【ヘルドクターくられ先生のあやしい科学を疑え! vol.5】科学を勉強するのはどうして?  つづき【子供の科学1月号】

 『子供の科学2024年1月号』の「ヘルドクターくられ先生のあやしい科学を疑え!」は読んでくれたかな? 本誌では収まりきらなかった、くられ先生の頭の中の徒然考えているお話を、コカネット限定で配信中! 本誌の連載とあわせて楽しんでね。

イラスト/obak(@oobakk

まずはギャグの解説から……

 今回は「教養」と「お笑い」の話をしました。そして最後に、まったく意味不明とも思える一文を載せました。

 体脂肪がわかる体重計にしゃがんで乗ってる人をみかけて、不審になって聞いてみた。

「インピーダンスを下げる努力をしている」

 さすがに小中学生でこの冗談をみてゲラゲラ笑う子がいたら正気を疑いますが、電気の基礎を勉強したことがある人なら少しくらいは理解できるかもしれません。

 インピーダンスというのは電気抵抗値のことで、交流電気の流れやすさを表す数値で、数値が高いほど電気が流れにくいという意味です。そして体脂肪が計れる体重計では、足裏から電気を流し、骨や血液、筋肉はよく電気を通しますが、油は通しにくいため、結果としてインピーダンスは低い方が体脂肪率は低く出ます。そして、表面積が変化することでインピーダンスはさらに小さくなるのでしゃがんで体を縮こめる方がインピーダンスは低く……つまり、体脂肪率が低くみえる……という話になるわけです。

 どうしてこんな寒い冗談の絶対零度の解説をしているかは「子供の科学」本編をご覧下さい(笑)

 まぁ、そんなわけで、人間の持ち得る知識の量こそ、笑える範囲の広さになるということで、その辺をもう少し詳しめにみていきましょう。

ギャグ漫画家って、本当に大変だ

 例えば、誰もが知ってる、アニメのヒーロー、ヒロインが、いわなそうなことをいうだけでおもしろいですよね。Twitter(現X)などでも、名作アニメのワンシーンなどに勝手なセリフをあてたのが大バズりしてたりしますよね。

 これも、「知っているキャラクター」という意味で教養なわけです。知っているキャラがそんなことをいわないってところがおもしろさになるわけです。しかし、これがまったく知らないキャラが同じ事をやっても、おもしろくないことが大半です。
 これらのおもしろツイートは一次創作の有名なものがあって、初めて成立する、二次創作だからです。モノマネの類いもすべてこの二次創作のお笑いになります。

 見たこともないオッサンキャラが「ウンコ漏れそう!」っていってるのと、聖徳太子が「ウンコ漏れそう!」っていってるのではおもしろさの次元が違うわけです。

 ギャグにおいて二次創作っていうのは鉄板の強さを誇るのですが、これは客にそれらの基礎教養ありきで成り立つので、長期的におもしろさを維持するのは困難です。

 その上で、一次創作でギャグ漫画をつくる……これはもう、見たことないキャラが聖徳太子が変顔でウンコ漏れそうってジタバタしてるのを超えないといけないのです。

 永久に沈んでいく砂上に、マンハッタンを建てるかのごとく猛烈に難しい難事業です。ことさらギャグ漫画というのは低くみられがちなジャンルですが、自分の知っているギャグ漫画家さんは、それはもう「お笑い」を分析しつくして、哲学の領域にまで到達してしまっている先生が多数いらっしゃいます。それくらい、「おもしろい」を追求し、それを定期的につくるというのは、真面目でないと成しえないのでしょう。
 
 自分も、漫画原作をさせてもらっておりますが、そもそものキャラクターありきの作品なので、かなりの下駄を履かせてもらっているので、真の意味でギャグ漫画力を問われたら、先達の足下にも及ばないよう、途方もない難事業を成功させたのだと、数々の伝説を生み出したギャグ漫画を見て思います。

 あるギャグ漫画を描いていらした先生に「ギャグ漫画を専門にやらないのか?」 と聞いてみたことがありますが、「ギャグは自分がどんなにつらい気持ちのときも客を笑わせないといけない、自分にはその度胸がない」といわれ、お笑いというものがどれだけ厳しいものかを考えさせられたことがあります。

お笑いとホラーの共通点

 ちょっとギャグ漫画よりの話になってしまいましたが、お笑いというのはその人の常識に対して如何に意表をついて出すか……という部分であるので、そういう意味ではホラーと紙一重という話もあります。

 実際にギャグ漫画を描いていた先生が、ホラー漫画家に転身していたりする例もあり、「ギャグとホラーは出オチの部分は同じ」といわれていました。

 たしかに、ホラー映画で大ヒットしたものの続編はだいたいギャグ寄りになるか駄作として終わることが多い感じはあります。ネタが割れているホラーの象徴はすでにホラーではなく、出待ちされるギャグになってしまいがちなのです。ホラーは「常識の外から驚かす」なので、本質は近いのでしょう。

 ホラーでも、いきなり怖い映像と大きな音で驚かす手法は「ジャンプスケア」といわれ、人間だけでなく、犬猫でさえ驚くやつです。このジャンプスケアは笑いにおける下ネタと同じようなものなので、連続すれば低俗なもの、再び見たくない作品という評価を受けがちです。

 特に最近の映画はレビューも乱立していて、ホラー作品はジャンプスケアがあるかないかまで表記されたりしてます。ジャンプスケアは嫌われているわけです。そうしてここ数年はジャンプスケアを封印したホラー作品が増え、結果的にぜんぜん怖くない……というパターンが増えてきた感じがありました。
 しかし、そうした環境が続くと、今までのタイプから一線を画した、新時代のホラーが登場しつつあります。

 ともあれ、笑いにせよ驚きにせよ、人の心を作品で動かす……これは本当に難しいことなので、自分も偉そうに語ってないで、もっともっと精進します。

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自称、不良科学者。サイエンス作家、科学監修、大学講師と多岐にわたって活躍。YouTubeチャンネル「科学はすべてを解決する!」での配信や、『アリエナイ理科ノ大事典』シリーズ(三才ブックス)、『アリエナクナイ科学ノ教科書 ~空想設定を読み解く31講~』(ソシム)などの著書も多数。

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