みんなで青空へ紙飛行機を飛ばせ!「二宮康明先生お別れの会」で紙飛行機教室を開催【レポート・動画アリ】

去る2024年4月7日(日)、東京都武蔵野市にある都立武蔵野中央公園で、昨年11月15日に97歳で亡くなられた二宮康明先生を偲ぶ「二宮康明先生お別れの会」が催されました。当日は青空の下、公園の桜が見事に咲き誇り、素晴らしい「紙飛行機日和」となりました。

この日は気温も上がり、武蔵野中央公園には満開の桜を見ようと花見客も大勢訪れた。
武蔵野中央公園には、二宮先生の寄付によって設置されたベンチがある。通称「思い出のベンチ」。背もたれのプレートには「青い空、見よう 原っぱの仲間たちと 二宮康明・昭子」と刻まれている。

 武蔵野中央公園は、二宮先生が紙飛行機のテスト飛行をしていた公園です。先生は新しい紙飛行機を設計すると、この公園の「原っぱ広場」で納得がいくまで何度もテスト飛行を繰り返し、バランスや重心を改良して紙飛行機を完成させました。先生が設計された紙飛行機は、じつに3000機以上。こうした二宮先生の活動から、この公園はいつしか「紙飛行機の聖地」とも呼ばれるようになりました。

 午後1時、「お別れの会」が始まりました。まず、日本紙飛行機協会の荒木事務局長の司会で二宮先生に黙祷を捧げます。

荒木事務局長「天気予報ではほとんど雨でしたが、二宮先生は晴れの日が大好きで、こういう日になりました」

 次に『子供の科学』編集長のツッティーと、武蔵野中央公園をベースに紙飛行機を楽しんでいる倶楽部原っぱ代表の風祭さんが、それぞれに二宮先生の思い出を語りました。

ツッティー「二宮先生の紙飛行機の型紙付録は、1967年9月号から2016年9月号まで、49年間連載されました。『あと1年で50年ですよ』という話をしたこともありますが、二宮先生は自分で設計した紙飛行機を、自分でテスト飛行することにこだわられていました。ですから、自分で飛ばせなくなったところで、49年とか50年とかに関係なく、連載を終えられました。それだけこだわりを持って、一号一号つくっていたんですね」
風祭さん「私は2002年から紙飛行機を始めました。最初は思うように飛ばせなかったのですが、二宮先生に調整をしていただくと、本当に飛ぶようになる。始めたころは、それが不思議で不思議でしょうがなかったです。調整をすることが、紙飛行機を飛ばす技だとつくづく感じています。コロナの影響もあって、紙飛行機を飛ばす人が少なくなってきているようです。全国の愛好家と協力して、紙飛行機界を盛り上げていきたいです」

 二宮先生の紙飛行機が2017年から常設展示されている仙台市科学館からは、指導主事の宮崎さんが来られて、挨拶をされました。

宮崎さん「2017年から二宮先生の紙飛行機を常設展示していますが、飾っているのはごく一部で、収蔵庫には二宮先生から寄贈していただいたたくさんの紙飛行機が収蔵されています。10月からリニューアル工事が始まり、今後は常設展示が難しくなるのですが、いままで展示できなかった機体も含めて、企画展などで定期的に展示する機会をつくっていきたいと考えています。仙台でも大会が開かれていますので、宮城県にお越しの際はぜひ参加してください」

 最後に、倶楽部原っぱの中村さんが、二宮先生について書かれた朝日新聞の「天声人語」(2023年11月20日)を朗読されました。

中村さん「武蔵野のいちばん美しい季節に、お別れの会ができたことをたいへん嬉しく思います」

 これで、「お別れの会」はいったん閉会したのですが、参加したみなさんは手に飛行機を持っています。じつは「お別れの会」では、受付で「おえかきプレーン」が配られていました。これは垂直尾翼が下向きについたポリスチレン製の機体で、その名の通り、お絵かきができるように色や模様がない真っ白な飛行機です。これを二宮先生への供養として、大空に向かって飛ばそうというのです。参加者は広い公園に散らばり、おえかきプレーンを思い思いに飛ばし、二宮先生を偲んでいました。

受付では「おえかきプレーン」が配られた。
おえかきプレーンの飛ばし方をレクチャーする中村さん。

 こうして自由解散となった「お別れの会」ですが、このあと『子供の科学』が主催する紙飛行機教室が始まりました。教室では、倶楽部原っぱの中村さんが先生となり「ウイングスプレーン・アルファ」をつくります。もちろん、この機体も二宮先生が設計されたもの。ポリスチレン製のグライダーで、折り紙飛行機のようなデザイン。つくるのは簡単なのに、ゴムカタパルトで大空に飛ばすと驚くほどよく飛ぶ機体です。

 それにしても、こんなによく飛ぶ飛行機を設計した二宮先生とはどんな方だったのでしょうか。ここで、改めて二宮先生の足跡を振り返ってみましょう。

 二宮先生は、1926年に宮城県仙台市で生まれます。父親から飛行機に関する本や雑誌を買い与えられたことから飛行機が好きになり、小学校時代には紙飛行機を自作して友達にプレゼントするほどでした。中学生になると航空研究会に所属し、本物のグライダーを使った訓練も行います。

