観測データの不足や、データの処理能力の限界があるためです。
天気予報は、現在からの先の天気を予報することです。この予報をすることによって、台風の来襲に備えたり、大雨による洪水やがけくずれ、山くずれ、土石流、また暴風などの被害を最小限にとどめるための対応がとれることにつながります。天気予報は、明治の初めに近代的な気象観測と天気予報が始まったときから、警報を出すこと、つまり防災、気象災害を防ぐということが基本にあるのです。したがって、天気予報がはずれるというのは、たいへんこまることなのです。
しかし、天気予報は100%は当たりません。現在から1秒後の天気は100%当たりますが、1日先、2日先…とだんだん先へいくほど実際の天気とはズレがでてきて、「はずれる」ということになります。この原因のひとつは、観測データの不足、また、もしデータが得られてもデータの処理能力に限界があります。陸上に比べて広大な海の上の観測データと陸上でも高層(高い空の上)のデータが足りないのです。
最近では、スーパーコンピューターを利用した数値予報がたいへん進歩をしてきましたが、コンピューターにも得意でない分野があります。それは規模の小さな(10kmより小さい)局地的な現象(雷雨、降ひょうなど)と1週間より先の天気予報です。しかし、衛星観測や海上の観測ブイの展開などによって、足りない観測データの補完をして、さらに精度を上げる努力が続いています。
現在の天気予報はスーパーコンピューターによる「数値予報」が基本で、このデータは天気図類などを「翻訳」することによって成り立っています。しかし、今日予報する明日の天気をそのまま「翻訳」するだけだと、約70%しか当たりません(30%はハズレ)。これを、ここ10年で約82~86%台まで(1ミリ以上の雨が降る降らないの24時間先までの予報の全国平均)的中率を引き上げているのが、気象台の予報官や民間の気象予報士の科学的知識と経験、そして日々の努力なのです。
低気圧の進行速度やコースが数値予報どおりにいかないことはよくあります。最近の天気のくせ、低気圧などが実際の速度より速い、遅いという傾向をデータで検証して予報に生かすことが、予報官や予報士の腕の見せどころです。
戸山 九(気象予報士)