究をしてた、どんな賞をとっているか、どんな免許を持っているか……それぞれは1つずつでは、その人がすごいかどうかは判断できないですが、いろいろな実績の積み重ねで「その人」が評価されるわけです。

 そしておもしろいことに、この評価水準は収入面でもある程度相関性もあって、その結果、同じくらいの社会的信用度の人は同じような社会的信用度の人とグループになる傾向があります。

 「其の人を知らざれば、其の友を見よ」は大人になるほどリアルになっていくのです。そして学生時代は、ウンザリするくらい同世代がいますし、大学であれば、同じ学問を志す人がワンサカいるので人間関係も作りやすいのですが、社会にでると、これが笑えるくらい機会が減ります。

 そして学生時代にグループだった友達も、結婚したり出世したりして、価値観を共有できなくなって、次第に疎遠になっていったりします。

 そうして、気がつくとどこのグループにも所属できなくなって、友人知人もすべていなくなって、孤独になります。大人になってからの孤独は「本物の孤独」です。

よくないコミュニティの入り口

 そうした孤立した人、迷惑な人を歓迎する世界が実はあります。

 それがコロナ禍とSNSの普及で急激に台頭してきた「カルト」という存在です。昔は宗教というセーフティネットがあったのですが、今はもっと、孤立した人を資金源とするグループがどんどん台頭してきています。

 世界は闇の政府が牛耳っているとか、ワクチンは有害で使えば使うほど命が危ない、電波は脳を破壊するからアルミホイルを頭に巻かないといけない、未公開情報で会費を払うだけで億万長者になれる……鼻で笑ってしまうようなこんな話を、大真面目になって取り組む人達がいます。

 彼らは、こうした「本物の孤独の人」を資金源として活動している人達です。

 一般的には「陰謀論」とか「情報商材」とか「新興宗教」とかいろいろな形をとっていますが、基本的には社会的弱者となった人で、さらに「プライドが高く、努力せずに一泡吹かせてやりたい」と考えている人にとって最高の居場所を提供することができます。

 「みんなが知らない世界の秘密」を私だけが知っている という優越感に浸ることができるわけです。

 そもそもちゃんとした勉強をしてこなかった人がネットで検索して数時間みてただけの話が「世界の隠された秘密」なわけがないのですが、そういう目を養ってこないとしっかり騙されてしまうわけです。
 
 この文章を読んでいる多くの人は「いやいやそんなのバカな人だけだろう」と思うかもしれませんが、とある業界では有名な学者だったり、著名な金持ちであっても、何かを間違えて友人を失い、孤独の中で過ごす間に、こうした陰謀論に染まってしまう人もいるのが現実です。

 自分も師と扇いでいた先生が、最近見ないな……と思って調べたら、とんでもない反ワクチン活動家になっていた……なんてことがありました。

 孤独な人同士を集めて、それぞれに役割や居場所を提供すると人間はそこを必死で守るようになります。当然お金も支払うようになり、そのカルトを育てる資金源として、全財産を失うまでは仲よくしてもらえます。

 こうしたカルトで絞り尽くされた後の人はもう……そろそろこの話はやめましょう、ともあれ、人は個人だけでは何もできません。どんな天才であっても、その作品を評価し、お金にかえたり、社会に広めたりする人が必要です。結局は人は人がいないと、何もできないわけです。

 なので、友達は大事なのです。

チート友達ネットワークがある?

 さて、そんな友達づくりにもズル……とまではいいませんが、もともとお金を持ってる人同士で、学生時代に友達になる……なんて方法があります。

 なんてことはない、高偏差値高額費の大学に行けばいいわけです。

 こうした大学では、卒業後にもそのネットワークを利用して、ビジネスや政治、金融などの重要なポジションで、友達ネットワークで成功していこうという考え方です。アメリカのイェール大学内で活動している学生組織スカルアンドボーンズ(Skull and Bones)なんかはその典型でしょう。

 世間では「秘密結社」といわれてますが、実際は高学歴サークルです。とはいえ、本当にビジネスから金融、政治にいたるまで大成功を収めてしまったので、学閥というのは本当に有効なんでしょう。日本でも、そうした卒業生ネットワークは存在します。

 金持ちが金持ちのための政治をやって金持ちだけが得をする世界ができる。もちろんこんな簡単単純な世界ではありませんが、そういう一面があるのは事実でしょう。

 じゃあ、金持ちじゃない人はもうだめじゃん……と思うかもしれませんが、その格差を唯一埋めることができるのが「勉強」ではあります。

 高偏差値高額費の大学には行けなくても、高偏差値の大学には勉強をがんばれば行くことはできます。

 そこでできる友達はやはり同じくらいがんばってきた、もしくは大してがんばらなくても勉強ができる強者ばかりです。そこで出来た友人知人、ネットワークは、社会に出てから、強い武器になるわけです。

 もちろん、学校の勉強だけでなく、プログラミングの知識でも、ゲームのウデマエでも、絵の上手さでも、どんなものでも一流になるまで磨き上げれば、同じくらいの社会的信用度の人とつながることができるわけです。

 ただその中で「学校の勉強」というのは、もちろん勉強の才能というのはありますが、才能がなくても、積み重ねることで、着実に良いところに行ける、1つのルートです。
 
 なので、大人が「勉強しなさい、しなさい」とクドクドいうのは、少しでも人生を楽に生きれるようになるという話あってのことかもしれません。

 結局は、人生というのは「自分」という中に、知識、情報、経験、運動記憶(運動神経や体の動かし方も脳が記憶している情報)をどれだけ積み重ねてきたか……がその人となると思います。
 
 ダラダラと何も積み重ねず生きることもまた生き方ですし、そういうときも必要でしょう。なので自分のペースでいいので、少しでも何かを積み重ねれば、違う世界が見えてきます。

 積み重ねると見える景色も変わってきます。そして得することも増えてくる、損することも減っていく……それが連なって人のつながりになり、チャンスが来たときに良い歯車になれるよう準備をしていく……ことじゃないかなと。

 もちろん、これはボク個人の勝手な価値観です。

 そうじゃないよ!! という人も多くいると思います。どっちが正しいとか、そういうものはたぶん答えなんかありません。ただ、そういう側面もあるというくらいですが、まぁ……友達は大事に、そして勉強はあんまりサボらないほうがいいよ……ってことです(笑)

子供の科学2025年4月号

今月の特集は「算数クイズ」。”数学のお兄さん”横山明日希先生が身近なものをテーマにしたおもしろクイズを10問出題!みなさんはどこまで解けるかな? とじ込み付録は正三角形が正方形になる「フシギな算数パズル」です。別冊付録は毎年恒例「KoKa手帳2025」。いろいろな科学情報以外にも、4月から始まる「2025大阪・関西万博」や科学館に行った感想などを記録できるノートも。ぜひ活用してください!

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くられ先生 著者の記事一覧

自称、不良科学者。サイエンス作家、科学監修、大学講師と多岐にわたって活躍。YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」での配信や、『アリエナイ理科ノ大事典』シリーズ(三才ブックス)、『アリエナクナイ科学ノ教科書 ~空想設定を読み解く31講~』(ソシム)などの著書も多数。

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子供の科学 2025年 4月号

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