 二宮先生が高校生だった1945年、日本は第二次世界大戦で敗戦し、飛行機の製造をはじめ、研究、開発、教育など、飛行機に関する一切の業務が禁止されてしまいます。飛行機のエンジニアになることを夢見ていた二宮先生ですが、大学の航空学科が廃止されてしまったため断念せざるをえませんでした。

 1947年、「電波も空を飛べるから」という理由から、東北大学通信工学科に進学。卒業後は日本電信電話公社(現在のNTT東日本)の電気通信研究所に勤務し、マイクロウェーブを研究していました。じつは、この勤務地が武蔵野中央公園のすぐそばで、二宮先生は昼休みになると、紙飛行機を飛ばしに公園に来ていたそうです。

 1967年、アメリカのサンフランシスコで開催された「第一回国際紙飛行機競技会」に出場し、自分で設計した機体で滞空時間と飛行距離の2部門でグランプリを獲得します。当時の『子供の科学』の編集部は、すぐに二宮先生に連載を依頼。1967年9月号から、二宮先生が設計した紙飛行機の型紙が、巻末の付録としてつくようになりました。飛行性能と美しさを兼ね備えた機体はたちまち読者を魅了し、その後、49年間続く人気連載となりました。連載がまとめられた「切り抜く本」シリーズは、今でも人気のシリーズで、売上累計は500万部を超えます。

 1984年、日本紙飛行機協会を設立。1993年からは、紙飛行機の全国大会を開催しています。現在は、「二宮康明杯全日本紙飛行機選手権」として開催され、2024年で第29回を迎えることになりました。

 2016年、49年間続いてきた連載が終了。このときのエピソードは、ツッティーが「お別れの会」で話していた通りです。紙飛行機に情熱を傾けていた二宮先生らしいエピソードですね。

 では、話を「紙飛行機教室」に戻しましょう。

 参加者は、先生の話を聞きながら制作に集中。いくつかの注意点に気をつけながら組み立てていきます。みんな同じ機体をつくっているので、翼には自分の名前を書きました。

ツッティーがみんなに「ウイングスプレーン・アルファ」を配ります。
パーツは全部揃ってる?
先生の話をよく聞きながら、機体をつくり上げていきます。

 制作時間はおよそ20分。つくり終わったら、原っぱ広場で実際に飛ばします。胴体のフックにゴムをかけ、グッと引っぱります。機首を空に向けて手を離すと、機体は一気に大空へ! うまく調整ができていれば30秒以上も飛び続けることができる機体ですが、最初はなかなかうまくいきません。でも大丈夫! ここは紙飛行機の聖地。“紙飛行機名人”たちがたくさんいます。最初はあまり飛ばなかった機体も、名人たちに調整をしてもらうと驚くように飛ぶようになり、みんな笑顔がはじけます!

 いくら設計がよくても、ただつくるだけでは“よく飛ぶ紙飛行機”にはなりません。二宮先生は、「つくるのが3割、調整が7割」とおっしゃっていました。ていねいにつくり、微調整を繰り返すことで、紙飛行機は少しずつ飛ぶようになります。もちろん、飛ばす日の天気や風向きなど、気象条件も大切です。こうしたことを考えながら試行錯誤して紙飛行機をつくり、飛ばすことは、「科学そのもの」だといえそうです。

 しばらく自由に飛ばしたあとは、みんなで集まって記念撮影。最後は合図に合わせて、みんなで一斉に飛行機を大空に飛ばしました。その様子は記事冒頭の動画でご覧ください。

 この日、集まった子の中には、初めて紙飛行機をつくる子や、二宮先生を知らない子もいました。でも、真剣に紙飛行機をつくり、大空に飛ばしている子たちの表情は、みんなとっても明るく楽しそう! 世代を超えて、いつまでも愛される二宮先生の紙飛行機は、これからも大空を飛び続けます。

二宮先生が大好きだった青空の下、みんな笑顔で記念撮影です。
新保新太くん(しんぼ・あらた/8才)。「紙飛行機をつくったのは初めてで、ちょっとだけ難しかったです。『おえかきプレーン』の方がよく飛んだかな。楽しかったので、また飛ばしてみたいです」
左・山本絃世くん(やまもと・いとよ/7才)、右・識世くん(さとよ/7才)。「初めてだけど楽しくつくれました」(絃世くん)。「いっぱい飛んで楽しかったので、もっと飛ばしたいです」(識世くん)。
櫻井陽人くん(さくらい・はると/10才)。「意外と簡単につくれました。でも、僕が下手なんだと思うけど全然飛ばなかったので、調整して飛ぶようにしたいです」
渡邉珍尚くん(わたなべ・よしひさ/8才)。「紙飛行機を空に飛ばすのがおもしろくて、ときどき飛ばしています」
左・髙野宏理くん(たかの・ひろのり/6才)、右・友佳さん(ゆうか/9才)。「お父さんと一緒にときどきつくったり、飛ばしてたりしています。今日は上手に飛ばすことができて、楽しかったです」(友佳さん)
左・鬼木優嘉くん(おにき・まさよし/10才)、右・瞭多くん(りょうた・12才)。「紙飛行機は、これまでに30種類くらいつくりました。学校ではレクリエーションで紙飛行機係もやっています」(優嘉くん)。

二宮康明先生の紙飛行機を飛ばしてみたい方は、以下より先生の切り抜く本シリーズをお買い求めください。
https://www.seibundo-shinkosha.net/series/paper_plane_collection/

(写真/青栁敏史)

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